1. トップ
  2. 「昇給したのに手取りが増えない…」給料が上がっても働き損に。税金が跳ね上がる“驚きのカラクリ”【お金のプロが解説】

「昇給したのに手取りが増えない…」給料が上がっても働き損に。税金が跳ね上がる“驚きのカラクリ”【お金のプロが解説】

  • 2026.4.2
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「給料が上がったのに、なぜか手取りが増えない……」そんな悩みを抱えたことはありませんか?

頑張って働いて昇給したはずが、明細を見てため息をつくのは避けたいものです。実はこの問題、単なる勘違いではなく、日本のお金が引かれる仕組みが同時に動いているために発生する「三重の負担増」が原因かもしれません。特に60代以上の方には「在職老齢年金」の減額リスクも絡んできます。

なぜこのようなことが起きるのか、そして私たちができる対策には何があるのでしょうか。今回は、ファイナンシャル・プランナー(FP)の柴田充輝さんに、手取りを減らさないための考え方や準備すべきポイントを伺いました。自身の状況を正しく把握し、働き方を見直すヒントをお届けします。

なぜ給料が上がっても手取りが増えない?「三重の負担増」の正体

---給料が上がったはずなのに、手取り額が思ったほど増えません。このモヤモヤした現象はなぜ起きるのでしょうか?

柴田充輝さん:

「『給料が上がったのに、なぜか手取りが増えない』という悩みを抱える方は少なくありません。この問題は、複数のお金の引かれる仕組みが同時に動くことで起きています。

まず、60代以上の方に関係するのが在職老齢年金の減額です。働きながら年金を受け取れるこの制度では、給与(正確には『標準報酬月額』)とボーナスを合算した月平均額と、老齢厚生年金の月額の合計が一定の基準を超えると、年金が減らされます。2026年度からこの基準は65万円に引き上げられ、以前より年金が止められにくくなりました。

しかし、基準を超えた分は超過額の半分が年金からカットされるという仕組み自体は変わりません。高収入の方は、結果的に『働き損』となる可能性があります。

次に、社会保険料の増加です。社会保険料は給与額に応じて細かく『等級』が定められており、給与が上がって上位の等級に移ると、健康保険料・厚生年金保険料がまとまって増加します。少しの昇給でも等級の境界をまたぐと、保険料が一段階跳ね上がることがあるため注意が必要です。

さらに、所得税・住民税の負担増も重なります。年収が上がれば課税所得も増え、税額も増加します。

つまり、『賃上げ→年金カット+社会保険料増+税金増』という三重の負担増が同時に発生するのが、手取りが増えない理由です。特に会社員や公務員の方は給与天引きなので、逃れる術はほとんどないのが実情ですね。」

「働き損」を防ぐには?賃上げ時に確認すべきポイント

---せっかくの賃上げで損をしたくありません。会社員として、具体的にどのような対策や確認をすればよいのでしょうか?

柴田充輝さん:

「『賃上げで損をしたくない』と思ったとき、まず確認してほしいのが在職老齢年金の基準との位置関係です。

月々の『標準報酬月額』と、受け取っている老齢厚生年金の月額を足した合計が月65万円を超えると、超えた分の半分が年金から差し引かれます。大切なのは、『標準報酬月額』にはボーナスを12等分した金額も含まれるという点です。

つまり、ボーナスが多い年は注意が必要です。事前に年間収入の見通しを立て、自分の合計額がこの基準を超えるかどうかを確認しましょう。

一方で、会社員や公務員にとって、社会保険料を会社員が自力でコントロールできる手段は多くありません。その中でも、現実的に使える方法は『4〜6月の残業を抑える』ことです。

社会保険料の計算のもとになる『標準報酬月額』は、4・5・6月の給与の平均で決まります。この3か月の収入が高いと、1年間の保険料が高くなってしまいます。残業や副業収入などの調整が可能なら、この時期を意識してみましょう。

企業型確定拠出年金(DC)への加入・掛金増額も効果的です。DCに拠出した掛金は社会保険料の計算対象から外れるため、保険料の節約につながります。会社が制度を導入していれば、ぜひ活用を検討してください。」

今すぐできる準備と、今後の働き方の見極め方

---具体的な対策を進めるために、まず何をすべきでしょうか。また、年金減額の影響が大きい場合の選択肢についても教えてください。

柴田充輝さん:

「働き方を決める前に、まず用意してほしいのが『ねんきん定期便』または『ねんきんネット』と、直近の給与明細・源泉徴収票のいずれかです。前者では毎月受け取れる老齢厚生年金の金額が、後者ではボーナスを含めた年収の目安が確認できます。

書類が揃ったら、『標準報酬月額(月給+賞与÷12)+老齢厚生年金の月額』を計算してみましょう。この合計が月65万円を超えていれば、超えた分の半分が年金から引かれます。たとえば合計が67万円なら、超過分2万円の半分=1万円が年金から減額される計算です。

なお、在職老齢年金の対象となるのは、会社員として社会保険(厚生年金)に加入している人に限られます。そのため、収入が多く年金への影響が大きい方にとっては、会社との雇用契約を見直し、業務委託契約に切り替えるという選択肢もあります。業務委託であれば厚生年金の被保険者ではなくなるため、在職老齢年金による減額の対象外となります。

ただし、業務委託への切り替えは社会保険の喪失や労働者としての保護がなくなるなど、別のリスクも伴います。そもそも会社が契約形態の変更を認めてくれるかどうかもわからないため、メリット・デメリットを十分に理解した上で検討することが大切です。

こうした判断を適切に行うためには、税制や社会保険制度の基本的な仕組みを自分自身で理解しておくことも重要です。最低限、自身に影響する基準額や計算の考え方を把握しておくことで、働き方の選択において主体的かつ合理的な意思決定ができるようになります。」

仕組みを知ることが「主体的な選択」への第一歩

ここまで解説してきた通り、手取りが増えない背景には「年金・社会保険・税金」という複数の要素が絡み合っています。特に60代以上の方は、自身の収入と年金のバランスを把握することが「働き損」を防ぐカギとなります。

社会保険料のコントロールや業務委託への切り替えなどは、個々の状況や会社の環境にも左右されるため、慎重な判断が必要です。まずは今回ご紹介した書類を揃え、ご自身の状況を確認することから始めてみませんか?制度の仕組みを正しく理解し、ご自身の働き方にとって何が最適かを冷静に見極めることが、将来を見据えた賢いキャリア戦略の第一歩となります。

の記事をもっとみる