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家族「まだ決まらないんですか」“受け入れ不可”が続き搬送先が決まらない…緊迫する救急車内で取った隊員の対応

  • 2026.3.11
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。ライターのとしです。

救急の現場では、傷病者の状態を見るだけでなく、そのそばにいる家族への関わり方が大きな意味を持つ場面があります。

今回思い出すのは、コロナ禍の発熱要請で出動した高齢の方の現場です。

意識障害があり、バイタルサインもあまりよくない。

救急隊としては、できるだけ早く医療機関へつなぐ必要がありました。

ただ、当時は発熱がある傷病者の受け入れ先がなかなか決まらないことも多く、この現場でも搬送先選定に時間がかかりました。

そんな状況のなかで、処置や観察を続けながら家族に不安を広げすぎない接し方を意識した出来事です。

早めの搬送が必要だと感じた現場だった

その日対応したのは、高齢の傷病者でした。

発熱の要請で現場に向かうと、意識ははっきりしているとは言いにくく、バイタルサインもあまりよい状態ではありません。

家族も心配が強く、「必要なことはしてあげてください」「早く病院で診てもらいたいです」と話されていました。

こちらとしても、状態観察と必要な処置を進めながら、できるだけ早く医療機関へつなぐ必要があると感じていました。

コロナ禍で受け入れ先が決まりにくかった

ただ、問題はそこからでした。

当時はコロナ禍で、発熱がある傷病者の受け入れに時間がかかることが珍しくありませんでした。

この現場でも近隣の医療機関だけでなく、県外の病院にも連絡しましたが、受け入れ不可の返答が続きました。

時間だけが少しずつ過ぎていき、救急隊としても焦りは強くなっていきます。

それでも、その空気をそのまま家族にぶつけてしまうと、不安は一気に広がってしまいます。

処置は急ぎながら、家族には落ち着いて伝えた

こういう場面で大事なのは、落ち着いて見せることと、手際よく動くことを分けて考えることだと思います。

落ち着いた対応といっても、ゆっくり動くという意味ではありません。

必要な処置や観察、搬送先への連絡は急いで進める。

そのうえで、家族への説明は短く分かりやすく伝えるようにしていました。

たとえば、

  • いま状態を見ながら進めていること
  • 受け入れ先の調整を続けていること
  • 決まりしだい速やかに搬送すること

こうしたことを、その都度伝えていました。

家族から「まだ決まらないんですか」と聞かれる場面もありましたが、「いま受け入れ先の調整を続けています」「決まりしだい、すぐに搬送できるよう進めています」と、余計な焦りを広げない言い方を意識していたのを覚えています。

長い調整のあと、ようやく搬送につながった

受け入れ先が決まらない時間は、家族にとってとても長く感じられたはずです。

それでも、傷病者を救急車内に収容したあとも状態観察と必要な処置を続けながら、受け入れ先への連絡を重ねていきました。

少し時間がたったあと、ようやく搬送先が決まったときは、こちらも少し肩の力が抜けたのを覚えています。

病院に到着したあと、家族から感謝の言葉をいただきました。

待っている間の接し方も含めて、受け取ってもらえたのかもしれません。

学び:焦る場面ほど、家族接遇が現場を支える

この現場で改めて感じたのは、搬送先がすぐ決まらない場面では、医療的な対応だけでなく家族接遇も大切だということです。

とくに大事だと感じたのは、次の3つでした。

  • 処置や観察は早く丁寧に進めること
  • 焦りをそのまま家族にぶつけないこと
  • 短い説明でも重ねて伝え、不安を広げすぎないこと

不安の強い場面だったからこそ、手際よく動くことと落ち着いて寄り添うことは、どちらも欠かせないのだと感じた出来事でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。