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「相場より500万円も安い!」即決しかけた土地→市役所に確認した結果…“衝撃の事実”に絶句…【一級建築士は見た】

  • 2025.11.6
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「周辺相場より500万円も安い理想の土地を見つけました」

そう語ったのは、マイホームを検討していたEさん(30代・夫婦+子ども1人)。 住宅地の近くにある更地で、広さも十分。周囲には住宅が建ち並び、見た目にはまったく問題がありませんでした。

「このエリアでこの価格なら即決したい」と胸を弾ませたEさん。 しかし、購入直前に筆者(一級建築士)へ相談に来たことが、運命を分けました。

「周りに家があるから大丈夫」――その油断が落とし穴に

Eさんが見つけた土地は、周辺の相場より約500万円安い物件でした。 現地を見に行くと、周囲には整った街並みと立派な住宅が並んでおり、「この場所なら安心だ」と確信したといいます。

しかし、掲載情報には見慣れない一文がありました。 ――「用途地域:工業専用地域」

Eさんはその意味を深く考えずに、最終確認のために筆者に相談してくれました。 そして現地調査と市役所での確認を行った結果、衝撃の事実が判明したのです。

建っているのに“建てられない土地”

用途地域を調べると、その土地は「工業専用地域」に指定されていました。 工業専用地域は、重工業や製造業のために都市計画で定められたエリアであり、住宅や店舗など「人が住む建物」を建てることは原則禁止されています。

確かに周囲には住宅が並んでいました。しかし、それらの住宅は、20年以上前に用途地域が変更される前から建っていたものでした。 つまり、当時は住宅地だったものの、後に都市計画が変更され、今では「土地を購入しても、新築できない土地」になっていたのです。

「こんなに住宅が建っているのに、新しく家が建てられないなんて信じられません」 Eさんは驚きを隠せなかったといいます。

もし買っていたら――数百万円の“負債”になるところだった

仮にEさんがこの土地を購入していた場合、建築確認は下りず、当然ながら住宅を建てることはできません。 さらに、工業専用地域の土地は需要が少ないため、売却も難しいのが現実です。

「家を建てるために土地を買ったのに、家を建てられない」 そうなれば、資産どころか“負債”を抱えることになってしまいます。

Eさんは、購入前に相談したことでこのリスクを回避できました。 「見た目も価格も良くて飛びつきそうになりましたが、確認して本当によかったです」

一級建築士が警告――「安い土地」には必ず理由がある

筆者はこれまで多くの土地相談を受けてきましたが、「建っている家があるから大丈夫」と思い込む方は非常に多いです。 しかし、土地には「見えない法的制限」が存在します。

特に注意すべきは、次のようなケースです。

  • 工業専用地域:住宅・店舗の建築ができない
  • 市街化調整区域:原則として建築不可
  • 農地(地目:田・畑):転用許可が必要
  • 接道2m未満:建築基準法上の建築不可

これらは、土地の現地写真を見ただけでは判断できません。 見た目が「住宅地」に見えても、法的には「建てられない土地」であることがあるのです。

「住宅が建っているかどうかより、『いま建てられるかどうか』を確認することが大切です。都市計画の指定や法改正で、同じ地域でも建築の可否が変わることがあります」

「安さ」に潜むリスクを見抜くために

Eさんのように、相場より極端に安い土地を見つけたときは、「なぜ安いのか」を徹底的に調べることが必要です。 用途地域、接道、地盤、ハザード、過去の土地履歴――。 いずれも住宅の建築に直結する「法的条件」です。

特に都市部の郊外では、工業専用地域が入り組んでいるため、「住宅が建っているエリアなのに、実は建築不可」というケースが少なくありません。

建てられない土地は「資産」ではなく「負債」

土地の価格や見た目に惑わされず、「本当に家が建てられる土地か」を確認することが、最初で最大の防衛策です。

安いには理由がある。住宅が建っているからといって、次も建てられるとは限らない。 Eさんのように「買う前に気づく」ことができれば、数百万円単位の損失を防ぐことができます。

「その土地、本当に家が建ちますか?」 ――この一言を心に留めて土地選びに臨むことが、後悔しない家づくりへの第一歩なのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。