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「どんなにつまらないダジャレでもアイデアを否定しない」『ふしぎ絵物語』著者misato.に聞く、アニメーションを絵本に落とし込む難しさとは【インタビュー】

  • 2026.2.27

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『おやすみレストラン』の著者misato.が贈る、かわいくて、だけどちょっとふしぎな絵の世界『ふしぎ絵物語 おかしがどうぶつに大変身!』。えんぴつがサメになったり、りんごが本物のウサギに大変身したり……そんなふしぎな世界観の制作と構成について聞いてみた。

――misato.さんのアニメーション作品をもとにした『ふしぎ絵物語』ですが、この本はどういうきっかけで生まれたんでしょうか。

misato.:担当編集の野浪さんから「アニメーション作品を本にまとめたい」と声をかけていただいたのがきっかけです。じつは『ふしぎ絵物語』の前に『おやすみレストラン』という絵本を作っていて、映像作品を本という形に落とし込むのは難しいんじゃないか、と思っていたんですね。やっぱり映像は、映像として観るからこそ価値があると思いますし、本にしたときにみなさんが手に取ってくれるんだろうか、という不安があって。ただ野浪さんから熱烈なラブコールを受けて(笑)、「この人となら一緒に作りたいな」と思えたのがスタート地点でした。

――時間とともに流れていく映像作品を、本という形で切り取るにあたって、どのようにアプローチされたんでしょう?

misato.:アニメーションを本に落とし込むときに、どんな魅力があるか考えていくと、やっぱり一枚一枚の絵を止めて見ることができる。普段のイラストであれば描かないような、途中の動きを「絵」として見ることができるのが、やっぱり魅力なのかなと。そんな話を野浪さんにした時に、野浪さんの方からも「動きがブレているコマだったり、そういう途中の動きに魅力がありますよね」とおっしゃっていただいて。その感覚が合致したことで、やってみようという気持ちになれたところはあります。あと私自身、どんなアウトプットになるのか、見てみたい気持ちも大きかったですね。

――実際にコマの形で、自分の絵が並んでいるのをご覧になっていかがでしたか?

misato.:不思議な感覚がありました。なんて言うんでしょう、自分の脳みそを解体されて、見せられている感じというか(笑)。自分では気づかない見せ方だったり、並べ方になっていて。あと『ふしぎ絵物語』を作ってみて、自分のなかで少し変わった部分があって、一枚の絵の「強さ」をもっと上げていきたいと思ったんです。たとえアニメーションであっても、そのなかの1コマを取り上げたときに「もっとこれが見たい」と思えるものが作りたいな、と。これまでは「動かす」ということを意識して作っていたんですが、一枚のコマのなかにストーリーが感じられる、そういうアニメーションをこれから作っていきたいなと思ったんですね。まだちょっと自分のなかでモヤモヤしていて、上手く言語化できていないんですが、『ふしぎ絵物語』を作ることで、それまでもやがかかって見えていなかった壁が見えてきた感じがありました。

――misato.さんの作品を拝見すると、思わず笑ってしまうようなアイデアがたくさん詰め込まれているのですが、制作にあたって心がけていることはありますか?

misato.:自分の考えやアイデアを否定しない、というのはあります。たとえどんなにつまらないダジャレでも――例えば「ふとんが吹っ飛んだ」みたいな言葉でも(笑)、大事にしようと。どんなダジャレでも言葉遊びでも、思いついたらすぐにスマホにメモをする。その場ではどんな表現になるか、思いつかなかったとしても、時間を置いて見直したときに「あっ、この表現はアレと組み合わせられるな」とか「アニメーションには向かなくてもイラストなら行けるかも」って、閃いたりするんです。だからアイデアのメモはできるだけたくさんストックしてますね。

――使えるか使えないかわからなくても、とにかくストックはしておく。

misato.:それこそ、友人とご飯を食べている最中でも「ごめん、ちょっと待って! 今、面白いアイデアを思いついた!」ってメモしたり(笑)。基本的に、仕事と作品と自分の生活が全部一緒くたですね。面倒くさい人生ですが、もう切り離せないです(笑)。

