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新築マイホームなのに「車が入らない…」市役所もお手上げ…40代男性が事前に見抜けなかった“落とし穴”【一級建築士は見た】

  • 2026.2.15
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出典元:photoAC (gazouhaime)の情報、または画像の説明

「2項道路ですがセットバック済みで、4mの幅があります。車も通れますよ」

不動産会社の説明を受け、2項道路の奥にある古家付きの土地を購入したTさん(40代男性)。

2項道路とは、現状の幅が4m未満でも、建て替えなどの際に敷地を道路側へ後退させ、将来的に4mの幅を確保していく考え方の道路です。

Tさんは新築にあたり、自分の敷地側は指示どおりセットバックして工事をしました。しかし、いざ入居してみると、自分の車がどうしても家まで辿り着けないのです。

セットバック部分を彩る「動かせない花壇」

原因は、向かい側の敷地のセットバック部分に置かれていた、レンガ造りの花壇でした。

向かい側の住人としては、「自分の敷地の中で、花を植えて整えているだけ」という感覚かもしれません。しかし、道路として使える幅が十分に確保できず、ミニバンの内輪差で角を曲がりにくくなっていました。

「市役所に相談すれば撤去を求めてくれるのでは」と考えたTさんは相談に向かいましたが、「法的な行政指導はできない」と説明を受けます。

「行政指導できない」というジレンマ

ここで問題になりやすいのは、セットバック部分にあるものが、法律上どのように扱われるかです。

・建築物、工作物に当たるもの
塀、門扉、擁壁など、一定の条件で「工作物」(構造物)として扱われるものは、行政指導の対象になります。

・置いただけの物・植栽など
プランター、並べただけのレンガ、花壇などは、「建築物」や「工作物」にあたらないため、建築基準法の枠組みでの指導は困難です。

・所有権の問題
セットバック部分は、将来的に道路状空間として確保する考え方がある一方で、登記上は個人の所有地であることが一般的です。そのため、道路法のように行政が強制撤去できる仕組みとは異なります。

「私道リスク」の回避術

Tさんは、通行地役権(他人の土地を通行する権利)なども含めて検討しましたが、費用や近隣関係への影響を考え、現実的ではないと判断しました。

こうしたリスクを減らすために、土地購入前に「図面」だけでなく、次の点を現地で確認しておくことが重要です。

・「セットバック済み」の意味を具体的に確認する
セットバックの線がどこか、現況で道路状空間が実際に空いているかを確認します。杭や標識があっても、置き物で実質的に狭くなっていることがあります。

・道路の種別と権利関係を確認する
2項道路かどうかだけでなく、道路の認定状況、幅員、後退の考え方、私道か公道か、持ち分や通行・掘削の承諾が必要かを確認します。

・車での通行を前提に「曲がれるか」を見る
幅員だけではなく、角の見通し、電柱やブロック、植栽の張り出しなど、実際の走行条件を確認します。可能であれば同等サイズの車で現地を確認します。

・私道協定書・覚書の有無を確認する
通行や掘削の承諾に加え、「セットバック部分に物を置かない」などの取り決めがあるかを確認します。

2項道路で起こりやすい“近隣トラブルの火種”

2項道路のセットバック後は、あくまで「みんなで道を通行しやすくしよう」という協力関係の上に成り立っています。

しかし、そこに「自分の土地をどう使おうと自由だ」という強い考えを持つ隣人が現れたとき、近隣トラブルに発展する可能性があります。

そのため、2項道路が絡む土地は「買ってから解決する」よりも、「買う前に状況を把握しておく」ほうが現実的です。

自衛策は「買う前に見抜く」こと。道端に置かれた一つの植木鉢が、あなたの数千万円の家づくりを台無しにする可能性があるのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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