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保護者「娘の居場所が分からなくて…」→“中学受験”で追い詰められた児童。担任がみたSOSサインとは?

  • 2026.2.5
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元小学校教員ライターの、みずいろ文具です。

この時期になると、学校は一気に「年度末モード」になります。卒業式の準備に、最後の行事、まとめのテスト…。教室の中は、どこかそわそわとした空気に包まれます。

そんな中で、別の種類の緊張感を抱えているのが「中学受験を控えた子どもたち」です。

私が以前勤めていたのは、首都圏郊外にある、いわゆるごく普通の公立小学校でした。その地域では、中学受験はまだ「特別な選択」という位置づけで、1クラスに受験する子はいても2〜3人ほど。

受験が「当たり前」ではなく、「特別な選択」という位置づけの地域です。

中学受験が“当たり前じゃない”教室の空気

この時期、6年生の子どもたちは、「卒業式、何着る?」「部活何にする?」「制服買った?」と、小学校生活の思い出や、中学校生活への期待で盛り上がっています。

その横で、受験組は放課後も塾へ行き、休日も模試。友達と遊ぶことはほとんどない子もいます。

教室にいても、表紙にカバーをかけた参考書を開いていることも。

受験が近づくにつれ、表情は笑っていてもどこか固く、仲間たちの会話にすっと入りきれない様子が見えることもありました。

親の期待を敏感に感じ取る子どもたち

さらに子どもに大きな影響を与えるのが、家庭の空気です。

「ここまで頑張ってきたんだから」「なんとか合格させてあげたい」。

そんな親の思いは、とても自然なものです。
ただ、空気を読むのが上手な子ほど、それを敏感に受け取ります。

「落ちたらどうしよう」
「期待を裏切ってしまうかも」

不安を口に出せないまま、胸の中でプレッシャーだけが膨らんでいく子も少なくありません。

以前、担任していた児童の一人Wさんが、まさにそんな状態になりました。

授業中は真面目に取り組み、行事や委員会でも精力的に活動。
放課後は塾へ直行し、追い込みをかけていました。

Wさんは、誰が見ても「優秀でよく頑張っている子」でしたが、受験が近づくにつれ、いつもは完食している給食を残す、授業中も上の空など、少しずつ変化が出てきたのです。

担任として心配で、何度か声をかけましたが、「みずいろ先生、私は平気だって!そんな心配しないでよ!」と軽くあしらわれました。

しかしどうにも胸騒ぎがして、ある日の放課後Wさんのご家庭に電話を入れたところ、保護者の方が焦った声で話しだしました。

Wの居場所が分からなくて…。家族総出でいま探しているところなんです…」

とうとう糸が切れてしまったのか、家を飛び出してしまったとのこと。

私も一緒に校区内を探し、すぐに見つかりましたが、保護者の方は「追い込みすぎていたのかもしれません」と涙ながらに話していました。

見直したのは“勉強量”ではなく優先順位

それからWさんの保護者の方は、「勉強時間を増やす」よりも「休む日を決める」ことを大切にするようになりました。

「合格してもしなくても、あなたの価値は変わらないよ」
「しんどいときは休んだり気分転換しよう」

そんな言葉を、意識してかけていったそうです。

受験が当たり前ではない教室では、受験する子はどうしても孤立しやすくなります。

だからこそ大人は、「頑張れ」だけでなく、逃げ道や休憩場所も一緒に用意してあげたいと感じます。

ゴールは「合格」だけじゃない

中学受験のゴールは、合格だけではありません。

「目標に向かって努力できた」と思えること。
「しんどいとき、誰かを頼ってもいい」と知ること。
「結果にかかわらず、大切にされている」と感じられること。

受験をする子もしない子もいる教室で、子どもたちが心身ともに無事で、笑顔で春を迎えられるよう、大人たちの関わりがその支えになればと思っています。

大人たちの関わりが、その支えになればと思っています。



ライター:みずいろ文具

関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


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