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切符を投入する光景が消える…?1969年から続いた磁気改札が大転機。鉄道社員が語る、知られざるウラ事情

  • 2026.3.15
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

駅の改札口を通るとき、切符を投入口に入れると一瞬で吸い込まれ、先の方からひょっこりと顔を出す――。当たり前のように繰り返してきたこの光景が、今、大きな転機を迎えています。

私たちの生活を支えてきた磁気切符と自動改札機の仕組みが、最新技術によって劇的に塗り替えられようとしているのです。

自動改札機の黎明期から「磁気」の時代へ

日本で初めて自動改札機が実用化されたのは1967年、京阪神急行電鉄(現在の阪急電鉄)の北千里駅でした。当時は定期券専用で、券に開けられた穴の位置で情報を読み取る「パンチカード式」という仕組みでした。

その後、1969年には切符の裏面に磁気層を塗り情報を記録する「磁気乗車券」用の改札機が登場します。切符を投入すると、内部のベルトやローラーが高速で搬送しながら磁気ヘッドで情報を読み取り、瞬時に判定して扉を開閉する。この精密なメカニズムは日本全国へと広がり、世界でも類を見ない正確でスピーディーな改札を実現しました。

なぜ「磁気切符」をなくしたいのか?

ICカードの普及により紙の切符を見かける機会は減りましたが、長距離利用などを中心に今も根強い需要があります。しかし、鉄道会社にとって磁気切符の維持は大きな負担となっています。

まず問題になるのがメンテナンスのコストです。自動改札機内部の複雑な搬送機構は、消耗部品が多く、定期的な清掃や部品交換に多大なコストがかかります。駅で係員が改札機を開けて点検をしている光景を見かけたことのある人は少なくないでしょう。

また、環境への配慮も課題です。磁気粉が塗られた切符はリサイクルが難しく、多くは産業廃棄物として焼却処分せざるを得ません。それでも一部の鉄道会社では廃棄物の削減を目指して、切符の磁気層を分離させてリサイクルする取り組みもおこなわれています。しかし、コストや手間は多く、根本的な解決が待たれていました。磁気切符をどうするかは、鉄道会社にとって昨今の環境経営の流れのなかでも課題だったのです。

こうした背景から、磁気を使わない新しい認証方式への移行が加速しています。

QRコードとクレジットカードが拓く新時代

磁気に代わる有力候補はICカードで、都市部を中心に圧倒的に広がっていますが、長距離での利用やフリーパスのような企画乗車券には使いづらく、磁気の切符の決定的な代替にはなっていませんでした。

そんな中で普及しているのが「QR乗車券」です。沖縄県の沖縄都市モノレール(ゆいレール)での導入を皮切りに、今や全国へ波及しています。JR東日本では2024年から東北エリアの一部路線で「えきねっとQチケ」サービスを開始し、翌2025年には東京都内でもサービスを開始するなど、順次サービス対象エリアを拡大しています。また、関西では、スマホアプリ「KANSAI MaaS」やスマホサイト「スルッとQRtto」で企画乗車券を購入し、スマホの画面に表示したQRコードを改札機のリーダーにかざすスタイルが定着しつつあります。

鉄道各社ではさらなる方針を打ち出していて、首都圏の鉄道8社では2026年度末以降から、JR西日本でも2028年度以降から近距離の磁気切符を廃止し、QR乗車券へと順次移行する計画が発表されています。さらに、都市部を中心に普段使っているクレジットカードをそのまま改札機にタッチして乗車できる「クレカタッチ決済」の導入も急速に広がっています。

「顔パス」で改札を通る未来

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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

さらにその先、カードやスマホすら取り出す必要のない未来がすぐそこまで来ています。それが「顔認証改札機」です。

千葉県を走る新交通システムの山万ユーカリが丘線では2024年から顔認証乗車システムの「ユーカリPASS」を導入しました。

また、大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)は、複数の駅において既に顔認証改札機の順次導入・実用化を進めています。JR西日本からは、2026年2月、より認識精度が高く実用的な最新モデルも発表されました。

こうしたシステムが普及すれば、文字通り「顔パス」で駅を利用できるようになり、物理的な改札機のゲートすら必要なくなる時代が訪れるかもしれません。

駅で時折見かける改札機のメンテナンス風景。カバーを開けた内部に見える、無数のベルトやローラーが組み合わされた緻密な構造は、少し大げさに言えば「動く芸術品」のようでもあります。

この複雑な機械たちが日本の過密な鉄道輸送を長年支えてきたことに思いを馳せながら、変わりゆく駅の姿を見守っていきたいですね。


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、鉄道業界を15年以上経験。鉄道部門だけでなく、関連事業部門のタクシーやバス、小売りなどを幅広く経験。現在はWebライターとしても活躍し、広報を担当した経験からコラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで幅広く活躍中。


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