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元宝塚歌劇団星組トップスター・礼 真琴さんインタビュー「新しいことに挑戦していきたい」

  • 2026.2.19
TAROH OKABE[SIGNO]

自分の引き出しをたくさん増やして、本当にやりたいことを見つけていけたら

宝塚から引っ越す当日は寂しくて切なかったです

礼 真琴さんが宝塚歌劇団を退団してから、もうすぐ半年が過ぎようとしています。そんなにたったのかと思うのと同時に、目の前の礼さんのまとう空気がどこかほんわかと穏やかなものへと変わっていて、まだ半年しかたっていないんだという驚きも。

「退団後に皆さんの前に出るまで3カ月弱ほどありましたが、すべての環境が変わったので、日々が目まぐるしく自分のなかではあっという間でした」

その3カ月の間に、長く生活の拠点となっていた兵庫・宝塚の地を離れて、東京へ拠点を移しています。

「卒業するまで何もせず宝塚の家を放置していたので、退団公演を終えて向こうに戻って家のことをやりつつ、東京と行き来しながら新居も探すといった日々でした。引っ越しのために物を整理していると、忘れかけていた思い出の品が次々と出てきて、足止めを食らってしまって。引っ越し当日は、汗と涙を共に流しながら過ごしてきた家から荷物が運び出され、空っぽになっていくのが寂しくて、ちょっと切なかったです」

環境が変わり、公演に追われる日々もひと区切り。日々のルーティーンにも変化があったのでしょうか。

「やっと髪の毛をブラシでとかすようになりました。19年間ぐらいずっとベリーショートだったので、ドライヤーで乾かして帽子をかぶって帰るみたいなことを平気でしてたんですけどね。今は朝晩ちゃんととかしています。一歩ずつちゃんと進んでおります」

メイクもファッションも一気に選択の幅が広がっています。

「黒とかグレーのコスメは処分して、ピンクベージュとか、柔らかい色みのものをつけるようになりました。洋服は、家にあるものがメンズものばかりだったので、下級生にあげたりして整理しつつ、これは女になっても着られるぞ、みたいなものを厳選してこっちに持ってきて。今はそれを組み合わせて着ています」

新しい挑戦は?と尋ねると、待ってましたとばかりにニヤリと笑い、「パンプスを履きました、プライベートで(笑)」と、嬉しそうに報告してくださいました。

「今までの男役スタイルではスニーカーでしたけど、パンプスを履くだけでちょっと大人の女性に近づけるんじゃないか、と思いまして。パンプスを履くための靴下みたいなものがあるじゃないですか。何て言うかわからないですけど、あれを買いました。近づけた…のかな」

挑戦していきたい気持ちは、昔からずっと持ち続けています

組を背負い、主演という立場で公演を担うのがトップスターです。その重すぎる肩の荷を下ろしたことによる、心境に変化はあるものでしょうか。

「トップになりたてのときは、自分で勝手にいろんなものを背負ってしまっていたところがあったと思うんです。でも辞める前の数年間は、肩の力を抜いて自然体でみんなと一緒に過ごしていたから、何かを下ろしたという感覚はあんまりないんです。ただ、本当に私は前もって計画して動くということができなくて。退団後に自分がどうなりたいかとかを何も考えず、目の前のことしか見ずに辞めてしまったんです。だから退団した後、あらためて自分がどうなりたいか、何をやっていきたいかを急ピッチで見つめ直したという感じです」

そのひとつの答えが、音楽活動、映像、舞台、そしてバラエティなど、幅広い分野で活躍するタレントを擁しているCULEN(カレン)への所属を決めたことにつながっているのかもしれません。

「事務所には思わぬご縁から所属させていただくことになったのですが、今はまだ、これをやりたいというビジョンが明確にあるわけではないんです。でも、自分が知らないものに挑戦していきたい気持ちは、昔からずっと持ち続けていますし、きっとこれからひとりでは手の届かないような場所に行けるんじゃないかとワクワクしています。これまで、舞台で演じる経験はたくさんしてきましたが、幼い頃から見ていた映像の中の世界にはほとんど触れてきていません。舞台と映像ではお芝居のあり方もきっと違うはずで、機会があれば学んでみたいとも思っています。そんなふうに、時間をかけて自分の引き出しをたくさん増やして、本当に自分のやりたいことを見つけていけたら」

TAROH OKABE[SIGNO]

