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築40年超の中古戸建てで「なんか、前より傾いて…」入居後、違和感を放置した30代ご夫妻の末路【不動産のプロは見た】

  • 2026.2.23
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

中古住宅を内見したとき、こんな経験はないでしょうか。

  • 床に立つと少しだけ体が傾く気がする
  • 気分が悪くなる
  • ドアが勝手にゆっくり閉まる

はっきり「傾いている」と言えるほどではない。けれど、どこか気になる。

多くの方は、自分にこう言い聞かせます。

「気のせいだろう」
「築年数が古いなら、このくらい普通かもしれない」

しかし、その小さな違和感が取り返しのつかない判断につながり、あとで大きく後悔することになります。

今日ご紹介するのは、建物の小さな違和感を見過ごした結果、是正工事に300万円超、さらに売却時に数百万円の査定減という現実に直面したご夫婦の話です。

「築年数的によくあるレベル」と言われた内見の日

3年前のことです。30代後半のAさんご夫妻は、郊外にある築40年超の中古戸建てを検討していました。物件の特徴は以下のとおりです。

  • 相場より少し安い価格
  • 駅までは徒歩圏内
  • 外壁や内装はリフォーム済みで見た目はきれい

条件だけを見ると、悪くないどころか「お得」にも見えました。

ところが内見の途中、奥さまが小さな声で言いました。

「なんか…ちょっと床、傾いてません?」

立っていると、体がわずかに流れる感じがする。けれど、ビー玉が転がるほどではない。目で見てはっきり分かるレベルでもない。

担当の営業マンは、すぐにこう続けました。

「築40年ですから、このくらいはよくありますよ。生活に困るほどではありません」

売主は個人で、契約不適合責任(引き渡し後に不具合が見つかっても、原則として売主は責任を負わない条件)は免責と書かれていました。ホームインスペクション(建物の専門家による調査)という選択肢もありましたが、費用はおよそ10万円。

Aさんは少し考えましたが、

「そこまでしなくても大丈夫だろう」

そう判断しました。

そして売買契約を締結。あのとき床の違和感をきちんと調べていれば、数百万円の出費は避けられたかもしれません。

引越し後に始まった“異変”

入居してから数ヶ月が経ちました。最初は「気のせいかも」と思える程度だった違和感が、少しずつ形になっていきます。

  • 家具の脚が片側だけ浮き、ガタつくようになった
  • 食器棚の扉が、ゆっくり自然に閉まっていく
  • 廊下のドアが、止めても少しずつ開いてしまう

「古い家だから、このくらいは仕方ないですよね」

Aさんはそう言って、自分を納得させていました。ところが、梅雨の長雨が続いたあと、体の感覚が明らかに変わります。床に立つと、以前よりも片側へ体が流れるのです。

奥さまが不安そうに言いました。

「なんか…前より傾いていませんか?」

さすがにおかしいと感じたAさんは、専門業者に調査を依頼。診断結果は、床下で床を支えている部分が劣化し、沈み込みが進んでいる状態でした。築年数が経った木造住宅では、決して珍しくない不具合です。

業者の説明は淡々としていました。

「このままでは、傾きは徐々に進みます」

対処方法はジャッキアップ工事(建物の基礎を持ち上げ、水平に戻す工事)で、提示された見積もりは約320万円。しかし、直すお金がありません。

ここから、Aさんご夫妻の現実は一気に重くなっていきました。

「直す金もない、売ることもできない」という袋小路

320万円の工事費を用意できず、Aさんは売却を考えました。しかし、査定の現実はさらに厳しいものでした。

「傾きがある物件は、どうしても評価が下がります」

提示された金額は、購入時より約500万円低い水準。しかも、このままの状態で売り出すなら、さらに下がる可能性があると言われました。

直す資金はない。売れば数百万円の持ち出し。

Aさんは小さくつぶやきました。

「最初から、気づいていたのに…」

あの内見の日に覚えた違和感。見て見ぬふりをしたのは、ほかでもない自分だったのです。

傾きがある物件は、そのまま買わない

傾きがある物件を詳しく調べないまま契約するのは危険です。判断の前に、少なくともここまでは詰めるべきです。

  • 売主側でジャッキアップ工事を行ってから引き渡してもらう
  • 工事費相当額を売買価格から差し引く
  • 想定外に備え、資金に余裕を持つ

きれいにリフォームされた中古住宅は、どうしても良く見えます。しかし、家の価値を決めるのは見た目ではありません。本当に重要なのは、基礎と地盤です。

とくに、次の条件がそろっている場合は注意が必要です。

  • 契約不適合責任が免責
  • 築40年以上経過している
  • 地盤調査の記録がない

この組み合わせは、不具合が出たときに買主が修繕費を負担する可能性が高い状態を意味します。内見で違和感を覚えたときに「まあ大丈夫だろう」と自分を納得させないことです。

原因を調べ、修繕費を見積もり、金額で判断する。それが、数百万円単位の損失を防ぐための、いちばん現実的な方法です。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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