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生徒への通知表に“大量の赤ペン”を入れる校長。元教師が語る“意外な理由”に「あれだけ時間をかけたのに…」

  • 2026.2.11
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出典:photoAC ※画像はイメージです

こんにちは。元小学校教員ライターの、みずいろ文具です。
年度末が近づくと、学校は一気にあわただしさを増します。

行事の準備に、学年まとめのテスト、卒業・進級のあれこれ…。

その中で、担任の忙しさを一気に“マックス”に押し上げる仕事があります。
それが「通知表所見」です。

通知表の「所見」にかかる、膨大な時間

通知表の所見とは、子どもの成長や頑張りを文章で示す部分のこと。
「〇がいくつだったか」だけでは伝わらない姿を、限られた文字数の中に凝縮して書いていく、大事な欄です。

学年、そして学校全体で評価の基準を共有し、「どの程度できていれば“よくできた”になるのか」「“もう少し”になる目安」などを確認します。

そのうえで成績を確定させ、30人以上の子どもたちの所見を書き上げていきます。

私が働いていた自治体では、低学年であれば「一般所見」と「道徳所見」。
中・高学年になると、そこに「総合学習所見」や「外国語所見」も加わります。

何気ない文章に見えても、その裏側では担任が一年分の授業や行事、日々の姿を思い出しながら、何度も書いては消し…を繰り返しているのです。

もちろん、勤務時間内だけで終わる仕事ではありません。

先生によってやり方は異なりますが、私は子どもが登校しない冬休み中から少しずつ計画的に進めていました。

それでも締め切りが近づくと夜遅くまで作業せざるを得ないほど膨大な作業だったのです。

たった一文で、受け取り方が変わってしまう緊張感

書き終えた所見は、そのまま印刷されるわけではなく、必ず管理職のチェックを受けます。

「誤字脱字はないか」
「具体的なエピソードがあるか」

そんな視点で、教務や教頭、ラストは校長が一文ずつ目を通していきます。

中には、「この言い回しだと保護者の方が不安に感じてしまうかもしれない」と、赤ペンが大量に入ることもあります。

なぜここまで慎重になるかというと、たった一文で、子どもや親御さんの受け取り方が大きく変わってしまうことがあるからです。

例えば、
「落ち着きがない」と書くのか、
「活動的で友達をぐいぐい引っぱるタイプ」と書くのか。

同じ子どもについての説明でも、受け取る印象はまったく違います。

その一文を読んで、ホッと胸をなでおろす保護者の方もいれば、「我が子は大丈夫だろうか」と不安になる方もいる。

だからこそ、一つひとつの言葉を慎重に選びながら、「この子の一年をいちばんよく表す言葉は何だろう」と、ぎりぎりまで悩み続けるのです。

大量の「赤字」の裏側にあるもの

ようやく書き上げた所見が手元に戻ってきたとき、真っ赤になっていると、正直がっくりきます。
「あれだけ時間をかけたのに…」と、落ち込んでしまう瞬間です。

でも、その赤字の一つひとつを読み解いていくと、共通しているのは、

  • 子どもや保護者の方が、過度に不安にならないように
  • でも、必要な課題や成長ポイントは、きちんと届くように
    という思いです。

通知表は、子どもを評価するためだけのものではありません。
「この一年、こんなところが伸びてきたね」
「ここを、次の学年で一緒に頑張っていこうね」

そんなメッセージを届けるための、大事な“手紙”のような役割も持っています。
だからこそ、何度直されても、先生たちはまた椅子に座り直し、言葉を磨き続けます。

〇の数だけじゃない、“頑張り”を見つけてあげてほしい

所見の作成は、テストの点数だけでは見えない、その子のきらりと光る瞬間を思い出しながら、言葉にしていく時間でもありました。

しかし最近は、あまりの負担の大きさから、一部の自治体では所見欄そのものを廃止するという検討も始まっているようです。
教員不足が深刻な中では、やむを得ない流れとも言えるでしょう。

もし、所見欄がまだ実施されている自治体にお住まいならば…。

お子さんが通知表を持って帰ってきたら、ぜひ〇の数だけではなく、所見の文章にも目を通してみてください。
そこには、担任が一年間見てきた「その子らしさ」や、「ここを認めてあげてほしい」という願いが、ぎゅっと詰まっています。

そして、お子さんにこんな声かけをしてみてください。

「あなたのいいところ、ちゃんと伝わってるんだね」

「この一年、こんなに頑張ってきたんだね。親としてうれしいよ」

その一言が、子どもにとって次の学年へ向かう大きな力になります。

通知表の所見が、子どもたちの「これから」に続いていく温かいメッセージとして届きますように。今でも、そう願っています。



ライター:みずいろ文具

関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


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