――思いついたアイデアを、実際はどんなふうに作品に昇華しているんでしょう?

misato.:「おやすみレストラン」がわかりやすいかもしれないですね。あの作品は、料理の工程と睡眠にかかわる言葉って意外と近いんじゃないか、というのが発想のもとになっているんです。たとえば「パン生地を寝かす」とか「カレールーをかける」。「寝かせる」という言葉もそうですし、「布団をかける」とか、料理と睡眠にはアクションと言葉遊びに近いものがあるなと思ったんですね。で、掛け合わせたら可愛くなるんじゃないかなと。

――ということは、作品の根っこの部分はわりとロジカルというか論理的なんですね。

misato.:そうですね。で、ベースになるアイデアが決まったら、それを膨らませたり、あるいはそのアイデアがよく魅力的に見える言葉遊びがないかなって、探したり。

――そこで固めたアイデアを、今度は具体的な絵に落とし込んでいく、という。

misato.:ただ最近はアニメーションを作るのに、以前よりも時間がかかるようになっちゃいましたね。アイデアを思いついたら、なるべく早く完成したものを見たいんですよ。自分の頭のなかにあるものを、表現として早く見たい! っていう気持ちがある。だからなるべく時間をかけたくないんですけど、それでも最近は1本作るのに、1ヵ月くらいかかっちゃいますね。寝ずにギュッと詰め込んで、2週間くらい(笑)。

――時間がかかるようになってきたというのは、やっぱり絵の枚数を描くようになっているからなんでしょうか?

misato.:そうですね。これまではここにあるアイデアを表現できればいい、観ている人に伝わればいいと思っていたんです。でも今は、このテーマを伝えるにあたって、キャラクターたちがどういう性格を持っていて、どんな動きをすると可愛いのかな? と考えるようになっていて。そのぶん情報量が増えるので、作画に必要な枚数も増えて、結果的に制作にめちゃくちゃ時間がかかるようになってしまいました(笑)。でもやっぱり、そういう細かなこだわりは観ている人たちに伝わるし、喜んでもらえるところなんですよね。

――misato.さんの作品はどれも、色づかいがとても優しくて、独特の雰囲気がありますね。色については、どんなふうにアプローチされているんでしょうか?

misato.:そもそも私は色がそれほど得意ではなくて(笑)。普段から、好きな雰囲気の絵を集めてるんですけど、そうするとやっぱり、ああいう感じの色づかいになるんですね。だから「ああいう色が欲しい」というのは、完全に自分の感覚ですね。それは音楽に関してもそうで、楽譜はギリギリ読めるけど、音楽に関する知識はまったくダメなんですよ。なので、いろんな音源を映像に合わせてみて「ここは上手くハマるな」とか。そういう感じでやっています。

――ベースになる部分はロジカルなんだけど、アウトプットに関しては感覚に任せているところも大きいんですね。

misato.:そうですね。ネタを考えるのはロジックでも、表現に関しては――もちろん、動きの基本構造だったり、力の伝わり方をしっかり観察したうえで表現するのはとても重要なことなのですが――結構、感覚かもしれません。以前、アニメーションの会社に在籍していたんですが、そこで後輩に教えるときも「ギュッとなって、クーッとなって、こうじゃん?」みたいな(笑)。そういう教え方以外できなくて、「ここをキュッと」みたいな話を、隣でずっとしてました。

――あはは(笑)。misato.さんにとって、アニメーションとイラストの違いは、どこにあると思いますか?

misato.:なかなか難しいですね。わたしにとっては「違い」というよりお互いの延長線上にあるのかもと思います。アニメーションも一枚の絵から動き出すんだから、当然だろうという話かもしれませんが……。今、イラストを描く時もアニメーションの時と同じように、「動き」を切り抜いたような一枚を描きたいなと思っていて。というのも、自分がイラストを描く時、動きの躍動感を描けていないなと感じるんですね。アニメーションで動きを描いた時の方が、自然で可愛い一枚が描けることがある。これをイラストにすればよかったかも、と思うことが多々あるんです。

