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若返り効果にも期待。ダイエットではなく「長寿」を目指すトレーニング

  • 2025.12.23

マチュア世代こそ意識したい、減量ではなく「長寿」を目指すトレーニング

Happy Senior Woman Preparing for Home Workout

数カ月前まで、私はバーベルを一度も持ち上げたことがない人間だった。しかし、世界最大の臨床センター、Buchinger Wilhelmi Clinicへの滞在で、人生が一変した。体育学教授であり、Physical Exercise & Health ConsultingのCEO、フェリペ・イシドロによる講義に出席したその日、すべてが変わったのだ。

「このなかで運動している人は?」とイシドロが切り出した。「運動と言っても、歩く、階段を上る、買い物袋を運ぶといった日常的な身体活動ではありません。計画的にスケジュールされた『エクササイズ』を指します。この質問をしたのは、10人中7人──つまり人口の70%が『運動』していないからです」

もちろん、どんな身体活動だって何もしないよりはマシだ。「それでも、エクササイズと同じ効果は得られません」とイシドロは説明する。「身体活動とエクササイズの両方を組み合せるのが理想です。日常生活でより多く動き、トレーニングのための時間も確保する。車やエレベーター、エスカレーターによってますます動く機会が減る現代社会では、エクササイズ、特に筋力トレーニングをするべきです」

以前の私は、運動の真の重要性について考えたことがなかった。運動はあくまで、体重を減らし、服をきれいに着こなすための手段としか思っていなかった。ところが、体の筋肉とミトコンドリアをできるだけ長く健康に保つことが、痩せるよりもずっと重要だとイシドロに気づかされた。イシドロによると「ミトコンドリアはバイタリティに影響を与えるエネルギーを生み出す、小さな電池のようなもの」。「ミトコンドリアが正常に機能すれば、活力がみなぎります。機能が低下すれば、疲労を感じるうえ、ダイエットをしても脂肪が燃焼されにくくなります。脂肪は皮膚の下だけでなく、臓器や筋肉そのものにも蓄積しますから」

ミトコンドリアを健康に保つのに、魔法の薬など存在しない。その機能改善が唯一証明されているのは運動、特に筋力トレーニングだ。新品時は何時間も持つスマホのバッテリーがやがてダメになっていくのと同じように、ミトコンドリアも摩耗する。年をとると、朝は元気でも午前中に疲れてしまう……なんてこともある。だからこそ、ミトコンドリアを可能な限り健康に保ちたい。

速筋と遅筋

Master Yoga woman doing Plank pose variation Knee to nose, Phalakasana variation Knee to nose.

筋肉には遅筋と速筋がある。遅筋は歩行のような持続的な運動で、速筋は瞬発性のある運動で活躍する。

加齢に伴い、まず衰えるのは速筋。「歩行は持久力を高めますが、速筋繊維の減少は止められません。筋力トレーニングをしなければ、動きが鈍くなる。高齢者にその傾向が見られます。速筋が衰えた結果、歩幅が短くなってしまうのです。速筋を維持する唯一の方法が、筋力トレーニングです」とイシドロは指摘する。「筋肉は25歳まで増加し、35歳まで維持されます。その後は徐々に減り始め、50歳から減少が加速し、65歳ではさらに筋肉の衰えが顕著になります。しかし、70代でも毎日トレーニングすれば、運動不足の40~50代並みの筋力を維持している事例があります。トレーニングの習慣が、生物学的年齢を最大20歳若返らせると証明されているのです」

結局のところ、使わなければ衰える。これは筋肉だけでなく、骨や呼吸器系、骨盤底なども同じだ。定期的な運動はノンレム睡眠(眼球が動かない深い睡眠)の質も向上させるが、これも加齢とともに減少する。長いノンレム睡眠は、緩やかで健康的な老化と関連している。イシドロが強調するのは「筋力トレーニングは将来の健康への投資」という点。「筋力トレーニングは不安を軽減し、気分をあげてくれます。(精神も含め)健康な体こそが、完璧な体なのです」

「たくさん」やる必要はない

何事も、やりすぎは禁物。筋力トレーニングも同様で、適切な頻度や負荷がカギとなる。「たくさん」ではなく「正しく」行うのが大切だ。イシドロが提唱する「適切な量」は、「少ないレップ数(反復回数)」「十分な回復時間」、そして何より「疲れすぎないこと」がキーワード。「多くの人は、疲労感がない=トレーニング量が不十分だと思い込んでいますが、実は真逆です。筋力トレーニングでは、疲れない状態で質を追求するのが重要です」と語る。年齢やフィットネス歴に関わらず、適切量の筋力トレーニングを行うために注意したい7つのポイントは以下のとおり。

