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「管理費8,000円」に飛びついた40代男性→数年後、築35年マンションで突きつけられた“非情な通告”

  • 2026.2.18
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

日々、住み替えや売却の相談を受けるなかで強く感じるのは、マンションは「立地」や「間取り」だけで価値が決まるわけではないということです。将来を左右するのは、むしろ管理の状態です。

「管理費が安いマンションはお得ですよ」

そう聞けば、多くの方が安心します。毎月の支出はできるだけ抑えたい。それは当然の感覚です。ですが、管理費の安さがあとになって大きなツケとなり、住民の生活や資産価値を直撃した現場を私は何度も見てきました。

今日は、人手不足を理由に管理会社が撤退し、築35年のマンションが自主管理に追い込まれた実例をご紹介します。

管理会社からの「管理契約終了」通知

舞台は、地方にある築35年の分譲マンション。総戸数は48戸で、理事長はAさん(70代)が務めていました。10年前にこのマンションを購入したBさん(40代)は「管理費が安いのが決め手でした」と振り返ります。

管理費は月8,000円。近隣より2,000〜3,000円ほど安く、住民の間では「管理費が安い優良物件」と評価されていました。そんなある日、管理会社から通知が届きます。

「人手不足と人件費の上昇により、現行の委託費では業務を継続できません」

契約終了までは、残り6ヶ月しかありません。臨時総会はすぐに開かれましたが、なかなか結論は出ない状況です。

管理費の値上げに反対する声が多く、高齢の住民からは負担増への不安が強く示されました。新たな管理会社を探しましたが、状況は厳しいものでした。

  • 現在の管理委託費の水準では引き受けられない
  • 人員を確保できない

管理委託費とは、管理組合が管理会社へ清掃、点検、事務処理などの業務を委託する対価として、毎月管理費会計から支払う費用のこと。提示された条件は、管理費をほぼ倍額の月1万5,000円前後に引き上げること。もちろん、合意には至りませんでした。

結局、解約期限の日を迎え、管理会社は契約どおり業務を終了しました。

やむなく始まった「自主管理」の地獄

管理会社がいなくなり、マンションは自主管理へ移行しました。つまり、今まで外部に任せていた業務を、住民自身が担うことになったのです。

具体的には、次のような仕事です。

  • 清掃業者の選定と契約
  • 消防設備やエレベーターの点検手配
  • 会計処理や通帳管理
  • 管理費等の滞納者への督促
  • 住民からの苦情対応

理事は70代が中心。多くは会社を引退しており、契約書の確認や業者との価格交渉に慣れている人はいませんでした。相見積もり(複数の業者から見積もりを取り、価格を比較検討すること)を取るにも、何を比較すればよいのか分からない状態です。

次第に、マンション内の雰囲気が変わり始めました。

  • ゴミ置き場のルール違反が増える
  • 夜間の騒音トラブルが続く
  • 駐輪場の無断使用でもめる

本来は管理会社が間に入る場面ですが、矛先はすべて理事に向かいました。

「理事は何をしているんだ」

住民同士の関係はぎくしゃくし始めます。総会の出席者は減り、必要な決議ができない。決めなければならないことは山ほどあるのに、前へ進めない。

管理会社がいた頃の「当たり前」は、確実に崩れていきました。

小さな先送りが、査定額を削っていく

問題はこれだけではありません。

「これ以上お金は出せない」という空気が強く、必要な修繕が先送りされました。その結果、工事は大きくなり、費用も跳ね上がります。

  • 給水ポンプの交換費用が、当初見積より約120万円増加
  • 外壁の劣化が進み、追加工事で約300万円上乗せ

早めに手を打てば抑えられたはずの出費が、雪だるま式に増えていきました。

Bさんは状況に不安を感じ、マンションを売ろうと売却査定を依頼。しかし、結果は厳しいものでした。

管理会社が入っていない自主管理であることや、共用部の管理状態が悪化していることを理由に、近隣の同じ条件のマンションより約200万円低い価格を提示されたのです。

それまで当たり前だと思っていた管理会社への委託が、実は資産価値を支えていた土台だったのです。

管理費の安さをどう見るか

管理費が安いこと自体は、悪いことではありません。問題なのは「この管理費でマンションを維持していけるのか」という点です。

人件費や物価が上がっている中でずっと安いままなら、どこかにしわ寄せが出ている可能性があります。マンション購入を考えるなら、次の点は必ず確認しておきたいところです。

  • 管理会社に支払っている費用の内訳は妥当か
  • 周辺の同規模マンションと比べて管理費が極端に安くないか
  • 大規模修繕の計画はあるか

周辺より管理費が安いマンションを検討する場合は「安い理由」を管理組合や管理会社に必ず確認してください。人件費も物価も上がっている時代に、何年も据え置きのままで本当に続くのか。そこを冷静に考える必要があります。

管理費の安さは魅力です。

ですが、理由を知らずに選べば、その差額は将来の自分が払うことになります。管理費の安さをアピールしているマンションほど、いったん立ち止まって考えてみてください。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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