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乗客「この駅員のせいで」新入社員がネットに晒され…時には「うるさい!」と罵倒、元駅員の“壮絶現場”

  • 2026.2.12
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に経験した「新生活の準備に関するトラブル」をご紹介します。特に新規で通勤定期券を購入する予定のお客さまにご協力いただきたいと感じていたエピソードです。

新年度の大混雑

私が最後に勤めていたターミナル駅では毎日行列ができていましたが、その長さは日や時間帯によって違いがありました。

特に長いと感じていたのは3月末から4月初めにかけてです。やはりその原因は、定期券の購入需要が高いためでしょう。

通学定期券を新規購入するときは学生証を確認する必要があるため、窓口に並ばざるを得ません。

一方で通勤定期券なら社員証などの確認は不要なので券売機でも購入できます。窓口の行列を短くするための手段のひとつは、通勤定期券をお求めのお客さまを券売機に案内することです。

ところが機械操作が不安なためか、あるいは券売機にも列ができているためか、はたまた駅員から買うことにこそ意味があると考えているのか、なかなか窓口に並ぶ通勤定期券購入のお客さまが減りません。

そこで窓口の前に係員が立ち、券売機への誘導を行うようになりました。

新入社員よ盾になれ

窓口の機械は操作方法もルールも非常に複雑です。そのため駅員として採用されたばかりの新入社員が窓口前の誘導係にあたりました。窓口の入口に立ち、お客さまにご用件を伺って「それなら券売機で買えるので、券売機をご利用ください」と案内するのが仕事です。

ターミナル駅でなければ新入社員にも窓口でゆっくり教えられるのですが、この駅の窓口にそのような余裕はありません。窓口に入る前に券売機で鍛えられるのです。

私は雇用形態の変更によって書類上は新入社員としてターミナル駅に配属されましたが、すでに3駅を経験していたので、人手不足のとき以外は窓口に入っていました。

「窓口すら挟まずにお客さまの目の前に立つのは緊張するだろうなあ」

と思いながら、入口に立つ新入社員を眺めていました。

窓口の門番に大バッシング

まれに私も上司の指示で入口に立つことがありましたが、窓口にいる方が精神的にマシです。ただでさえ忙しいスケジュールの中、やっとの思いで駅に来た方の前に立ちはだかり「券売機でご自分で操作してください」とは言いにくいものです。

中には私たちの「ご用件をお伺いします」の声を片手ではねのけて窓口へ突き進む方もいましたし、「うるさい!」と一喝する方もいました。窓口に入っているときに入口から怒鳴り声が聞こえてくることなど、日常茶飯事です。

ついにはSNSで新入社員の後ろ姿の写真をアップロードされ

「この駅員のせいで窓口で定期券を買えなかった」

と投稿される事案まで発生しました。投稿にあった本人が上司に話したか、上司がこの件を把握していたかは私は知りませんが、駅や会社として動きはしなかったようです。

券売機で定期券を買うメリット

スーパーやコンビニのセルフレジについて

「店員にやってもらわないと損だ」

という意見をネットで目にしたことがあります。では同じように、定期券も駅員から買わなければ損なのでしょうか?

実は、むしろ券売機で買ったほうが楽とも考えられます。というのも、券売機で通勤定期券を新規購入するときは、窓口と違って定期券購入申込書の記入が不要なのです。これにより住所の記入を省略できますし、お客さまが記入した情報を駅員が機械に入力する時間を削減できます。

近年では、かつて新年度ごとに確認が必要だった通学定期券も卒業まで一貫して券売機で継続購入できる会社が増加しているようです。どの会社も3月から4月にかけての混雑が課題だったのかもしれません。これらは会社によって異なる場合もあるので、詳しくは実際に利用する会社のルールをご確認ください。

ただ鉄道を利用したいだけなのに…

もちろん、お客さまもいたずらに駅員を困らせようと思って無視したり怒鳴ったりしているわけではないはずです。その根底にあるのは
「生活に不可欠なインフラである鉄道をただ利用したいだけなのに、なぜこんなことをしなくてはいけないんだ」

という不快感ではないでしょうか。定期券の購入に限らずウェブ会員制度や時刻表の電子化など、さまざまな話題で鉄道事業のアナログ回帰を願う声を耳にします。

鉄道で利益を生むためには、できるだけお客さまを一度にたくさん乗せる必要があります。当然、曜日や時期によってお客さまの多い時間帯は異なるはずので、鉄道会社はいつ、どんなお客さまが、何の目的で、どこからどこまで利用するのかを把握し、ニーズに沿ったダイヤを作らなくてはいけません。

そのために各社はウェブ会員制度を作り、複雑化したダイヤをウェブ上で公開するようになったのです。かつては駅の窓口で「東京まで、1枚ね」「はい」で済んでいたのが、スマホで「東京まで」「その前に会員IDとパスワードを」と変わったのには、そのような事情があります。



ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。