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65歳で定年退職「元気なうちに使わないと」“貯金2000万円”で年3回旅行へ…10年後、男性を襲った“大誤算”【お金のプロは見た】

  • 2026.2.27
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ファイナンシャルプランナーとして、日々さまざまなご家庭のお金の相談に向き合っている柴田です。

「老後のために」と節約を続けて、結局お金を使えないまま人生を終える。そんな「もったいない老後」に警鐘を鳴らす考え方が、いま注目を集めています。

ところが、その考えに背中を押されすぎた結果、78歳で貯蓄がほぼ底をつきかけた相談者がいます。今日は、お金を「使う勇気」と「守る判断」のバランスについて、実例をもとにお話しします。

「DIE WITH ZERO」が多くの人に刺さった理由

ビル・パーキンス氏の著書『DIE WITH ZERO(ダイ・ウィズ・ゼロ)』という書籍をご存知でしょうか。

「死ぬときにお金を残すな、生きているうちに使い切れ」「有意義な経験のためにお金を使え」というメッセージが話題となり、日本でもベストセラーになりました。

この本が刺さったのは、多くの人が心のどこかで「貯めてばかりで、いつ使うんだろう」と感じていたからではないでしょうか。

私も、この考え方には大いに賛成しています。老後資金を気にするあまり、体が元気なうちの旅行や趣味を我慢し続ける方を何人も見てきました。お金は、使ってこそ価値があるのは間違いありません。

ただし、「使い方」を間違えると、安心ごと失ってしまうのです。

65歳で2,000万円あった資産が、78歳で150万円に

先日ご相談にいらしたのは、78歳の男性・Aさん(仮名)です。

Aさんは65歳で定年退職したとき、退職金と貯蓄を合わせて約2,000万円の老後資産がありました。年金は月約16万円、持ち家でローンは完済済み。数字だけ見れば、堅実な老後のはずでした。

Aさんは、まさに『DIE WITH ZERO』に感化されていました。

「せっかくの退職金を寝かせておくなんてもったいない。元気なうちに使わないと」と考えたAさんは、退職後すぐに夫婦で海外旅行へ。毎年2~3回くらいのペースで国内旅行を楽しみ、孫へのお祝いも欠かさなかったそうです。どれも「今しかできない経験」として、積極的にお金を使い続けました。

問題は、取り崩しのペース配分でした。

年金だけでは月の生活費に足りず、毎月5~8万円を貯蓄から補填。それに加えて旅行やイベントの出費が年間80~120万円。気づけば毎年150万円程度のペースで資産が減っていたのです。

78歳になった今、手元に残っているのは約150万円。年金だけで基礎生活費はカバーできそうな状況とはいえ、預貯金は心許ない水準と言わざるを得ません。

「完璧なゼロ」を目指さなくていい

Aさんの考え方そのものが間違っていたわけではありません。使い切る「覚悟」はあったものの、使い切る「計算」が足りなかったのです。

人間は、自分がいつ亡くなるか分かりません。だからこそ、完璧に「ゼロで死ぬ」ことは、現実にはほぼ不可能です。

私が「DIE WITH ZERO」を目指すご相談者にお伝えしているのは、500万円を目安に「絶対に手をつけない資産」を分けることです。この500万円は、急な入院や介護、住まいの修繕など、想定外の出費に備えるためのお金です。

「使わずに死んだらもったいない」と思う方もいるでしょう。しかし、500万円が余って亡くなるのと78歳で残り150万円の不安を抱えて暮らすのと、どちらが幸せでしょうか。

「余ったら余ったで構わない」と割り切れる人のほうが、結果として旅行も趣味も、心から楽しめるはずです。

「使い切る人生」を目指すなら、まず「守る金額」を決めましょう。「自由に使っても良いお金」を明確にして、「ほぼDIE WITH ZERO」を目指すのが、精神衛生上も健全と考えています。


監修者:柴田 充輝

厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1200記事以上の執筆実績あり。保有資格は1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士など。


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