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何回もバスに乗ってくる乗客。市内循環バスで遭遇した“実はルール違反の目的”に、運転士が下した決断は

  • 2026.3.3
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

今回は、15年ほど前に送迎バス会社で市内循環バスの運行をしていたときのお話です。乗客の意外な利用方法に驚きつつも、苦渋の決断を求められたときの出来事を紹介します。

委託で運行する送迎バスの運転士にとって、運行する自治体や施設などで定められたルールは、遵守すべきです。しかし、ときにはルールを知らずにバスを利用する乗客もいます。

そんなとき、運転士は乗客に利用方法を説明するか、見て見ぬふりをするか、苦渋の決断に迫られます。私自身も市内循環バスを意外な方法で利用する乗客に遭遇し、決断に困ったことがあります。

初めて見る乗客に少しの疑問

市内循環バスは、高齢者や障がいを持つ人が市内を移動しやすいよう、無料で利用できる自治体が運行しています。私が勤務していた送迎バスの会社では、自治体と契約を結び、決められたルールに基づいて運行しなければなりません。

そんな市内循環バスに乗務していたとき、始発のバス停から乗車したはずの女性が、いつまでも降車しないことに気がつきました。

女性は、マイクロバスの中央あたりの座席に座っていました。私は疑問を感じつつも、他の乗客がいるため声をかけるのをためらっていました。

循環バスを利用する乗客の顔ぶれは、見知った人が多く、初めて乗車する人は特に注意するようにしていました。初めて利用する方は、降車場所に悩んだり、行き先が異なるバスに乗ってしまったりなど、困惑する人が多いからです。

そのため、余計にその女性が気になったことを覚えています。

降りたと思ったら…乗車?

市内循環バスは、1便が40~60分ほどの運行で、1便ごとに行き先が異なります。マイクロバス3台でさまざまな方向へ運行することで、市内全域をカバーする仕組みです。

残りのバス停が4つほどとなったとき、他の乗客は降車したため、私は1人になった女性に思い切って声をかけました。

「どこのバス停で降りられますか?」

循環バスでよく使われる聞き方をすると、「終点です」と返事がありました。

始発と終点はすべて役所前となっており、同じバス停に戻るということは、忘れ物でもあったのだろうと思いました。「わかりました」と快く伝え、各バス停を注意深く確認し、乗客の見落としがないよう終点へ向かいました。

出発地点と同じ場所である終点に到着すると、女性は「ありがとう」と言いながら降車しました。

意外なバスの利用方法に苦渋の決断

次の運行ルートの準備に入っていると、また同じ女性が乗車してきました。しかし、次の便は運行ルートが先ほどとは異なります。

そのため、私は思わず「すみません。先ほど乗車されていた方ですよね。このバスは、次のルートが全く違うところへ行くので、次に来るバスに乗られた方が良いと思いますよ。」と伝えました。

しかし、女性は「大丈夫です。乗っていいですか?」と聞いてきました。乗車間違いでさえなければ問題ないため、「はい、どうぞ」と快く伝えました。

しかし、やはり女性は降車する気配がありませんでした。やはり、また終点まで乗車してバスを降りる女性に、「バスにずっと乗っていると疲れないですか?」と聞いてみました。

「大丈夫ですよ。引っ越してきたので、バスに乗って市内の雰囲気を見ているんです。」

そんな回答に私は驚きました。当時私が担当していた自治体の市内循環バスでは、高齢者の方などが市内を移動しやすいよう無料で運行されており、『観光目的での利用はご遠慮いただく』というルールが定められていました。

しかし、移動という目的である以上、女性の乗車を拒めないのではないかとも感じました。そこで、私は悩んだ末、空席の多い時間帯や便を案内し、本来は自治体が禁止しているバスの乗車方法であることを伝えました。

送迎バスの運転士は乗客の利用と運行ルールで板挟みとなることも

送迎バスを運行している自治体が決める運行ルールは、運転士にとって遵守が原則です。しかし、四角四面で捉えて対応するか、許容範囲で現場対応するかを、現場では求められることがあります。

このとき、女性の利用方法が悪いとは言いません。しかし、それが理由で本当に移動を必要とする人が乗車できなければ、バスを運行している意味がなくなってしまいます。

空席の多い時間なら良しと案内したのが正しかったのかどうかは、今でもわかりません。しかし、「できるだけ人には優しくありたい」と考えながら運行していましたが、あの市内循環バスは今も走り続けていることと思います。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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