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「早く飛ばせよ!」冬の機内に響いた怒号。元CAが語る“数センチの積雪”で欠航になる空港の裏事情

  • 2026.2.5
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。元国際線CAのかくまるめぐみです。

「お正月は帰省して、家族とおせちを食べてゆっくり」
「カウントダウンは海外で」

と、年末年始に素敵な思い出を残された方も多いでしょう。しかし、冬の空の旅には、思いもよらない「罠」があることをご存知ですか?

そこで今日は、客室乗務員時代に直面した冬ならではのトラブルと、その裏側にある「なぜ?」「どうして?」についてお話しします。

機内に響いた「早く飛ばせよ!」の怒号

それは年末年始の繁忙期、国内線に乗務していた時のことです。

前日から“関東地方に寒波到来”のニュースがあり、都内でも珍しく積雪予報が出ていました。私は身支度をしながら「どうか羽田発の乗務便に、影響が出ませんように」と祈るような気持ちで出社しました。

機内は年末とあって、家族連れや帰省客で満席です。ふと窓から外を見ると、滑走路はうっすらと白くなり始めていました。

そして、まもなく出発時刻という時、機長からインターフォンで「管制塔からの連絡によると、除雪作業と路面チェックにまだ時間がかかるそうです。加えて空港混雑のため、大幅な遅延が予想されます」と連絡が入ったのです。

機内アナウンスで遅延のお知らせをすると「予定が狂っちゃうよ......」「いつ出発できるの?」など、客室のあちらこちらからため息まじりの声があがりました。

そこで、本来は上空でお出しする予定だったお飲み物を提供することにしました。しかし、1時間近く機内に缶詰状態となったお客様の不安と苛立ちはピークに......。

と、その時です。「大した積雪じゃないだろ!早く飛行機を飛ばせよ!」という怒号が客室に響き渡りました。

事情を伺うと、帰省して久しぶりの同窓会に参加する予定があり、これ以上遅れると間に合わないとのこと。この帰省をどれほど楽しみにされていたか、痛いほど伝わってきました。

しかし、客室乗務員にとって、自然が相手の遅延や欠航はどうすることもできない不可抗力なのです。

なぜ「数センチの積雪」で遅延・欠航になるの?

もしかすると、これが北海道や東北の空港であれば、遅延にはならなかったかもしれません。なぜなら、雪国の空港は以下のように雪への備えが整っているためです。

  • 空港が「雪が降るのを前提」で設計されている
  • 防除雪氷作業を行う専門の部署や機材が充実している
  • 滑走路の積雪・凍結への対策レベル(設計や設備)が高い など

一方で、比較的降雪の少ない都市部の空港は、雪国の空港ほど大規模な除雪体制や設備を備えているわけではありません。そのため、想定を超える降雪があった際には、滑走路閉鎖や離着陸制限が発生しやすくなるのです。

これは、都心で数センチの雪が降るだけで、交通機関が大混乱してしまうのと同じ構図ではないでしょうか。

また、積雪以外にも運航の可否には、雪の種類(湿った雪か、粉雪か)や滑走路の凍結状況、そして気温・視界・風といった多くの条件が絡んでいます。

「雪がちょっとだけ積もっただけなのに?」と思われがちですが、飛行機の安全は“少しでもリスクがあれば飛ばさない”という姿勢で守られているのです。

「雪が降っていないのに、雪の影響で欠航」その理由とは?

実は、出発地空港に雪が降っていなくても、雪の影響で遅延や欠航になることがあります。その最大の原因は「機材繰り(ぐり)」によるものです。

通常、飛行機は“精密なパズル”のように組まれたスケジュール(機材繰り)で日本中そして世界中の空を飛び回っています。前のフライトが終わったら、すぐにまたお客様をお乗せして次の空港へ向かうという、リレー形式で運航されているのです。

ところが、どこか一つの空港で雪の影響により遅延や欠航が発生してしまうと、このリレーのバトン(飛行機そのもの)を渡せません。つまり、雪の降っていない空港では、乗るはずの飛行機が前の空港から飛んでこないという事態が起こるのです。

この“来るはずの飛行機がない状態”が運航スケジュールを狂わせてしまい、ドミノ倒しのように遅延や欠航を起こしてしまうのです。

特に、年末年始のような繁忙期の過密ダイヤでは、一度崩れてしまった運航ダイヤを立て直すのは極めて困難といえるでしょう。

こうした裏事情があるため、冬の空の旅では出発地が快晴であっても、遠い地で降った雪の影響を受けて、遅延や欠航になってしまうケースも珍しくないのです。

【元CAが提言】冬の空の旅で覚えておきたい心得

「飛行機を予約している日に、雪の予報が出ている!」そんな時は、天気予報とともに利用する航空会社のウェブサイトで「運航の見通し」など重要な情報が出ていないか、前日からこまめに確認しましょう。

遅延や欠航の可能性が高くなりそうな場合は、新幹線やレンタカーなど代替の移動手段を検討しておくことも大切です。

そして、雪の影響で遅延が発生し“機内で缶詰状態”や“空港で夜を明かす”といったケースも想定しなければなりません。ただ、預け入れ荷物はすぐには手元に戻らないため、常備薬、軽食や飲み物、簡単な洗面用具などを“機内持ち込み手荷物”に入れておくことをおすすめします。

また、赤ちゃんや小さなお子様連れの方は、オムツ・離乳食・おやつ・着替え・おもちゃなども少し多めに持参すると安心です。こうした対策をしておくだけでも、余計な労力や精神的ダメージを軽減できるはずです。

最後に......冬の空の旅は、ときに気まぐれです。

もし、飛行機をご利用日に雪予報があった際には、このコラムを思い出していただき、みなさまの安心で穏やかな空の旅のヒントとなれば幸いです。


ライター:かくまるめぐみ
大学卒業後、日系航空会社に客室乗務員として入社。国際線をメインに乗務し、世界中を飛び回る。結婚を機に退職し、イタリアへ移住。現在も家族とともにイタリアに在住し、Webライターとして活動。客室乗務員の経験から培った「細やかな心配り」を大切に、コラム記事からSEO記事まで幅広く執筆中。


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