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良かれと思ってやったのに…防犯ルールが車を壊す?元宅配員が絶句した、冬の朝に起きた“想定外の誤算”

  • 2026.2.15
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さんこんにちは、元宅配員のmiakoです。

冬になると、他の季節にはない想定外の出来事が起きることがあります。
前日にはできていたことが、翌朝には難しくなる。一見わかりにくい小さな変化が、現場に影響を及ぼすことがありました。

私の担当していた町は、冬でも雪が積もることはほとんどなく、日中は綿入りのジャケットを脱いでしまうほど穏やかな気候でした。同僚の中には一年中半袖で過ごす人がいるほどです。

しかし、その穏やかさとは対照的に、夜から朝にかけては一気に冷え込みます。
前日も晴れていて、天気予報でも翌日は晴れの予報でした。それでも夕方からぐっと冷え込み、翌朝は路面が凍るかもしれないと感じながら帰宅したのを覚えています。

そして翌朝。
車のフロントガラスは凍り、道路はうっすら白く霜が降りていました。水たまりも凍るほどの寒さです。
雪は舞う程度で積もることはありませんが、朝の気温は氷点下前後。日中の温暖な印象とは違い、冬の朝は確実に厳しさを持っていました。

冬の朝に起きたバッテリー上がり

私は当時軽トラックタイプの配送車を使っての配達をしていたのですが、営業所の積み込みエリアではトラックが優先的に停められ、軽トラックや小型の車は隙間のスペースで、自分たちで荷積みをしなければいけませんでした。
そのため、出勤したらまずエンジンをかけるところから始め、冷蔵室の保冷を始めるのですが…エンジンがかからない。

まさかのバッテリー上がりが発生していたのです。

原因は様々あるのですが、その一つに冬の寒さがありました。
軽自動車は通常のトラックに比べてバッテリーが小さく、そして、宅配便の車は配達するために車を離れる度にエンジンを切るルールがあります。
これは、防犯のためでもあり、事故防止のためでもありました。

しかし、この都度エンジンを切るという行為は、配達先から次の配達先までの移動距離が短い宅配の仕事では、バッテリーの寿命を短くする要因でもあり、さらに朝の冷え込みで性能が低下し、バッテリーが上がってしまうことが何度かありました。

そして、私の使用する軽トラックタイプの車は、エンジンルームなどにバッテリーが収まっているタイプではなく、外にむき出しになってついているようなタイプだったので、冷え込みがダイレクトに伝わってしまったのだと思います。

時間のない中でのチームワーク

「すいません、私の車バッテリーが上がっちゃってます!」

私は車の整備管理を担当する同僚に声をかけました。

「また?この前別の人が乗った時も上がったからバッテリー頼んだはずなのに…」

報告を受けて、同僚も驚きを隠せません。
少し前にバッテリーが上がっていたのは私も聞いていたので、そこまで驚きはしませんでした。

しかし問題は時間帯です。
今は一日の中で一番慌ただしい時間帯。
こんな時に面倒ごとを一つ増やしてしまったことに、申し訳なく思いました。
しかし、一人では何もできないのも事実です。

「他の軽で大丈夫な人、ちょっと繋いであげて!隣のトラック、荷積みができていたらちょっと移動して軽一台入れる場所あけて!」

すぐさま指示が飛びました。

朝は誰もが出発準備で余裕はありません。
それでも、同僚たちはチームワークを見せてくれました。

「こっちの軽、動かすね!」
「積み終わってるからトラック動かすよ。そのまま軽停めちゃっていいよ」
「ケーブル持って来たよ!」

急いで隣に停めてあったトラックを移動させ、エンジンのかかった別の軽自動車でバッテリーを繋いだことで、私の車はやっとエンジンをかけることができました。

実はこの時、すぐ隣に2トンのトラックが停まっていたのですが、そのトラックはバッテリーの電圧が異なるタイプだったため、私の軽自動車とトラックではバッテリーの電圧が違うため、バッテリー同士をつなげてエンジンをかけることができません。そのために、いったん移動させるという手間が発生してしまいました。

そして、本来ならスムーズに積み込みをして出発するはずが、車一台のバッテリー上がりに対応するために、わずかでも時間を削らなければいけない事態が営業所内で発生してしまったのです。

出発前の15分が生んだ影響

通常、宅配員たちの出勤時間は朝8時です。

出勤後、専用端末の立ち上げや設定、車両の点検、朝礼、点呼といった流れを行い、荷物を確認して出発します。
そして、午前指定の荷物や、工場や企業へ届ける荷物を中心に配達に向かいます。

午前指定の荷物のスタート時間は、実は出勤時間とともに始まっていました。
ゆっくりしている時間はありません。

本来であれば、8時45分までには出発したいところでした。
しかしこの日は、バッテリー上がりへの対応があったため、出発できたのは9時をすぎていました。
すでに15分の遅れが生じています。

社内にやや焦りが広がります。
手を貸してくれた同僚たちも、それぞれ自分の荷物を抱えています。
トラックを移動させ、軽自動車同士をつなぎ、エンジンがかかった瞬間にはほっとしましたが、その分の時間は確実に過ぎていました。

