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「駅前のタワマン」1階が“パチンコ店”…なぜ? 大阪・吹田駅前の“異様な光景”【バブル遺産マニア探訪】

  • 2025.11.7

大阪・吹田駅の目の前にそびえ立つタワーマンション。その足元、1階のメインテナントがパチンコ店という、ちょっと意外な組み合わせをご存じでしょうか。

駅前の一等地に商業施設とタワーマンションを複合させた「メロード吹田」は、バブル期ならではの大規模開発の産物です。過去にはマクドナルドやパン屋も営業していましたが、今は撤退。時代とともに姿を変えながら、この場所は独自の道を歩んでいます。

都市開発や商業施設の情報を発信するYouTuber・だいまつさんに、実際に現地を訪れて感じたこと、そしてこの場所が持つ可能性についてお話を伺いました。

グレーと白で統一された世界観

---まず、吹田駅前を訪れて、どのような印象を受けましたか?

「駅を出て右側の、タワーマンションがある側の雰囲気が印象的でした。バブル期の建築には『全く色がないか、逆にすごくカラフルか』という両極端な特徴があると個人的に思っているのですが、ここは前者でした」

---確かに、バブル期の建物には極端なデザインが多いですね。

「基本的にグレーや白で統一されていて、全く色がない『無機質な感じ』。これが私には『ザ・バブルだな』と感じられました」

モダンで都会的なイメージを追求した結果、色を削ぎ落とした無機質なデザインに行き着く。これもまた、バブル期特有の美意識だったのかもしれません。

ただ、現在のメロード吹田を特徴づけているのは、そのデザインだけではありません。駅前の商業施設でありながら、1階のメインテナントがパチンコ店という構成になっているのです。

テナントが定着しない複合的な理由とは

---1階がパチンコ店という構成になった経緯を教えてください。

「1階のパチンコ店は、再開発される前からの元々の地権者だったようです。ただ、リサーチしたところ、その地権者のパチンコ店も一度閉店し、現在の別のパチンコ店に入れ替わっています」

大規模な再開発でも、既存の地権者の権利を完全に移転させることは難しい場合があります。その結果、当初の計画とは異なるテナント構成になることもあるのです。

---他の商業テナントが定着しにくい理由については、どう分析されていますか?

「他のテナントが定着しにくい最大の理由は、『人の流れ(動線)』にあると推測しています。吹田駅は、駅を出て左側に大通りや大学、そして元からの商業施設があります。利用者のほとんどはそちらへ向かうんです」

---なるほど、駅の反対側が賑わっているんですね。

「タワーマンションがある側は、昔から古い民家が中心の住宅地で、基本的に『住む人以外は行かないエリア』なんです。駅前の好立地に見えますが、居住者以外の歩く機会がそもそも少ない場所なんですね」

同じ駅前でも、人の流れの方向によって商業的な価値は大きく変わります。これは都市計画の難しさを物語っています。

「もちろん、『1階がほぼ全部パチンコ屋なので、2階に何かあっても入りにくい』というイメージの問題も大きいでしょう。過去にはマクドナルドやイートインのあるパン屋も入っていたようですが、それらも抜けてしまいました」

---マクドナルドのような有名チェーンでも撤退してしまったんですね。

「加えて、メロード吹田の商業エリアは『床面積が狭い』ため、魅力的なテナントを揃えるのが難しい。100均のような目的買いの店でもない限り、周囲との相乗効果がないと厳しい。これらの複合的な理由で、テナントが定着しにくいのだと思います」

この場所ならではの「魅力」とは

---実際に訪れて発見できた、この場所ならではの魅力はありましたか?

「駅前の好立地であることは間違いありません。そして、大規模ではないにもかかわらず、商業施設を併設していること自体が、今となっては非常に珍しいです。普通ならマンションのみにするか、外側にテナントを少し入れる程度です」

---確かに、最近の開発ではあまり見かけない形ですね。

「これは当時の『勢いがあった時代』ならではの開発だと思います。今後、この規模で商業施設が作られることはなかなかないでしょう」

メロード吹田は、バブル期特有の「街全体を一気に作り上げる」という思想の表れでもあるのかもしれません。

「また、運営は第三セクターで、吹田市と民間が共同出資していることから、堅実な経営をしているように見受けられました。経営面においても赤字や大きく傾くといった未来は今後想像しづらいです」

---上層階の飲食店は人気があるとお聞きしました。

「はい、タワーマンション上層階の焼肉屋や中華バイキングは、とても人気で栄えていました」

1階の課題とは対照的に、上層階では地域に受け入れられている店舗もあります。訪れる目的がはっきりしていれば、人は足を運ぶのです。

---この場所が持つ「未来の可能性」については、どうお考えですか?

「吹田市の中心地でもなく、駅の反対側には既に商業施設があり、こちらは元々人通りが少なかった場所です。そこにあえて商業施設を併設したタワーマンションを作ったという、当時の『思い』や『開発の経緯』そのものが、未来の資産になっていく可能性はあると感じています」

今後のさらなる進化に注目

駅前開発によって、住宅地としての魅力は確実に高まりました。商業面での課題はあるものの、「人が集まる場所を作る」という当初の目的は、形を変えながら実現しているとも言えるでしょう。

時代とともに求められるものは変わっても、駅前という立地の価値は変わりません。この場所が今後どのように進化していくのか、注目していきたいところです。



動画:【バブル遺産】人気の駅前タワマン下の商業施設、メインテナントはパチンコ屋「メロード吹田」

参考:大阪府「地区調書」(https://www.pref.osaka.lg.jp/documents/2060/jrsuita_1.pdf
吹田市「市街地再開発事業」(https://www.city.suita.osaka.jp/sangyo/1017979/1020321/1018136/1010378.html
吹田市開発ビル株式会社(http://suita-kaihatsu.co.jp/

取材協力:だいまつさん『だいまつのどこでも探検隊
都市開発や商業施設、バブル遺産などの情報をYouTubeで発信。独自の視点で街の変化や歴史を伝えている。
・X:だいまつ(@Daimatsu__
・Instagram:だいまつ(daimatsu___
・TikTok:だいまつのどこでも探検隊(daimatsu_


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