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「新幹線がトラック代わりになる?」およそ60年前の“幻の計画”が今、形を変えて復活するワケ

  • 2026.3.7
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。フリーライターの前林広樹です。

2026年3月23日より運転を開始するJR東日本の荷物専用新幹線。かつて「つばさ」で利用されていたE3系電車を改造した上で、E5系「やまびこ」に連結する形で平日に運行されます。正午前に盛岡新幹線車両センターを出発し、16時頃に東京新幹線車両センターに到着するダイヤが予定されています。

これまでにもJR東日本では新幹線の余剰スペースを活用した「はこビュン」サービスにより、毎週金曜日に200箱程度の輸送を行っていました。

今回の荷物専用新幹線の登場により、その積載量は最大17.4t、段ボールにして約1,000箱の輸送が可能になります。

ところで、新幹線の専用車両による貨物輸送、実は最近出てきたアイデアではありません。今から60年以上も昔、一番最初の新幹線である東海道新幹線の開業前から構想されてきたアイデアでした。

一体どのような計画だったのでしょうか?

かつて存在した貨物新幹線構想

1964年に開業した東海道新幹線には貨物輸送の期待もあり、その走行を前提とした設計基準となっていたほか、貨物駅の用地買収なども一部で進められていました。

この列車は深夜に品川を出発し、途中静岡、名古屋、大阪に設けられた貨物駅に停車することで、東京〜大阪間を5トンコンテナを横積みした列車が約5時間30分で結ぶ計画でした。

最高時速は約150kmと現在の在来線特急よりも速く、5時間30分という所要時間も当時の在来線貨物列車より大幅に短いものでした。

しかし夜間の保守業務や新幹線騒音公害が社会問題となったことで、新幹線における「貨物列車を走らせる構想」に暗雲が立ち込めます。

そして高度成長期もあって在来線の高速化も進み、東京〜大阪間が8時間ほどで結ばれるようになったこともあり、新幹線の貨物輸送は意義を失い構想はなくなりました。

こうして幻に終わった貨物新幹線ですが、各地に遺構が残され、特に新大阪駅付近には高架橋の構造物が50年以上にわたり、残されていました。

ただこの構造物も2017年に撤去されています。

新幹線の貨物輸送のその後:レイルゴー・サービスから空きスペースを活かした輸送に変貌

ただ、新幹線の速達性を活かし、書類など高速で輸送しなければならない荷物の輸送サービスの開発が進められました。

そして誕生したのが業務スペースを活かした「レイルゴー・サービス」です。

1981年に東海道新幹線にて登場したこのサービスは、荷物1個から列車出発の30分前まで受付可能という利便性の高いもので、商用サンプルや書類など、高速での輸送が必要な場面で人気を博していました。

東海道・山陽・東北・上越の各新幹線に拡大され、国鉄が旅客列車を利用した荷物輸送を廃止した1986年以降も、分割民営化後も各社で継続されました。

1990年代以降は、宅急便に押されて利用が減少。2021年にJR東日本で廃止されたことで40年にわたる歴史に幕を下ろしました。

ただ「レイルゴー・サービス」がなくなったのちも、新幹線の貨物輸送の試みは続き、近年では拡大傾向にあります。

特に旅行自粛が推奨されたコロナ禍以降は、新幹線の車販準備室などの未利用スペースを活用した物流サービスが相次いで登場しています。

JR東日本の「はこビュン」はその代表といえるものです。

同社では2017年より新幹線や在来線を活用し、駅で実施するマルシェで販売する食品の輸送などの物流サービスの実験を続けています。

また「レイルゴー・サービス」をいち早く廃止したJR東海・東海道新幹線でも2024年より「東海道マッハ便」が開始されています。

新幹線の貨物輸送には、そのほかJR西日本の「荷もっシュッ!」(2025年)、JR九州の「はやっ!便」(2021年開始)も存在し、2020年代以降各新幹線で登場しています。

結論

新幹線による貨物輸送は、コンテナを活用する貨物列車計画こそ幻に終わってしまいましたが、未利用スペースや専用列車を活用することにより、当初とは違った形で発展しようとしています。

新幹線にはトラックや飛行機にはない市街地間での速達輸送という独自の強みがあります。

現在では列車本数やスペースが限られ、大量のものは運べません。

しかし、例えば鮮度が落ちやすく今まで産地以外では生では食べられなかった魚を遠く離れた都市の飲食店でも刺身で提供できるようになったり、展示会で故障した部品を当日中に取り寄せたりするなど、緊急性の高い輸送を行う場合、都市部に駅を置く新幹線物流は非常に有効です。

東海道新幹線の貨物輸送計画から半世紀以上の時を経た今もなお、新幹線の荷物輸送に対する需要と期待は残っているといえるでしょう。


参考:
・東日本旅客鉄道株式会社「列車荷物輸送サービス「はこビュン」の事業拡大を通じて LX を推進します」 ~日本初の荷物専用新幹線の運行を 2026 年 3 月 23 日に開始します~ 2025年12月9日
・東日本旅客鉄道株式会社「新幹線レイルゴー・サービスの終了について」2021年8月23日
・東海旅客鉄道株式会社 「新しい荷物輸送サービス「東海道マッハ便」の開始について」 2024年2月15日
・西日本旅客鉄道株式会社「鉄道による貨客混載事業「荷もっシュッ!」」2025年7月31日
・九州旅客鉄道株式会社 「九州新幹線荷物輸送サービス「はやっ!便」 スタートします!」 2021年5月10日


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