私自身の担当エリアは、この日は物量が少なめでした。
そのため結果的には、お客様への影響は出ずに済みました。

しかし、手を貸してくれた同僚たちがどうだったのかまでは分かりません。
後で聞いた時、「大丈夫だった」と言ってくれましたが、本当にそうであったかまではチェックできません。

朝の忙しい時間帯に手を止めて協力してくれていた以上、その後を必死に調整していた可能性もあります。
不可抗力な事態でしたが、申し訳なく思いました。

もしこの状態で配達中にエンジンが再び停止し、車両が動かなくなっていたらどうなっていたか。想像するだけで、とても恐ろしくなりました。
そしてその事態を、私自身、かつて経験したことがあったのです。

エリアの離れた同僚に応援を頼むことになれば、その分誰かの配達が後ろへずれていきます。
そして、時間に間に合わない荷物が出て、お客様にもご迷惑をかけてしまう可能性もあります。

わずか15分の遅れでも、現場では連鎖していくことがあります。
自分では対処できないことだと、身に染みていました。

それが特に冬の配送現場で、起こりやすくなっていました。

緊急処置という判断

「今日はこの後すぐにエンジンを止めたりするとまたバッテリーが上がってしまう可能性があるので、緊急処置のためにエンジンはしばらくはつけっぱなしで様子を見てください。新しいバッテリーは早めに届くように手配して、届き次第交換します。おそらく、夜には届くはずです」

出かける直前に店長が声をかけてきました。

出発したら一人になります。
その時、車両が止まってしまったら、荷物の配達ができなくなります。
私の所属する営業所には、配達車両の余裕もないので、一台でも車が止まってしまうと、他の宅配員たちに確実にしわ寄せが行ってしまいます。

他にも軽自動車に乗る同僚はいますが、私とはエリアが離れています。
配達すべき荷物が優先ですし、手が空いたとしても担当エリアを外れてまでバッテリーを繋ぎに来てもらわなければなりません。最悪、レッカー車を呼ぶ事態になると、余計に時間も人手もかかることに繋がってしまうのです。

そうなれば、手を貸してくれた同僚たちにもさらに迷惑をかけてしまいますし、待っているお客様にも影響が出ます。

時間は刻一刻と過ぎています。出発が遅れた分を取り戻したい気持ちはありますが、焦って事故や故障を起こしてしまえば元も子もありません。

出発前に深呼吸して、今日も一日安全運転。事故を起こさず無事に帰る。その目標を頭に浮かべながら、凍結した路面と、いつ再びエンジンが止まるか分からない不安を抱えてハンドルを握りました。

凍結路面と時間との戦い

「今日は朝から気温が低いので、路面凍結やブラックアイスバーンにも気を付けてください。また、凍結で通行止めになっている道や、山沿いの道ではスリップも発生する可能性があるので、余裕をもって安全運転をお願いします」

朝礼の時に伝えられた言葉を思い出しながら、慎重にアクセルを踏みました。

凍結した路面では急ブレーキも急ハンドルもできません
普段なら数分で抜けられる道も、速度を落とせばそれだけ時間がかかります。
通行止めがあれば、迂回しなければなりません。

午前指定の時間は、すでに動き出しています。
急ぎたい気持ちはあっても、急ぐことはできません。

安全を優先しながら、指定時間に間に合わせる。
その判断は一つひとつ自分に委ねられています。

幸い、この日は普段より時間指定の荷物が少なめでした。
だからこそ調整ができましたが、これが物量の多い日であれば、余裕は一気になくなっていたはずです。

わずかな遅れや判断の迷いが、その後の配達すべてに影響することがあります。
冬の配送現場では、1分の重みを感じながらハンドルを握っているのです。

1分の遅れが1日を左右する現場

安全に事故なく届ける。
当たり前のようでいて、これが一番大切なことです。

事故や故障でトラブルを起こしてしまえば、その影響は自分だけでなく、同僚やお客様へと広がっていきます。

冬の朝に起きた15分の遅れは、幸い大きな影響にはなりませんでした。
しかし、それは条件が重なった結果であり、いつも同じとは限りません。

路面凍結、車両トラブル、物量の波。
そのどれか一つでも歯車がずれれば、時間は簡単に崩れていったことでしょう。

確かに時間を守ることは大切ですが、それだけが宅配の仕事ではありません。
お客様にも安心して受け取っていただきたい。
そのためにはまず、自分自身が安全運転を全うするという使命が宅配員には課せられているのです。

お客様の笑顔のため、自分の帰りを待つ仲間や家族のため、宅配員たちは今日も1分の重みを感じながら、安全運転で冬の現場に向き合っています。



ライター:miako
宅配ドライバーとして10年以上勤務した経験を生かし、現場で出会った人々の温かさや、働く中で積み重ねてきた“宅配のリアル”を、経験者ならではの視点で綴っています。
荷物と一緒に交わされてきた小さなエピソードを、今は文章としてお届けしています。


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