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「売れば赤字」家賃月10万円vsローン月10万円→10年後、夫婦2組の明暗を分けたのは【不動産のプロは見た】

  • 2026.3.11
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

「家賃は掛け捨てだからもったいない」
「同じ10万円なら、買ったほうが資産になる」

このような話を、飲み会や親戚の集まりで耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし、10年後にその選択を数字で振り返り、本当に得をしたのかまで確認している人は多くありません。支払額だけで安心してしまうケースがほとんどです。

今日は、同じ月10万円を、ベースとなる住居費に使った2人の10年後の結果を紹介します。

  • 家賃10万円を10年間払い続けた人
  • 同じ月10万円でマンションを購入した人

比べるポイントは、支払った総額ではありません。10年後に実際いくらの財産が残ったのか、純資産で判断します。

賃貸を選び、積み立てを続けたAさん

10年ほど前、Aさん(30代後半・会社員・年収約600万円・子ども1人)からご相談を受けました。当時、周囲からは「家賃はもったいない」「同じ10万円なら買ったほうが得だ」と言われていたそうです。それでもAさんは購入を見送りました。

「賃貸で暮らします。その代わり、毎月きちんと積み立てます」

Aさんが選んだ内容は次のとおりです。

  • 家賃:月10万円
  • 毎月5万円を積立投資(想定利回り 年4%)

住居費は生活に必要な固定費と割り切り、余力を資産形成に回す考え方です。将来のために、現金として使えるお金を増やすことを優先しました。

「家賃はもったいない」から始まったBさん

一方、同じ時期に相談に来ていたのがBさん(30代後半・会社員・年収約600万円・子ども1人)です。Bさんの考えははっきりしていました。

  • 家賃に毎月10万円払うのはもったいない
  • 同じ10万円なら、資産になるマンションを持ったほうがいい

購入したのは3,550万円の新築マンションです。金利1%・35年ローンで、毎月の返済額は約10万円でした。

さらに、毎月かかる費用は次のとおりです。

  • 管理費・修繕積立金:月5万円

住宅関連の毎月の支出は、合計で約15万円になりました。当時は、周囲の多くがBさんの決断を支持していました。資産を持つことが将来の安心につながるという考え方が一般的だったからです。

10年後の“純資産”で答え合わせ

10年後、2人の明暗ははっきりしました。支払った金額ではなく、実際に残った財産の中身で差が出ました。

Aさん

  • 家賃総支払額:約1,200万円(10万円×12ヶ月×10年)
  • 積立元本:600万円
  • 運用益:約137万円
  • 金融資産合計:約737万円

737万円は、必要になればすぐ引き出せるお金です。現金や投資信託などの流動資産として手元に残っています。

Bさん

  • ローン支払総額:約1,200万円
  • 管理費・修繕積立金:約600万円
  • 住宅関連総支払額:約1,800万円

10年後のローン残債は約2,690万円(元利均等返済では毎月の支払額に利息が含まれており、返済初期は利息の割合が高いため、元本は約860万円しか減っていません)です。

※本記事のシミュレーションは比較をわかりやすくするための概算です

物件価格で明暗が分かれる

ここだけを見ると、やはり購入したほうが得だったように感じるかもしれません。しかし、本当の差が出るのはここからです。問題は、マンションの価格がどうなったかでした。

Bさんの結果は、マンションの価格次第で大きく変わります。

ケース1:価格が維持された場合(3,550万円)

純資産の計算は次のとおりです。

3,550万円 − 2,690万円 = 約860万円

Aさんの737万円と比べると、やや有利な結果です。価格が下がらなければ、購入は資産形成につながったと言えます。

ケース2: 価格が下落した場合(3,200万円)

3,200万円 − 2,690万円 = 約510万円

この場合、Aさんの737万円を下回ります。わずか350万円の下落で、立場は逆転します。

さらに問題となったのが、売却のしにくさです。売り出しても、成約まで3〜6か月はかかるケースがあります。

不動産は固定資産です。売却しなければ現金にはなりません。帳簿上860万円、あるいは510万円の資産があっても、実際に使えるお金とは限らないのです。

「同じ月10万円」の罠

2人とも、毎月の住居費は10万円前後でした。

しかし、10年後に残った資産の中身は大きく異なります。

項目 Aさん Bさん(価格維持) Bさん(価格下落)
純資産 約737万円 約860万円 約510万円
現金化のしやすさ すぐ可能 売却が必要 売却が必要
市場価格の影響 受けない 受ける 受ける

数字だけを見ると、価格が維持されればBさんのほうがやや有利です。しかし、価格が下がれば一気に逆転します。さらにBさんには、別の問題がありました。

  • 転勤による急な売却
  • 購入価格を下回る査定額
  • 売却すれば赤字になるという現実

実際に、価格が下落したタイミングで転勤が重なり、売却を検討せざるを得なくなったケースもあります。査定額は購入価格を下回り、売れば赤字という状況でした。その現実を前に、夫婦で激しく口論になり、感情的になる場面もありました。

答え合わせは支払額ではなく純資産

家賃は掛け捨て、ローンは資産になる。この考え方には一理あります。しかし、それだけで判断するのは危険です。本当に確認すべきなのは、次の3点です。

  • 総支払額ではなく、10年後にいくら資産が残るか
  • 物件価格が下がった場合でも純資産がどうなるか
  • その状況でも家計に無理がないか

大切なのは、これまでにいくら払ったかではありません。最終的に、いくら手元に残るかです。

さらに重要なのは、「価格が下がる」「収入が減る」「転勤になる」といった変化が起きても、家族が安心して暮らせる設計になっているかどうかです。そこまで考えて初めて、後悔の少ない住まい選びにつながります。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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