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宮田愛萌『このミス』大賞魅力を語る。「冒頭6ページで1920年の中国世界に没入してしまった」『最後の皇帝と謎解きを』【インタビュー】

  • 2026.3.8

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宝島社が運営する2026年第24回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した『最後の皇帝と謎解きを』(犬丸幸平/宝島社)は一風変わった歴史ミステリーだ。

舞台は国際的な緊張が高まる1920年の北京。その中心である紫禁城で起こる事件に、なんと元皇帝の溥儀と日本人絵師が挑むというもの。謎を解く中で、次第に二人の間には身分も国も超えた友情が――。

この作品を無類の本好きで知られる元日向坂46の宮田愛萌さんはどう読んだのか? 感想をお聞きした。

●ミステリーなのに、ラストで泣いてしまった!

――本作を読んでいかがでしたか?

宮田愛萌さん(以下、宮田):ミステリーなのに主人公たちの友情とか人の心の動きがすごくよくて、ハッピーエンドを祈る気持ちのまま読み続けてラストでちょっと泣いちゃいました。私、友情の物語がすごく好きなんですよ。なので胸が熱くなって「この本、好き」って。

――舞台は1920年代の中国、廃帝となった愛新覚羅 溥儀の住む王宮・紫禁城です。なかなか特殊な世界ですがすんなり入れました?

宮田:あらかじめ情報を入れたくなくて帯を外して読み始めましたけど、あんまり気にしなかったですね。もともとジャンルは気にしないほうなので、今回も「そうなのね」と思っただけでした。ただ登場人物の読み方は中国語で難しく、音読したりしましたが。実はあまり歴史が得意ではなくて、最初は時代のことはあまりピンと来ていなかったのもあります。読んでいくうちに溥儀とか知っている名前を見つけて「そういう世界なのね」ってわかって、もうちょっとちゃんと勉強しておけばよかったと後悔したりしました(笑)。

――歴史がわかることで感じる面白さもあるかもしれませんが、「知らなくても楽しめた」のは大事です!

宮田:読みながら「そっか、だからこういう状態なんだ」とか理解できるので、歴史とか苦手でも楽しめるのは確かです。当時の風俗もさらっと出てくるからスッと入っていけるし、背景は背景として物語を純粋に楽しめますよね。あとは主人公が日本人(水墨画の帝師・一条剛)っていうのもよかった。やっぱり感情移入しやすいですから。

――謎解きももちろんですが、剛と溥儀の友情が物語の柱になるのも面白いですよね。

宮田:そうなんです。だからミステリーを読み慣れていない人でも読みやすいと思います。実は私、ミステリーもすごく好きなんですけど、怖がりだから夜は読めないし、誰か周りに人がいないと読めなくて……でもこの本は夜でも大丈夫だと思いました。

――それはよかった! ちなみに好きなシーンはありますか?

宮田:産婆が赤ちゃんの名前をつけて、その名前を剛が墨で書く、本当に物語の冒頭のシーンかな。剛が毛筆で書く様子から空気感が一気に伝わって、すごくいいなって。淡い黒という墨の色の描写もなんだか空気がふわっとするし、墨の匂いまで感じる気がして。私、小学生の時に一回だけ水墨画の体験みたいなことをしたことがあるんですけど、その時のこともなんとなく思い出して、筆の動きが見えた気がしました。

――ふわっとした気配が物語の世界へ一気に誘ったんですね。日頃から本の世界に没入するのは早いほう?

宮田:早いですね。今回は6ページ目くらいからで、それこそ冒頭の「噯呀(アイヤー)」って台詞だけでもう私の日常とは違うし、「ここから世界が始まる」ってワクワクしました。むしろ現代の日本を描いた作品じゃないからこそ頭から没入できたし、馴染みがないからこそ、逆にどういう世界なのかもっと知りたくなってどんどん読んじゃいました。

――表紙も「いかにもミステリー」ではなくやさしい感じですよね。

宮田:いいですよね。最初は可愛いなって思っただけでしたが、読み終わってもう一回表紙を見るといろいろ「ああー」って(笑)。描かれている二人が、それぞれ反対の方向に向かっていくのに、でも視線を交わしているんですよね。

――ちょっと暗示的です。ちなみに「男性の友情もの」って腐女子的な発想もされがちですが、そういうのはどう思います?

宮田:私は「関係性オタク」なので、恋愛でも友情でもなんでも「心を通わす」ことが大好きなんです。この二人の「恋にならないけど、ただの友情で片付けるにはもったいないみたいな関係性」は、たぶんブロマンスっていうんですけど、私はあえてそっちの路線ではなく、今ここにある「関係性」に集中していくタイプ。とにかく「この一瞬に、ここでできたものが大事」なので、腐女子的な感覚の方のためにはせめて幸せな最後を書いてくださいって思います(笑)。

●文学賞受賞作とは、意識しなかった。

――本作は「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作です。このほかの受賞作は読んだことありますか?

宮田:『元彼の遺言状』(新川帆立)と『女王はかえらない』(降田天)は読みましたね。ただ「受賞作!」って騒がれているときじゃなくて、ちょっと落ち着いてきたタイミングで店頭に積んであるのを手に取ったんだと思います。

――「文学賞受賞作だから読む」という選び方はしない?