――なるほど。

misato.:最初からその一枚が描ければいいのですが、動きの流れを考えている途中で生まれる一枚だったりするので、なかなか難しい。なので今は、まずはアニメーションを描いてから、その途中の動きのコマをイラストとして昇華してみようかなと思っています。あとイラストは、動かすことを考える必要がないので、細かく描き込みができるんです。その一方で、アニメーションの場合は、細かく描き込んでしまうと、その描き込みごと動かさなくてはいけなくなる。結果的に、どうすれば動かしやすい表現になるか、考えているところがあって。逆に言えば、それがアニメーションの表現の幅を狭めている気がするので、そうした考えもできるだけなくしていきたい。アニメーションを作る過程で描いていたからこそ、生まれた動きや形。そこから生まれる動きの面白さを追求したいと思っていますし、その動きのどの一枚をとっても絵として魅力あるものにしたいと思ってます。

――制作するのは、どちらが楽しいですか?

misato.:アニメーションですね(笑)。例えば「この子がすごく喜んでいる」という状況があったとして、どんなふうに喜んでいるかを、アニメーションなら動きで表現できる。めちゃくちゃ高くジャンプするくらい喜んでるのか、それとも小躍りするような感じで喜んでいるのか。アニメーションだとそこが伝えられる。生命が入る感じが――まだいろいろ模索している最中ですけど、ようやく表現できるようになった。だからこそ、今すごく楽しいというのはありますね。

――misato.さんはアニメやイラストなど、メディアをまたいで活動されていますが、今後チャレンジしてみたいことは?

misato.:先日、とある方の展示を拝見する機会があったんですが、体験型の展覧会みたいなものをやってみたい、と思いました。実際にできるかは未知数なんですけど(笑)。私は「言葉がなくても伝わる」とか「誰が観てもわかる」みたいなところを大切にして作品を制作しているんですが、そういう意味でシンプルにわかりやすく、楽しい体験ができる体験型の展示はぴったりなんじゃないかと思ったんですね。

――作品を完成させたらそれで終わり、ではなくて、観客とのコミュニケーションのよう

なものを求めている、ということなのかもしれないですね。

misato.:そうかもしれないですね。もともと私自身、あまり長い時間、映像を観ていられない人間で。以前、ある人から「広告動画の良し悪しは冒頭の6秒で決まる」と言われたことがあって、そこで「もっと見たい」「この後、どうなるんだろう?」という気持ちを引き出せるかどうかが大切だ、と。その言葉は、私の作品制作にも大きな影響を与えているんですが、そういう意味で体験型の展示は「これってどうなるんだろう?」と思いながら、作品を楽しんでもらえるのかなと。しかもそこで観客の方が得た体験や経験が、私自身にもフィードバックして、意識を変えてくれるような気もするんですね。

――なるほど。では最後に、これから『ふしぎ絵物語』を手に取る方に向けて、メッセージをお願いします。

misato.:この本から入った方には、この絵が実際にどんなふうに動くのか、想像してもらったうえで、答え合わせとしてアニメーションを観ていただければと思いますし、アニメから入った方には「この世界が、じつはこんなふうに作られていたんだ」と感じていただければと思います。あと、アニメーションが本になったのを見て、どんなふうに感じたのか、聞かせてもらえると嬉しいですね。

著者プロフィール

misato.(みさと)

武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。アニメーション作家として Instagram や X など自身の SNS にて GIF アニメーションをメインに作品を発表し続け、独自の世界観でファンを獲得。企業コラボや商品化、書籍化など幅広く展開中。2023 年、『おやすみレストランおすしやさん』(岩崎書店)で絵本作家デビュー。アニメーション作家、絵本作家として活動中。

X(旧Twitter):@misato08280

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