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全館空調を採用も「想定と違った…」入居初日、4人暮らし・30代男性を襲った“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.2.15
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「家中の温度が一定だから、冬のヒートショックも不安が減ると思っていました。かなり快適だと感じていたんです」

そう語るのは、全館空調を採用した注文住宅に入居したNさん(30代男性、夫婦+子ども2人の4人暮らし)。

ところが入居初日の夜、寝室で気になる点が出てきました。ドアを閉めているはずなのに、廊下の照明の光が足元から差し込み、リビングで家族が見ているテレビの音も想像以上に伝わってきたのです。

原因は、ドアの下に設けられた「アンダーカット」(室内ドア下部に設ける通気のための切り欠き)と呼ばれる隙間でした。一般的に、1〜2cm程度の隙間を設けるケースがあります。

なぜドアの下に隙間を設けるのか

全館空調を安定して運転するには、家全体で空気を循環させる必要があります。

・空気の通り道
各部屋に吹き出した空気が、再び空調機に戻るための経路(リターン=戻りの空気の流れ)が必要になります。

・アンダーカットの役割
ドアを閉めた状態でも空気が通るよう、意図的に隙間を設けます。

住宅会社によって考え方や仕様は異なりますが、アンダーカットを標準とするケースは珍しくありません。

一方で、空調の仕組みを説明する際に、隙間があることで「光や音が伝わりやすくなる可能性」まで十分に共有されないこともあります。

寝室が「廊下の一部」になるストレス

Nさんが気になったのは、温度とは別の面での「落ち着きにくさ」でした。

・光の影響
夜中に家族が廊下の電気をつけると、寝室の床に光が入り、目が覚めてしまうことがあった。

・音の影響
ドア下に開口があるため、話し声やキッチンの作業音、トイレを流す音などが、ドアが密閉されている場合より伝わりやすく感じた。

「温度面では快適になった一方、音や光の面では想定と違った」というのがNさんの実感です。全館空調を採用する場合、こうした“感じ方”の差が出ることがあります。

快適さを保ちつつ、静けさを確保する工夫

全館空調のメリットを活かしながら、寝室の落ち着きを確保するには、設計段階で次のような選択肢を検討します(採用可否は方式や間取り、機器構成で変わります)。

・通気部を設けた建具の工夫
ドア自体に遮音・遮光に配慮した通気口(ガラリ=通気用のスリット)を設け、光や音が伝わりにくい仕様の建具を検討します(製品の構造により効果は異なります)。

・独立した戻り経路の確保
ドア下の隙間に頼らず、天井裏などに空気を戻すための経路(リターンダクト=戻り空気用のダクト)を設ける方法です。コストは上がりやすい一方、遮音性は優れています。

・光の入り方を抑える工夫
通気を確保しながら光の直進を遮る部材を検討したり、ドアや照明の位置関係を調整して、光源が寝室に入り込みにくい配置を考えたりします。

空調の効率と「静けさ」の両立には工夫が必要

Nさんのケースからいえるのは、全館空調では「採用する方式によっては、ドアを閉めても個室の密閉性が下がることがある」という点です。家中どこでも温度を整えやすい反面、空気の通り道をどこで確保するかによって、音や光の伝わり方が変わります。

「静かに、暗くして眠りたい」という当たり前の希望を叶えるためには、空調方式と合わせて、建具の仕様や戻り空気の経路、照明計画まで含めて確認しておくことが大切です。

全館空調の採用を検討する際は、アンダーカットの有無と、その影響についても事前に説明を受けておくと安心です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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