宮田:あんまりしませんね。たぶん受賞作は2ヶ月後でも本屋さんで買えますけど、一冊だけ書棚に差してある本とかはたぶん無くなったら終わりじゃないですか。だから「先に買っておかなきゃ」って。

――じゃあ本作も「大賞受賞作」とはあまり意識しなかった?

宮田:はい。なんの情報も入れずに「なんかこれいいな」って思いました。考えてみると、たぶん私の中の若さというか、どっかに「大賞受賞作を読むって大衆的で恥ずかしい」みたいなのがあるのかもしれません。尖ってるというか、権威的なものより「私のいいものは自分で見つけてやるぜ!」みたいな(笑)。自分の感性でピンときたものを読みたい気持ちが強いし、私の部屋の本棚は、私が「いい」と思ったものだけを並べる〈全部自分だけのセレクト書店〉だと思っていますから。

――YouTubeで見ましたが、「この本!」ってパッと書店で本を選び取る姿が印象的で。どんなところに反応するんですか?

宮田:基本的には「表紙」ですね。「こういう雰囲気が刺さる人に読んでもらいたい」って作られているのが表紙だから、それがいいと刺さる可能性が高いです。あとは……本当にいろんな人から「はっ?」て言われるんですけど、「これは自分の本だ!」って感覚があったりすることかな。

――それは「呼ばれてる」みたいなこと?

宮田:はい。例えば積みあげられた本があったとすると、その中でもなんとなく下から4番目とかの本に「これ私の本だ」とか感じたりするんです。他の本と同じでも、なんか「これだ」ってすごくしっくりくる。しっくりくると買いますね。私は本だけは「我慢しない」って決めているので、家はすごいことになっていますけど…(笑)。

――今、ご自身で小説も書いていらっしゃいますが、そうした本好きの側面は作家になったことで変わったりしませんか?

宮田:立ち位置はそこまで変わっていませんが、文体が引っ張られたりすることもあるので読んだ直後は書きません。逆に書いた後に読むと本に入りにくかったりすることもあるし。なので、なるべく書くときと読書とは間をあけるようにはしています。

――逆に本読みであることは、作家としてメリットになる?

宮田:書いている間はそこまでは感じませんが、本の装丁とかの話になってくるとすぐに理解できるのはメリットかもしれません。「こういう色で」「ああいう感じで」って言われるだけでパッとイメージできますから。

――いまや自分で大好きな「本」を生み出せるわけで、そう考えるとどうですか?

宮田:正直、怖いです。最初こそ、ほんとに「ただの本好きなのに、出してしまった!」って思っていました。ただ私は「自分が読みたい話」を書いているので、自分の本を読むと「え、面白い。この人と趣味合う」って思ったりすることもあって(笑)。「私、こういう話が読みたいのよ!」って思っちゃうんですよ。

――なんと! たくさん本を読んでいても、読みたい本に巡り合えていなかった?

宮田:まだ見つけられていないだけなのかもしれないですけどね。ただ登場人物とかのビジュアルは自分好みにしたいじゃないですか。だからそういうのを高校時代によくやっていたんです。当時は女の子キャラが出てくるものしか読まなかったし、可愛い女の子しか好きじゃなかった。どんな本も絶対に男が出てきて恋愛に発展してしまうので、「なぜコイツらはくっつくんだ?」ってモヤモヤして、だから絶対に恋愛にならない小説を自分で書いていました。

●ミステリーが苦手な人でも安心して楽しめる

――タレントで無類の本好きで作家で……そんな忙しい中で読む時間はどうやって捻出していますか?

宮田:移動の時とかの隙間時間。ただ本があると読んじゃうから、睡眠時間が削られています。たまにお風呂に入る前に読み始めて、半分脱いでるような状態のまま脱衣所に座り込んで、読み終わってお風呂に入る、みたいなこともあります。自分が「隙間」と決めた時間に読む感じなんですけど、結局最後まで行っちゃうので、本を読むのが速くてよかったです。

――ちなみに本作はどのくらいで読みました?

宮田:うーん、1時間ちょっとかな。

――それは速い!

宮田:どんな世界か知りたくてどんどん読んで、終わりが近くなってくるともったいないからゆっくり読んで。中国語も混ざった世界観がしっかりあるので、本当はサラサラ読むより一語一語じっくり味わいながら読んだほうが面白さが増すかもしれませんけど。

――そして怖いのが苦手でも、普通に楽しめると。

宮田:そうなんです! 友情とか温かい話が心に残るから、ミステリーが苦手な人でも安心して読めると思います。やっぱり血が怖いとか、人が死ぬのが怖いとかありますから、そんな人には「人は死にますが、でも大丈夫」ってオススメしたいですね。実は私も「殺人事件」ってわかって読んだミステリーでも、やっぱり「あー死んだかー」ってちょっと悲しい気持ちになったりしますから。

この本も人は死にますけど、ちゃんとアフターケアがしっかりしています。主人公がひとりひとりとしっかり向き合って理解してから謎解きが進むからすごく丁寧だし、ちゃんと弔いの気持ちも持てます。私のように怖いのが苦手な人でも安心して楽しめるし、ほんといいんですよ。

取材・文=荒井理恵、撮影=後藤利江

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