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事故や苦情になれば運転士の責任に…大雪の日、送迎バスの運行を強行しようとする“管理者”との修羅場…現場が下した決断とは

  • 2026.2.10
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

近年は都市部で大雪が見られなくなりましたが、16年ほど前は1シーズンに2~3回の大雪がありました。

今回は、ニュータウンでスイミングスクールの送迎バスを運行していたとき、大雪で運行の決断を迫られたお話をします。現場サイドと看板を背負うスイミングスクールの意向は、時として異なるものです。

しかし、道路の起伏が激しいニュータウンでは、雪道のリスクは非常に大きいものとなります。判断を間違うと、事故のリスクが高まるだけでなく、送迎バスの利用者にも迷惑をかける結果となるため、慎重な判断が求められます。

意見が異なる「所長VS運転士」!

当時、スイミングスクールの運行管理をしていた所長は、年配で路線バスで豊富な経験を持つ方でした。運行に関する責任感は強く、スイミングスクールの運行管理に強い使命感を持っていました。

しかし、その使命感に大きな疑問を抱いたのが大雪の日でした。

毎日、送迎バスを運行している運転士は、ブラックアイスバーンや勾配の状況などをよく把握しています。そのため、スタッドレスを装着していても安全な運行が困難と感じていたのです。

一方、所長には運行管理者として、またスイミングスクールの看板を背負う立場として、「雪の中でも生徒たちを安全に送り届けたい」という強い使命感があったのだと思います。しかし、日々の道路状況を肌で感じている私たち運転士から見ると、その判断はあまりにリスクが高いと感じられました。

送迎バスの運行可否に対する意見が異なったため、ここから「運転士VS所長」に発展していきました。

利用者の利便性か?それとも運行上の安全か?

「雪が降る中、バスが運行しなければ生徒がスイミングに来れなくなる。」

所長の言い分は、私を含む運転士はみな理解していました。しかし、安全上とイコールになるかと言えばそうではありません。

「雪がやんでも凍結の恐れがある。勾配の多い運行ルートで突然運行できなくなったら、逆に連絡が煩雑となり利用者にも迷惑がかかるのではないか。」

リスクを背負って運行することは、もちろん絶対に不可能というわけではありません。しかし、運行を開始したとき、すべては現場に判断が委ねられ、事故や苦情になれば運転士の責任です。

つまり、安易な考えと判断で「雪が降っても運行します」とは言えないわけです。

所長と私たち運転士の意見は、どこまでいっても平行線のままでした。しかし、その直後、スイミングスクールへ相談した所長は、凍結リスクが高い運行ルートのみ運休と決めてしまいました。

行かないとわからない凍結場所をどう把握する⁉

今と比べると、現場の意見が組織の上層部に届きにくい時代背景もあったかもしれません。「運行」という方針が決まれば、現場はそれに従うのが当然という風潮が、まだ強く残っていたように感じます。

しかし、安全な運行は誰よりも運転士が求めているものです。

このとき、「凍結場所をどのように把握するのか?」「誰か確認してきてくれるのか?」と、他の運転士が激しく反発しました。

いつもは大人しい運転士が、強い口調で反発したことに私は驚きました。確かに、凍結場所を除いて運行するというのは困難です。運行を省くバス停を利用する生徒に、どのように周知するのかも大きな問題点となります。

勾配の少ない運行ルートなど、ほぼ存在しないのが現実であり、どのルートも凍結リスクは高いと言えます。凍結を目前にし、運行不能と判断したとき、煩雑な動きと連絡体制が困難であることを運転士は何度も強調しました。

なお、私が危惧していたのは、事故のリスクだけではありません、バス停で待つ生徒に連絡が行き届かず、寒い思いをさせることだけは避けたかったのです。

スイミングと生徒の連絡方法は、近年ほど発達しておらず、主な連絡手段は電話です。そのため、バス停にいる生徒へ連絡する手段はほとんどないからです。

安全を重視した運転士の言葉が功を奏した

大雪が降ったその日、結局スイミングスクールの送迎バスは全面運休となりました。生徒と送迎バス、双方の安全を考慮した結果です。

なお、その日は午後になっても雪は溶けることなく、無理に運行した他のスイミングや塾では、途中で運行を中止していました。利用者の対応に終始追われた話を後に耳にしました。

送迎バスの運転士は、運行の安全に加え、利用者の利便性と安全を第一に考えながら運行しています。今は、連絡手段が豊富な時代となり、ハラスメントの意識も高まりました。

それでも、忘れてはならない高いプロ意識を持つ運転士がこれからも育っていくことを、願ってやみません。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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