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バブルで建設費850億円も…元百貨店を2度も閉店に追い込んだ“思わぬ大誤算”【バブル遺産マニア探訪】

  • 2025.11.6

奈良市に、東京スカイツリー(約650億円)をも上回る850億円もの建設費をかけて生まれた建物があることをご存じでしょうか。それが、現在「ミ・ナーラ」として営業する複合商業施設です。

かつて「そごう奈良店」として誕生したこの建物は、バブル期ならではの豪華な設えを今に残しています。回転レストランに大理石の柱、金ピカの内装…当時の時代の空気をそのまま閉じ込めたような空間が、時代の変化とともに新しい役割を見つけながら、今も地域で愛され続けています。

都市開発や商業施設の情報を発信するYouTuber・だいまつさんに、この建物が歩んできた道のりと、そこから見える未来の可能性についてお話を伺いました。

当時の技術と美意識が詰まった空間

---ミ・ナーラを訪れて、特に印象に残った建築的な特徴を教えてください。

「2つあります。まず外観では、以前屋上にあった『回転レストラン』です。あれはもう『ザ・バブル』ですね。今は効率重視、費用対効果を考える世の中ですから、今後こういうものが作られることは基本的にないでしょう。 私自身はやっていませんが、この回転レストランを目当てに、全国の元そごうを巡って写真を撮っているマニアの方がいるほど、象徴的な存在です」

---確かに、回転レストランって今ではほとんど見かけませんね。

「もう一点は、建物内部です。入り口を入ってすぐの、大理石ですごく太い柱が並んでいる様子や、金ピカの内装ですね。ひと目見た瞬間に、『あ、ここは普通の商業施設ではないな』とすぐに感じさせられました。 建物にお金をかけることが当時のステータスであり、水が流れる演出など、おそらく子供が楽しめるような仕掛けにも注力していたのだと思います」

バブル期の商業施設は、建物そのものが「特別な体験」を提供する場所だったのでしょう。

現代の感覚では過剰に見えるかもしれませんが、当時の技術と美意識を結集した建築として、今では貴重な存在になっています。

時代とともに変わる「求められる場所」のかたち

---そごうからイトーヨーカドー、そして現在のミ・ナーラへ。業態が変わっていった背景をどう分析されていますか?

「まず、初期投資で850億円(※スカイツリーの建設費より多い)を投じたという規模感です。その点に加え、やはり立地要因が大きいです」

---立地については、どのような特徴があるのでしょうか?

「ミ・ナーラがある場所は、奈良市の本当の中心地(近鉄奈良駅周辺など)ではありません。実際に駅から歩いてみたのですが、最寄りの新大宮駅からも徒歩15分かかります。 しかも、今もそうですが、交通量の多い道沿いにあり、そもそも駐車場にも少し入りにくい。巨大な商業施設ではありますが、周りに他に立ち寄れる店もないため、『ついでに来る』という動線がないんです。

それゆえ、『1日中過ごせるか』という観点においても、当時の利用客は『ここに行くなら、奈良市の中心部でいい』『大きな買い物なら大阪や京都に出てもいい』という選択になってしまったのだと思います」

時代が進み、人々のライフスタイルや買い物の仕方が変化する中で、この建物もまた、新しい役割を模索し続けてきたのです。

ユニークなテナントが生み出す新しい価値

---現在のミ・ナーラは、他の商業施設にはない独自性で注目を集めていますね。成功している理由をどう見ていますか?

「再生の理由として大きいのは、『そごう』『イトーヨーカドー』という2回の大きな失敗を経ている点だと推測します。

あくまで私の推測ですが、2回の業態転換を経たことで現在の運営会社は建物をかなり安く取得できているはずです。その結果、テナントの家賃を安く設定できる。だからこそ、『金魚ミュージアム』や、生き物と触れ合える施設など、他の商業施設にはないユニークなテナントを誘致できている。これが差別化に繋がり、成功している大きな理由でしょう。 特に金魚ミュージアムは、関西ではInstagramなどで話題になっており、集客の核になっています」

過去の試行錯誤があったからこそ、現在の運営では柔軟な発想が可能になりました。大手百貨店やスーパーとは違う、個性的なテナント展開が、かえって新しい魅力を生み出しているのです。

---現在のミ・ナーラが持つ「未来の資産」としての可能性について、どうお考えですか?

「そして、『未来の資産』としての魅力は、間違いなく『建物そのもの』です。 これほど豪華で、ある意味で非効率な建物は、二度と建てられません。当時のそごうの建物は、それ自体が貴重な資産です。

例えば、埼玉の元そごう川口店は、三井不動産が買い取り『ららテラス川口』として改装オープンしましたが、そごう時代の面影をかなり残しています。好調な三井不動産でさえ、そごうの建物は魅力的だと考えている証拠です。 このミ・ナーラも、この建物を長く残していくこと自体に、非常に大きな価値があると考えています」

時代とともに姿を変えつつ、地域に必要とされる場所へ

バブル期の建築技術や美意識は、今の時代には再現が難しいものです。だからこそ、この建物を活かしながら、時代に合わせて進化させていくことに意味があります。

過去の「豪華さ」と現代の「個性」が融合したミ・ナーラは、建物の可能性を示す好例と言えるでしょう。時代とともに姿を変えながらも、地域に必要とされる場所であり続ける。それこそが、この建物が持つ本当の価値なのかもしれません。



動画:【バブル遺産】東京スカイツリーより高い850億円もかけて建てられた元百貨店「ミ・ナーラ」

参考:ミ・ナーラ公式HP(https://www.mina-ra.com/

取材協力:だいまつさん『だいまつのどこでも探検隊
日本各地の都市開発や商業施設の情報を研究し、YouTubeで発信するバブル遺産マニア。独自の視点で街の変化や歴史を伝えている。
・X:だいまつ(@Daimatsu__
・Instagram:だいまつ(daimatsu___
・TikTok:だいまつのどこでも探検隊(daimatsu_


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