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「年齢のせいだから仕方ない」“お腹周りの脂肪”を放置→数年後、突然倒れ込み…50代女性を襲った“恐ろしい病”【医師が見た】

  • 2026.3.26
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆様こんにちは。日々手術室で患者さんの全身管理をしている麻酔科医の松岡です。

今回ご紹介するのは、50代女性・Gさん(仮名)の実例。

「お腹周りにお肉がついてきたけど、これは年齢のせいだから仕方ないわ」Gさんは、健康診断の結果を見ながら言いました。

「肝臓の数値も少し高いみたいだけど、私はお酒を飲まないから大丈夫ね」と、再検査を受けることはありませんでした。

しかし、数年後、強いだるさと黄疸が現れて倒れ込みます。診断は「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」から進行した「重症の肝硬変」でした。状態が安定して退院しましたが、お腹に水が溜まるようになり、肝臓がんになるかもしれないという恐怖を抱えて過ごしています。

今回は「お酒を飲まない女性に忍び寄る、肝臓の病」について解説します。

お酒ゼロでも起きる「肝臓への過酷な負荷」

肝臓の病気はお酒が原因だというイメージが強いでしょう。しかし、お酒を一滴も飲まなくても、ご飯や甘いものといった「糖質」の摂りすぎで肝臓は深刻なダメージを受けます。

【お酒を飲まないのに肝臓が壊れ、がんになる流れ】
・摂りすぎた糖質が中性脂肪に変わり、肝臓にたくわえられる(脂肪肝)
・女性ホルモン(エストロゲン)は脂肪を蓄えにくくする働きがある(脂肪肝のブレーキ)
・閉経によりブレーキを失うと、脂肪を蓄えてしまうとともに炎症を起こす(NASH)
・炎症の修復跡(線維)が正常な細胞の居場所を奪うため、本来の肝臓の機能が落ちていく(肝硬変)
・「炎症による細胞の破壊と再生」を繰り返す中で、ミスコピーが蓄積し「がん細胞」が生まれる

「ただのぽっこりお腹」と「危険な沈黙の病」の境界線

家事や仕事の合間に、甘いお菓子でホッと一息つく時間は毎日の大切な時間です。年齢とともにお腹周りがふっくらしても、「中年太りだから仕方ない」と受け入れてしまうのはよくあることでしょう。また、お酒を飲まないなら、肝臓の病気など無縁だと考えても無理はありません。
注意点は、「閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の減少」です。
閉経によってバリアが失われると、同じ食事量でも急激に内臓脂肪がつきやすくなり、肝臓への脂肪蓄積と炎症が一気に加速します。

特に注意が必要なのは、「体重は標準なのにお腹だけ出ている」という隠れ肥満の方です。これは内臓に直接脂肪が付いている状態です。
肝臓は半分以上が破壊されても痛みはでません。ただのぽっこりお腹だと放置している間に、少しずつ正常な細胞が置き換わっていくことで肝臓の機能が低下して、がんの芽が育っています。「お酒を飲まないから大丈夫」という安心感こそが、発見を遅らせる最大の落とし穴なのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

お腹のふくらみが年齢のせいか、肝臓が悲鳴を上げているサインかは、以下の3つでチェックできます。

1.健診で「AST」や「ALT」の数値が少しでも基準値を超えている

お酒を飲まないのに数値が高い場合、すでに肝臓の細胞が壊れて血液中に酵素が漏れ出ている危険なサインです。

2.閉経後、急にお腹周りだけが太くなり、腹囲が90cmを超えた

日本のメタボリックシンドロームの基準では、内臓脂肪蓄積のサインとなる腹囲は男性85cm以上、女性90cm以上と定められています。

3.しっかり寝ても、全身の強いだるさや疲れが抜けない

正常な細胞が減って沈黙の臓器が限界を迎え、解毒やエネルギーを作る機能が低下しているサインです。

まとめ

お酒を飲まないから肝臓は心配ないというのは、実はよくある誤解なのです。そんな中、Gさんのように健診の数値を放置してしまったことも、決して珍しいことではありません。

しかし、極端な糖質制限をいきなりする必要はありません。まずは、手元にある健康診断の結果の「肝機能(ASTやALTなど)」の数値をもう一度確認してみましょう。また、次回の健康診断では、「腹部エコー」のオプション枠にチェックを入れてみましょう。エコーでは、肝臓に脂肪がどれくらいついているか視覚的にすぐ分かります。

もし脂肪肝が見つかった場合には、無理のない体重7%の減量や、薬の力も借りた生活習慣病の治療を行うことになります。直ちに、
このように意識を向けることから始めましょう。実際に脂肪肝が見つかった場合には、健康診断を有効に活用することから始めて、おいしいものを楽しめる幸せな日々を過ごすことができるようにしましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。