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「数百万円の大金を見逃すことに」お金のプロが警告。申請しないと1円も出ない…加給年金40万円に潜む「落とし穴」とは?

  • 2026.1.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「年金は65歳になったら自動的に計算されて振り込まれる」そう信じていると、年間約40万円、総額で数百万円もの大金をみすみす見逃すことになるかもしれません。

厚生年金には、条件を満たすと家族手当のように上乗せされる「加給年金」という制度があります。しかし、この制度は「申請主義」であり、自分から手を挙げなければ1円も受け取ることができません。さらに、加入期間がたった1ヶ月足りないだけで受給資格を失ったり、配偶者の働き方によっては支給が停止されたりと、知らなければハマる落とし穴が無数に存在します。

今回は、金融機関の現役マネージャー 中川佳人さんにインタビュー。「書類の書き忘れリスク」や「加入期間19年11ヶ月の悲劇」、そして共働き夫婦が注意すべき「支給停止の条件」について、プロの視点から徹底解説していただきました。

黙っていても振り込まれない! 「加給年金」をもらい損ねる最大の原因は、65歳で届く書類の“書き忘れ”

---「加給年金」は年間約40万円という大金ですが、実は「自分から申請しないともらえない」というのは本当ですか? 65歳の時に届く書類の「書き忘れ」や「添付忘れ」で大損するパターンを教えてください。

中川 佳人さん:

「加給年金は、条件を満たしていても、年金請求書などで所定の手続きを行わなければ加算されません。『65歳になったら自動的につく』と誤解されがちですが、老齢厚生年金と同様、加給年金も請求書の提出を前提とした仕組みです。

原則として、65歳になる誕生日の約3か月前に、老齢年金の請求書が届きます。この請求書の中で、『配偶者・子の状況』や『生計維持関係の申立て』を記入し、戸籍謄本などの必要書類を添えて提出することが、加給年金を受け取るための基本的な流れです。ここで対象となる家族がいることを正しく伝えられないと、加給年金は反映されません。

実務上よく見られるのは、申立欄の記入漏れや、戸籍謄本や住民票、所得証明書など、本来は原本提出が求められる書類をコピーで提出してしまうケースです。不備がある場合は、年金機構から照会や訂正の案内が届きますが、その対応が終わるまで支給開始が遅れることがあります。マイナンバーを記載することで一部書類が省略できる場合もありますが、すべてのケースで省略できるわけではありません。

注意したいのは時効の存在です。加給年金も年金給付の一部であるため、未請求分は原則として5年で時効となります。申請漏れに長く気づかなかった場合、さかのぼって受け取れるのは直近5年分までに限られ、本来受け取れたはずの金額を失ってしまう可能性があります。

加給年金は老後の家計に影響する大切な上乗せです。年金請求書は、配偶者欄や申立欄を丁寧に確認し、不明点があれば年金事務所で相談してから手続きを進めるようにしましょう。」

たった1ヶ月不足でも1円も出ない? 運命を分ける「厚生年金20年の壁」と、諦める前のリカバリー策

---もらえる人の条件に「厚生年金の加入期間20年以上」とありますが、もし「19年11ヶ月」で会社を辞めてしまった場合、本当に1円も出ないのでしょうか?

中川 佳人さん:

「厚生年金の加入期間が19年11か月のまま65歳を迎えた場合、原則として加給年金は支給されません。加給年金には『20年以上』という明確な基準があり、わずか1か月でも下回ると対象外になります。

このように厳しく判定されるのは、加入期間の要件が法律で定められているためです。加給年金では、厚生年金の被保険者期間が240か月に達しているかどうかが判断基準となり、19年11か月という状態でも、原則として受給権は発生しません。

ただし、65歳以降に厚生年金に加入して働くことで、加入月数を後から積み上げることは可能です。再雇用などで1か月でも加入し、被保険者期間が240か月に達すれば、要件を満たす場合があります。その場合も、加給年金が実際に反映されるのは、在職定時改定や退職改定など、年金額が見直されるタイミング以降となります。

なお、過去には生年月日に応じて20年未満でも対象となる経過措置が設けられていましたが、これは制度移行期の特例です。現在では該当者はかなり限られており、今後、この特例に新たに当てはまる人は、多くないと考えてよいでしょう。

加給年金は、配偶者が65歳になるまで続く重要な上乗せとなる年金です。これから65歳を迎える多くの人にとっては、『原則20年以上』という基準が実質的な判断軸になります。事前に自分の加入月数を確認し、必要に応じて短期間の就労を検討するなど対策をしていきましょう。」

「妻も会社員歴20年以上」なら支給停止に。共働き世帯が陥る、加給年金が“消滅”する意外なメカニズム

---意外と知られていない「もらえるはずがストップされる(支給停止)」ケースについて教えてください。特に「妻も長く会社員として働いていた(20年以上)」場合、なぜ加給年金は消えてしまうのですか?

中川 佳人さん:

「条件を満たしていたはずの加給年金が、後から支給停止になるケースは珍しくありません。特に注意が必要なのが、配偶者自身も長く会社員として働いてきた共働き世帯です。

加給年金は、配偶者に十分な年金がない場合の生活支援を目的とした制度です。そのため、配偶者本人が厚生年金に20年以上加入している場合は、『配偶者自身が老齢厚生年金の受給資格を有している』と制度上判断され、夫側に上乗せされる加給年金は支給されなくなります。収入額の多寡ではなく、年金の加入期間が判断基準となる点に注意が必要です。

見落とされがちなのは、実際に年金を受け取っているかどうかは関係ない点です。現在の制度では、配偶者が年金を繰り下げて受給していない場合でも、老齢厚生年金の受給権があるだけで、加給年金は支給停止の対象になります。

さらに、配偶者が65歳になった際に予定されている年金の上乗せも行われません。通常であれば、夫の加給年金が終了し、配偶者側の年金に加算が行われますが、厚生年金の加入期間が20年以上ある場合は、この加算自体が適用されません。

共働きが一般的になった今、こうした支給停止に該当する世帯は増えています。老後の資金計画を立てる際は、夫婦それぞれの厚生年金の加入期間を事前に確認し、加給年金が見込めるかを把握しておくことが大切です。」

「夫婦の年金記録」が受給の鍵。申請書を書く前に、必ず“加入月数”の確認を

加給年金は「老後のボーナス」とも呼べる貴重な収入源ですが、中川さんの解説の通り、その受給要件は非常に複雑でシビアです。

今回のポイントを整理すると、以下の3点になります。

  1. 「自動」ではもらえない 65歳の年金請求書で「配偶者がいること」を申告し、戸籍謄本などを添えて申請しなければ、権利は発生しません。
  2. 「20年」が絶対条件 厚生年金の加入期間が1ヶ月でも足りなければ対象外です。不足している場合は、65歳以降も働いて期間を埋める方法を検討しましょう。
  3. 「共働き」は要注意 配偶者にも20年以上の厚生年金期間がある場合、加給年金は支給停止となります。

最も大切なのは、夫婦それぞれの「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で、正確な加入月数を確認することです。 「自分は対象になるのか?」「妻の年金と調整されるのか?」と少しでも迷ったら、自己判断せず、年金事務所でプロに確認してから手続きを進めることを強くお勧めします。


監修者:中川 佳人(なかがわ よしと)(@YoshitoFinance

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。
専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。