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「よりによって今…」満員列車のドア前で起きた“不運のトラブル”…元駅員が絶望した“乗車整理”の裏側

  • 2026.2.15
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に経験した「新生活のトラブル」をご紹介します。通勤や通学で新しく列車を使うお客さまのご協力がなければ、列車は定時運行できません。

乗車整理とは?

新年度特有の駅員の仕事に「乗車整理」というものがあります。

新年度は通勤や通学で初めて鉄道を利用するお客さまにとって混雑した列車で詰め合うことには抵抗があるのか、なかなか列車の奥まで進んでいただけません。そこで駅員がホームに立って「奥に進んでください」などと案内する必要があります。

インターネットのおもしろ画像には駅員が乗客を押し込みすぎて列車が傾いているものがありますが、実際には私はお客さまを手で押し込んだ経験はありません。あくまで口頭で列車の奥まで詰めるよう案内するにとどまっていました。

私が勤務していたある駅では周辺の無人駅などにも人員を配置し、新年度のお客さまをホームで案内していました。今回ご紹介するのは、ある年の乗車整理でのエピソードです。

ドア前の混雑

その日、私は朝から先輩と2人で隣の無人駅に行き、乗車整理を行っていました。ホームで列車を待っている間にも、拡声器でお客さまへの案内をします。

「足元の表示に沿ってお並びください!次の列車は〇〇駅方面行きです!黄色い点字ブロックの外には出ないでください!」

ところがホームが狭いので、どうしてもお客さまは溢れてしまいます。

「並べと言ったって、そのスペースがないじゃないか」

と言いたげな困惑した視線が私に刺さりました。

やがて列車がやってきます。今度は

「降りるお客さまがお済みになってからご乗車ください!」

と案内しますが、この駅で朝から下車する方はほとんどいません。ドアが開くなり、ホームのお客さまはわずかなスペースを見つけて乗車していきます。

板挟み

ここからが乗車整理の本番のようなものです。ホームにいるお客さまが全員乗車できるよう

「ご乗車されたら、もう1歩奥にお進みください!」

と列車内に呼びかけました。できるだけ早く、すべてのお客さまを乗車させられなければ、出発が遅れてしまいます。

遠くまで声を届けるために拡声器を使って叫ばなければいけませんが、近くにいるお客さまの迷惑そうな視線が刺さります。一方、これから乗車しようとするお客さまからは
「乗れないじゃない、もっと強く言ってよ」

とせっつかれました。

さらなる不運

それでも乗車整理は続きます。壁に向かってしゃべっているような気持ちのなか、なぜかこのタイミングで拡声器の電池が切れてしまいました。声が届かなくなると、いよいよ誰も私の言葉を聞いてくれません。もはや聞こえているかも不明です。

駅から持ってきていたもうひとつの拡声器は、なおも好調に先輩の声をこちらまで届けています。

「どうしてよりによっていま、しかも自分のほうの拡声器だけが…」

心の中で嘆きながらも、肉声のみの案内に切り替えました。

最終的に列車は1分ほど予定より遅れて出発し、ホームには乗り切れなかったお客さまが残りました。次の列車が来るまで、気まずい時間が流れます。重大な事故こそ起こらなかったものの、自己評価では大失敗の乗車整理でした。

列車に乗ったら1歩前へ

私も旅行で知らない土地の満員列車に乗るときは「自分が下りたい駅で下りられなくなるのではないか」と不安になることがあります。見知らぬ人に「下ります」と口にするのも迷惑がられそうで嫌だ、という考えの方もいるかもしれません。

もちろん、乗り換えのご都合や体調など、様々なご事情でドア付近にいらっしゃる方もおられると存じます。その上で、もし少しでも奥に詰める余裕がございましたら、あと一歩だけご協力いただけると、ホームでお待ちの方が一人でも多く乗車でき、列車全体の遅延を防ぐことにつながります。

鉄道の強みのひとつは、一度に多くのお客さまを輸送できる点です。鉄道の利点を最大限に活かすため、また列車の遅れをできるだけ減らすため、乗車後は1歩奥に進むようご協力をお願いいたします。

あなたが心配するほど、「下ります」と声をかけられて迷惑がる人はそう多くないはずです。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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