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坪単価50万円で新築を建てるも「せっかくなら…」4人家族・30代夫妻を襲った“予想外の大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2026.2.23
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「坪単価50万円で、理想の注文住宅が建つと思っていたんです……」

力なく笑うのは、新築戸建てを建てたばかりのSさん(30代男性・夫婦+子ども2人)。彼らがハマったのは、知らぬ間に陥りやすい「標準仕様」という名の底なし沼でした。

当初、営業マンから提示された見積もりは、予算内に収まる2,500万円。

しかし、いざ完成してみれば、総額は3,000万円を突破。その差額の500万円は、本来なら子どもの教育資金として貯めていた大切な貯金から捻出せざるを得ませんでした。

標準仕様の「古臭さ」

契約を済ませ、意気揚々と打ち合せに向かったSさん夫婦を待っていたのは、予想だにしない現実でした。

「これが標準です」と紹介されたキッチンは、Sさん夫婦の目には「ひと昔前の賃貸アパートを彷彿とさせるデザイン」に映りました。壁紙やフローリングも、お世辞にも「注文住宅のこだわり」を満たせる代物ではないと感じたのです。

「せっかく建てるなら、こんな安っぽいキッチンは嫌だ」「一生に一度の買い物なのに、後悔したくない」

そんな心理から、夫婦は次々とアップグレードを選択していきます。

「差額はわずか10万円ですよ」という魅力的なオプションの数々に、金銭感覚は麻痺。「サガク(差額)」という魔法の言葉が、5万円、10万円と、雪だるま式に予算を積み上げていったのです。

「標準仕様」の曖昧な正体

住宅業界における「標準仕様」ほど曖昧な言葉はありません。

  • ローコストメーカーの場合:「標準仕様」のグレードに抑えることで、入り口の坪単価を安く見せ、利益は「オプション(差額)」で回収するビジネスモデルが多い。
  • 大手メーカーの場合:そもそも「標準仕様」の質が高く設定されているが、それゆえに最初から坪単価が高い。

Sさんの失敗は、入り口の安さだけを見て、「自分が求める最低ラインの生活」がその標準に含まれているかを確認しなかったことにあります。

多くの人が陥りやすい「せっかくなら病」

さらに追い打ちをかけるのが、打ち合わせが中盤に差し掛かった頃に出てくる「せっかくなら病」です。

数千万円のローンを組む状況下では、数万円のオプションが「誤差」に見えてしまいます。予算オーバーの罠は、まさにそこに潜んでいます。

「この照明、+3万円で一気におしゃれになりますよ」「せっかくのマイホーム、断熱材をグレードアップしませんか?」

断片的に見れば小さな金額でも、合計すれば数百万円。これこそが、注文住宅の予算が知らず知らずのうちに膨れ上がる大きな要因なのです。

家づくりは「差額」まで含めた戦いである

Sさん夫婦は、最終的に理想通りの家を手に入れました。しかし、入居後の生活は、削られた教育資金を取り戻すための節約の日々です。

後悔しないための防衛策は「契約前に、標準仕様をすべて確認すること」です。

家の価格は「坪単価」で決まるのではありません。こだわりを実現するために払う「差額」まで含めて、初めて本当の価格になります。

「安さ」に飛びつく前に、その標準の向こう側に何があるのか。それを見極めることが、教育資金を守りながら夢を叶える道なのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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