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「あれ、ケトルがない…?」外国人客の部屋から備品“消失”。元ホテルマンが明かす「泣き寝入り」するしかない裏側

  • 2025.11.6
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「あれ、ケトルがない……?」

清掃スタッフからの一報を受け、Aさんが客室に駆けつけたとき、そこには信じられない光景が広がっていました。テーブルの上、あるべき場所にケトルがない。まさか、持ち帰られた?

大手ホテルチェーンで4年間勤務したAさん(2025年10月時点)が遭遇した、この「ケトル紛失事件」。実はホテルの備品持ち帰り問題には、明確な線引きがむずかしい一面があります。

「これって、持ち帰っていいの?」

誰もが一度は抱いたことがあるこの疑問。今回は現場を知る元ホテルマンに、“持ち帰っていい基準”と“知られざる裏側”を聞きました。

持ち帰りの明確な境界線は「使い回しできるか否か」

まず、ホテルの備品の中で、持ち帰りが許されているものと、そうでないものの境界線はどこにあるのでしょうか。

Aさんは明快に答えます。

「区別としては『使い回せるか、使い回せないか』が基準になります。歯ブラシやくしといったアメニティ類は使い回せないので、どうぞご自由にお持ち帰りください」

一方、ドライヤーやケトルなどの大型備品は、当然ながら持ち帰り不可とのこと。では、バスタオルやバスローブのようなリネン類はどうでしょうか。

「それらも『使い回し』が前提なので、持ち帰りは基本NGです。バスタオルやシーツ、バスローブは、専門の業者が洗濯し再利用しています。毎回購入していたらSDGsの観点からも問題ですから」

淡々とした口調の中に、ホテル運営の現実が滲んでいます。アメニティ以外のほとんどが、ホテルの資産として再利用されている。私たちはまず、この事実を知る必要があります。

「ケトル紛失事件」とホテル運営の現実

しかし、この「再利用が前提」という認識が、必ずしもすべての宿泊客に共有されているわけではないようです。Aさんが遭遇した、ある事件がそれを物語っています。

「『あれ、部屋からケトルがなくなっている?』ということが実際にありました。確か外国のお客様だったと思います。清掃スタッフから『ケトルがないです』と連絡があり、見に行ったら本当にありませんでした」

ケトルは数百円のアメニティとは異なり、立派な大型備品です。もしお客様が誤って持ち帰ってしまった場合、ホテル側はどのように対応するのでしょうか。

「お客様の連絡先は控えていますが、すでに出国されている場合もありますし、取り返す手間を考えると、新しい予備のものを入れるしかない、というのが現実的な対応になってしまいます」

無断で持ち帰られてしまった備品のために、ホテル側は手間と費用をかけて新しいものを補充せざるを得ない。これが現場の実情です。

もっとも、こうしたケースは決して多くはないようです。

「備品の持ち帰りは全体の一割にも満たない、ごく一部のケースです。私もケトルの持ち帰りに遭遇したのは、数年働いて1回あったくらいですから」

Aさんは強調します。大半の宿泊客はマナーを守っているのだ、と。

購入可能な備品とホテルの対応策

実は、全ての備品が持ち帰り禁止というわけではないそうです。客室に置いてある書籍や小物などについて、Aさんはこう解説します。

「もしそれが購入可能な備品であれば、価格シールが貼ってあり『ご希望の方はフロントまでお申し付けください』という案内があるはずです」

では、そもそもなぜ備品を持ち帰ってしまう人がいるのでしょうか。Aさんは、文化的な背景による「誤解」の可能性を指摘します。

「海外のホテルでは、日本ほど備品が充実していないことが多い。そのため『部屋にあるものは宿泊料金に含まれていて、持ち帰っていい』と誤解されている可能性はあるかもしれません」

こうした誤解を防ぐため、ホテル側は次の対策を講じているとAさんはいいます。

「まずは室内のご案内をしっかりすること。それから備品自体に『持ち帰り禁止』『ホテルの備品です』といったステッカーを貼って明示することですね」

Aさんによれば、テレビのような大型機器は、物理的に持ち帰れないよう、壁や台にしっかり固定されているそうです。

「使い切りアメニティ」以外はホテルの資産

ホテルの備品は、歯ブラシやくしなど「使い切りアメニティ」以外は、再利用されるホテルの大切な資産です。

バスタオルやバスローブ、ケトルといった備品を無断で持ち帰る行為は、ホテルの運営に予期せぬ手間と、備品の購入という余計なコストを生じさせてしまいます。

元ホテルマンのAさんが話すように、ほとんどの宿泊客はルールとマナーを守って滞在しています。

だからこそ、私たち一人ひとりが「これは再利用されるホテルの資産だ」という意識を持つことが、快適で持続可能な空間を守る第一歩になるのではないでしょうか。



取材協力:元ホテルマンAさん
20代後半の男性。大手ホテルチェーン従業員として4年間のキャリアを経て、現在は旅行業界で勤務している。


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