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「ヘッドライトを丸ごと交換したのに点灯しない…」現代車のヘッドライトDIYに潜む“意外な落とし穴”

  • 2026.2.20
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

整備工場からの相談の中には、「ユーザーが部品交換した後に不具合が出た」という内容もあります。

今回は、ヘッドライトをユーザーがDIYで交換した後に発生したトラブルの紹介です。実際に私が経験した出来事をもとに、交換時に気をつけていただきたいポイントを体験談としてお話しします。

交換したのにライトが点かない?

ある日、「ヘッドライトを丸ごと交換したのに点灯しない」という車両が入庫しました。メーターパネルには「ヘッドライトシステム故障」の警告メッセージ。しかも左右ともにまったく点灯しません。

整備士が点検すると、ヒューズも配線も正常。ADB(アダプティブドライビングビーム)搭載車はLED一体型が多く、構造的に「バルブ(電球)」が含まれないケースがあるかと存じます。さらに修理書などを元に原因を追っていくと、問題はヘッドライトに取り付けられているコンピュータ(ECU)にあることがわかりました。

いまのヘッドライトは「電子制御装置」

従来のヘッドライトは、スイッチを入れれば点灯するシンプルな装置でした。

しかし現代の車は違います。以下のような装備が備わっています。

・オートライト(周囲の明るさで自動的にライトを点灯させる機能)
・オートレベリング(車高に応じて光軸を自動調整)
・オートハイビーム(ロービームとハイビームを自動で切り替え)

そして近年増えているのが、ADB(アダプティブドライビングビーム)です。

これは対向車や先行車の部分だけを部分的に遮光し、それ以外はハイビームのまま広範囲を照射できる高度なシステムで、歩行者や標識の視認性向上にも大きく貢献します。

このような機能を実現するため、車両ECUとヘッドライトECUが常に通信し、照射範囲や光量をリアルタイムで制御しています。つまり現代のヘッドライトは、単なる照明ではなく電子制御ユニットなのです。

交換後に必要だった「もう一つの作業」

今回の車両はヘッドライトを丸ごと交換していたため、コンピュータも交換されていました。

ここで必要になるのが、以下の2点です。

・ヘッドライトECUの初期化
・車両情報の登録作業

正確に言うと、コンピュータを交換した場合に以上の作業が必要です。

この作業には、専用の車両診断機(スキャンツール)を使う場合と使わない場合で、それぞれ作業要領が定められています。しかし、これは車種によって変わる可能性がありますので、ご注意ください。

上記作業を行っていない状態では車両がヘッドライトECUを認識できず、安全制御によって点灯しないことがあります。今回の「警告表示・左右不点灯」はまさにこの状態でした。

 

以上のことから、車両診断機を使用し、上記作業を実施しようとしましたが、失敗したのです。

原因を調査するため、メーカーに問い合わせると、以下のような注意点が発覚しました。

中古コンピュータはそのまま使えないことが多い

車種や仕様によって異なりますが、ヘッドライトECUは、一度車両情報を書き込むと再書き込みできない仕様のものが多くあります。

つまり、
・他車から外した中古ECU
・出所不明のコンピュータ

これらは別の車両では使用できない可能性が高いということです。見た目が同じでも内部データが一致しなければ正常に動作しません。中古部品を購入する際は特に注意が必要です。

今回の車両には中古のヘッドライトに交換されていたため、交換したECUには以前の車両のデータが入っており、作業が失敗したと思われます。

実際に行った対処法

今回は、交換したヘッドライトに付いていたコンピュータを使用せず、もともと車両に取り付けられていたコンピュータを移植しました。

元の車両情報が書き込まれているECUであれば認識される可能性があるためです。

結果、警告は消え、ヘッドライトも正常に点灯しました。

DIY交換を検討している方へ

最近の車は電子制御化が進み、「交換すれば終わり」という単純な作業ではなくなっています。

ヘッドライトも例外ではなく、

・初期化が必要か
・車両登録が必要か
・専用診断機が必要か

これらは車種によって異なります

DIYで交換される方は、作業前に一度確認してから実施することをおすすめします。知らずに交換すると、「壊れていないのに点かない」という状況に陥ることもあります。

ヘッドライトは安全装置の一部

今回の経験から改めて感じたのは、ヘッドライトは単なる照明ではなく、安全運転を支える重要なシステムだということです。高機能化した現代の車だからこそ、正しい知識がトラブル防止につながります。

これからDIYに挑戦される方の参考になれば幸いです。安全で快適なカーライフをお過ごしください。


筆者:松尾佑人(二級ガソリン・ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年にわたり技術分野に従事。メーカーを問わず、主に現役メカニック向けの自動車整備・故障診断アドバイザーとして活動し、新機構研修、故障診断勉強会、検査員教習、自動車整備士資格講習の講師を歴任。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路の理解や配線図の読解を基盤に、電子制御システムの解説を得意とする。
現在は自動車専門ライターとして、トラブル診断、車両構造・電子制御の解説、DIYによる整備・カスタムなど幅広い分野で執筆。専門性の高い内容を一般ユーザーにも分かりやすく伝える実践的な解説に定評がある。自身でも日常的にマイカーの整備・改造を行っており、ユーザー目線に立ったリアルな情報発信を行っている。


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