頻度は徐々に増やす

効果を実感するには、最低でも週2日のトレーニングが必要。とはいえ、できれば週3~4日に増やし、1日おきに休むのが理想的。筋力トレーニングは有酸素運動の前にしよう。どちらも同日にやる場合、有酸素運動をメニューの最後にするのが最適だ。

脚から始める

もしあなたがトレーニング初心者なら、まずは脚にフォーカスしよう。脚の筋肉は体で最も大きく、いちばん早く衰える。脚には速筋が多いこともあり、脚のトレーニングは極めて重要だ。

回数よりもスピードと負荷

速筋を鍛えるには、なるべく速い反復運動を取り入れるのがベター。過度な筋疲労を避けるため、自分ができる最大レップ数の半分以下くらいを目安に。「重要なのはスピードと負荷です。神経系への刺激を通して、速筋繊維が活性化します」とイシドロは話す。

休息も忘れずに

セット間の休憩は十分に取ること。最低でも1分間、動きの異なるトレーニング間では2~3分は休むと効果的だ。「話したり歌ったりできる状態になったら、次に移りましょう」

やりすぎない

「疲れすぎない程度、を意識しましょう。疲労が溜まると遅筋が働き、速筋を鍛えられません」とイシドロ。「回数の少ないトレーニングを適切に行い、それを数回繰り返す方が良いです。疲れすぎる前に止めること」

コンパクトに始めよう

サーキット形式で運動と休憩を交互に、まずは5分から15分の短いトレーニングから始める。「1日10分なら、誰でもトレーニングの時間を作れますよね。これまでの経験は忘れてください。トレーニングは痛くて疲れるものだと思われがちですが、量を減らせば、楽しんで実践できます。効果が実感できれば、好循環が生まれます」

呼吸も意識

回復力と持久力が高まるため、呼吸筋(横隔膜および外肋間筋)を鍛えるのもポイントだ。横隔膜まで酸素を送り込む意識で、息を長く深く吸い込む習慣をつけよう。

場所と時間

イシドロは朝の運動を勧めている。「交感神経系が早いタイミングで活性化され、夕方に副交感神経系が刺激されやすくなり、睡眠の質が向上します」。運動するときは、なるべく外に出よう。自然や人と触れ合うことも、健全な心身づくりに繋がる。

身の周りにジム設備が整っていなくても、諦めないでほしい。自重トレーニングも非常に効果的だ。「自分の体力レベルに合わせてトレーニングを調整し、継続することが大切です」とイシドロは言う。「団体や友人と一緒にできればなおよいでしょう。社会的交流は運動のやる気を引き出し、他人との関与を深め、健康寿命を伸ばすと研究でも証明されています」

筋機能をテストする

自宅でも簡単に筋肉の機能をチェックできる。いまの筋力レベルを確認し、改善すべき点を見つけるためのものだが、イシドロいわく「現状を把握するだけでなく、進捗を測定することも肝心」だという。「変化を体感することもありますが、客観的なデータが必要な場合もあります。これからご紹介するテストは非常にシンプルで、筋力トレーニングがどのように健康改善に役立っているか、具体的に確認できます」

椅子テスト

脚の力だけを使って、できるだけ速く椅子から立ち上がって座り直す。これを5回繰り返し、何秒かかったか計測する。椅子とストップウォッチだけあればできるこのテストで、脚の筋力を測定できる。脚は最も筋肉が多く、かつ最初に筋肉が衰える部位なため、状態をチェックしておきたい。

コウノトリテスト

利き足でないほうの足で立ち、もう一方の足を上げ、腕を使わずに姿勢を維持しよう。筋力とバランス感覚をテストできる。50歳未満の人は目を閉じて、高齢者は転倒防止のため目を開けてやってみてほしい。少なくとも45秒間、片足立の姿勢を保てるのが理想。

6分間持久力テスト

6分間、できるだけ速く歩いてみよう。移動距離が500メートル未満の場合、心肺機能が低下している可能性がある。500メートルから700メートルは許容範囲、それ以上なら安心だ。

Text: Laura Solla Translation: Rikako Takahashi

From VOGUE.ES

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