壁にぶち当たってもちゃんと這い上がれてきた

そんな今、自身の武器になるものは、何だと捉えているのでしょうか。

「約16年間舞台に立ってきた経験は絶対に身になっているはずです。あと、物おじせずに新たなところに飛び込める勇気は備わっていると思います」

冒険心があるんですね、と返すと、ちょっとおどけた笑顔を見せて、「私、自分は根暗だと思っていて」と、意外な言葉が返ってきました。

「家の中にいるときの自分は信じられないくらい暗いです。出かける必要がなければいくらでも家にて、ボーッと座っていたり、ずっとゲームをしたりします。でもそういう私に、周りが常に何か挑戦する機会を与えてくださる。わからないなりに突っ走って、そのたびに壁にぶち当たって一回ちゃんと落ち込むけれど、そこから這い上がってこられた。そのことが今、挑戦に向かう自信につながっているのかなと感じます」

礼さんといえば、高い身体能力を生かしたダンススキルと、伸びやかな歌声、そして正確なピッチとリズム感のよさに裏打ちされた高い歌唱力で、入団当初からトップスターになる器と目されていた存在でした。もとより高い実力をもちながら、さらなる高みを目指して努力し続けられる一途さこそが、礼さんの武器なのかもしれません。

「稽古しながらも、本番を重ねていくなかでも、何があっても絶対にここまではいきたい、というボーダーラインを自分に対して無意識に設定している気はします。ここを下回ることは絶対に許さない、みたいな。星組の仲間たちに分析してもらったところによると、そもそもそこで設定しているラインが人より高いところにあるから、すごくストイックに見える…らしいです。私からすると、まわりを見渡して、みんながここまでやっているんだから自分は絶対ここまでいかなきゃアカン、みたいな感じだったんですけどね」

どうやらそんなところにも天性の負けず嫌いが出てしまうようです。

「ちっちゃい頃からそうでした(苦笑)。私には姉がいるのですが、妹ってどうしても2番目にされがちで。それが悔しくて、姉より自分のほうができるんだって、必死になって親にアピールしようとしていましたから」

周りが楽しそうにしていたら私も幸せになるんです

負けず嫌いでストイック、なんていうと、神経質なイメージが浮かびますが、礼さんはどんなときも朗らかです。この日も、自らちゃめっ気を発揮して現場を明るく盛り上げていました。

「もともとの性格もあると思いますが、さまざまな経験をするなかで身に付いた部分も大きいかもしれません。宝塚…とくにトップになってからは、私自身が元気で機嫌よくいることが、組の空気感をよい状態に保つための一番の秘訣だと意識していました。私が笑っているとみんなが安心して笑ってくれるし、私がしんどそうだったり泣いていたりするとみんなだって悲しむし。思っている以上に自分が周囲に与える影響力って大きいんだと、たくさん学んできましたから。だからといって無理しているわけではもちろんなくて。周りの人たちが楽しそうにしてくれていたら、私も幸せになるんです」

ジャケット¥561,000 パンツ¥253,000 ピアス¥94,600 リング〈中指〉¥63,800[参考価格] 〈人さし指〉¥68,200(すべてルイ・ヴィトン/ルイ・ヴィトン クライアントサービス) TAROH OKABE[SIGNO]

読者からの質問に礼 真琴さんがアンサー!

Q. 最近の癒やしは何ですか?

住環境を整えようと、絶賛奮闘中です。注文した家具が届いたとき、組み立ててそれがシンデレラフィットしたとき、最高に気持ちよく癒やされます。

Q. 退団後、最初に購入したファッションアイテムは?

パンプスのときにはく靴下(フットカバー)です(笑)。実はこれまではいたことがなかったので、人生で初めて買いました。

Q. 愛用コスメを教えてください!

今日はこれを使ってみようかなとか、明日は撮影だからこっちにしてみようとか、その日その日で違うので、逆におすすめを教えてほしいです。

Q. よく聴いている音楽は?

テンションの上がるアニソン。オープニング曲ばっかり集めたプレイリストを作っていて、ドライブ中にかけてノリノリで歌ったりしています。

Q. 挑戦したいヘアスタイルは?

男役のときとはフォルムも量も全然違いますし、どんな髪形が自分に似合うかわかってないので、そのときそのときで、髪の毛の伸び具合と相談ですかね。

Q. 得意料理はありますか?

料理自体があまり得意じゃないので、新居のキッチンはいまだにすごくきれいです(笑)。ただ、これから学んでいこうとは思っているんですが…。


礼 真琴さん

PROFILE 2009年、首席として宝塚歌劇団に入団。歌·ダンス·芝居と三拍子揃った実力で注目を集め、’19年星組トップスターに就任。’25年8月『阿修羅城の瞳』『エスペラント!』をもって退団を発表。同年12月には、退団後初となるコンサート「Flare」を行った。

Photos: TAROH OKABE[SIGNO]
Hair & Make-up:ERI AKAMATSU[ESPER]
Styling :KAYO HOSOMI[ZEN creative]
Interview & Text : RISA MOCHIZUKI
25ans(ヴァンサンカン)3月号掲載(2025年1月28日発売)

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