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「最近胸がドキドキする」違和感があるも放置し続け…→ある日、会議中に言葉が出なくなり…40代男性を襲った“恐ろしい病”

  • 2026.3.28
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出典元:photoac(※画像はイメージです)

皆様こんにちは。日々手術室やICUで呼吸と循環を守る麻酔科医の松岡です。

「最近たまに胸がドキドキするけど休めば治まるから大丈夫」

Hさん(40代・男性)は胸の違和感を疲労のせいだと自己判断し、健診で指摘された「高血圧」も放置して激務をこなしていました。

しかしある朝、会議中に突然言葉が出なくなり崩れ落ちます。診断は「心原性脳塞栓症」。一命は取り留めたものの右半身の重い麻痺と言語障害が残り、再発の恐怖に怯えながら、以前のように第一線で働けない日々に悔しさを滲ませています。

今回は、「すぐ治まる動悸に潜む突然の脳梗塞」について解説します。

放置された動悸が「脳の血管を塞ぐ血栓」を育てる

心臓の不調である動悸が、なぜ脳梗塞を引き起こすのでしょうか。原因は「心房細動」という不整脈が作る血の塊(血栓)にあります。

【心臓で作られた血栓が、脳を破壊するメカニズム】

  • 心房細動が起きると心臓が細かく震え、うまく収縮できなくなる
  • 心房(心臓の部屋)の中で血流がよどみ、「血栓」ができる
  • 作られた血栓は、血流に乗って全身へ
  • 脳にたどり着いた血栓は、脳の血管に詰まる
  • その先には血液が運ぶ酸素や栄養が届かなくなってしまう
  • 太い血管が詰まると、広範囲の脳細胞が一気に壊死し、重篤な麻痺や言語障害を引き起こす

「ただのストレス」と「血栓準備期間」の境界線

寝不足が続いた時、胸がドキドキするのは誰にでも起こり得る反応です。数分休んで落ち着けば「疲れているだけだ」と納得させてしまうのも、忙しい働き盛りにとってごく自然な心理です。たまの動悸に怯えていては仕事にならないというお気持ちは痛いほど分かります。

しかし、危険な境界線は「その動悸が心房細動か否か」にあります。心房細動は初期のうちは「たまに起きてすぐ治まる」特徴があり、やり過ごせてしまいます(発作性心房細動)。しかし、この「すぐ治まる動悸」こそ、心臓の中で血栓を育てる準備期間なのです。

脳梗塞のリスクは「高血圧」や「年齢」などを点数化(CHADS2スコア)して判定します。高血圧を放置していたHさんは、若くてもすでにリスクが加算された「いつ血栓が飛んでもおかしくない状態」でした。「すぐ治まるから」という安心感こそが、脳梗塞を防ぐ機会を奪う落とし穴なのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

その動悸が疲労か、血栓を作っているサインかは以下でチェックできます。

1.脈が「トン、トン、トトトン…」と完全に不規則に打つ
正常な脈は一定ですが、心房細動ではリズムが全くバラバラになります。

2.胸の中で小鳥が羽ばたいているような不快なバタバタ感がある
心臓が正しく拍動できず、細かく震えている時に感じる特有の症状です。

3.動悸と同時に、息苦しさやめまい、強いだるさを感じる
心臓が十分な血液を送り出せず、一時的な酸欠状態に陥っている危険なサインです。

まとめ

すぐ治まる動悸を「疲れだ」と納得させてしまうのは誰しも経験があるでしょう。Hさんが受診を後回しにしたことも決して特別ではありません。

もし心当たりがあっても過度に怯える必要はありません。今はスマートウォッチの「心電図アプリ」で簡単に脈の乱れをチェックすることができます。スマートウォッチがなければ、循環器内科の予約ボタンを押してみましょう。医師に相談するのはより確実な方法です。
実際、CHADS2スコアで1点以上あれば、予防治療を考慮することになっています。現在は、抗凝固薬を飲むことで、脳梗塞の発症リスクを劇的(約6割)に減少させ、血栓が飛ぶ悲劇を高い確率で防ぐことができます。高血圧なども管理できれば、根本的に脳梗塞のリスクを下げることができます。
あなたの気づきを決して無駄にせず、医療をうまく活用して元気な毎日を守りましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。