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ペットボトルのフタが開けにくい→「年齢のせい」と放置し続け…ある日、70代女性を襲った“恐ろしい病”【医師は見た】

  • 2026.3.27
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

今回は、70代女性Iさん(仮名)の実例をご紹介します。

「ごめんね、最近ペットボトルのフタが開けにくいのよ」Iさんは手の衰えを感じつつも、家族に頼めば済むことだと放置していました。

しかしある日、自宅のわずかな段差で転倒。診断は「大腿骨頸部骨折」でした。手術で骨折は治りましたが、リハビリは難航し、今は車椅子生活で大好きな旅行も大変になってしまいました。

今回は「些細な衰えが招く寝たきりの悲劇」を解説します。

ただの老化ではない、身体が自分の筋肉を「食べて」しまう病

フタが開けにくいのは、単に力が弱くなっただけではありません。

全身の筋肉が消えゆく「サルコペニア」が進行しています。老化によるサルコペニア(一次性サルコペニア)は誰にも多少起こることですが、今回の悲劇の最大の原因は、持病による「筋肉の異常な分解(二次性サルコペニア)」です。

【筋肉が消え、寝たきりに直結するメカニズム】
・糖尿病などの持病があると慢性的な炎症が起き、筋肉に栄養(糖)がうまく取り込まれなくなる
・体は生きるためのエネルギー不足を補うため、自分自身の筋肉を「食べて(分解して)」栄養に変換し始める(二次性サルコペニア)
・体重が変わらないとしても、失われた筋肉の代わりにそこに入ってきているのは脂肪(サルコペニア肥満)
・筋肉のクッションや支えが失われてバランスを崩しやすくなり、数ミリの段差でも転倒してしまう
・歩行の要である大腿骨を骨折し、長期の安静でさらに筋肉が落ちて寝たきりに至る

「体重が変わらないから大丈夫」という最大の罠

手の力に衰えを感じた時、歳のせいかなと思って納得してしまうことは無理もないことです。

しかし、実は、危険な境界線は「体重が変わらない(あるいは太っている)から無縁だ」という誤解にこそあります。

人間の体は都合よく手の筋肉だけが落ちるわけではありません。握力が落ちている時、見えない足腰の筋肉も削ぎ落とされています。近年問題視されるサルコペニア肥満は、体重計の数値に変化がないまま筋肉だけが減り、脂肪が蓄積します。

この状態は単なる肥満より転倒リスクが跳ね上がります。体重の増減だけで安心していると、自立した生活が終わるサインを見逃すおそれがあります。これが危険な落とし穴なのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

体重計では分からない筋肉の「機能」と「量」の低下は、以下の3つでチェックできます。

1.ペットボトルのフタが自力で開けられない

握力は全身の筋力を強く反映します。数値を測るチャンスがあればぜひ確認してみましょう。男性28kg未満、女性18kg未満は危険水域です。

2.青信号を点滅する前に渡り切れない

1秒間に1メートル歩けないスピードは、体を支え前に進める下半身の筋肉が著しく落ちているサインです。信号を青信号で渡り切るのが難しいといったことも目安になります。

3.「利き足ではない方」のふくらはぎに隙間ができる

親指と人差し指の「指輪っか」で、非利き足の最も太い部分を囲んでみてください。隙間ができるのは筋肉が減っている客観的な証拠です。

まとめ

Iさんのエピソードは決して特別なものではありません。いつもと変わらぬ生活を数年続けているから大丈夫と思っていても、糖尿病などの病気が筋肉を蝕んでいる可能性があるのです。前述の3つのサインをチェックし、気になることがあれば受診してみましょう。

実際にサルコペニアか否かは、体組成検査で筋肉量を測ることで正確に診断できます。
筋肉が落ちていたとしても、ハードな筋トレをいきなり始める必要はありません。

筋肉の分解を防ぐ材料となる良質なタンパク質の栄養指導や、専門的なリハビリ指導など医療サポートは充実しています。ぜひ医療を活用して、元気良く楽しく長生きしましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。