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被害者「あおり運転の証拠だ!拡散希望」ドラレコ映像を"モザイクなしで無断アップ"した人の末路

  • 2025.11.29
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出典元:photoAC

「この危険な運転手を晒してやりたい」「SNSで拡散して、みんなに注意喚起しよう」

悪質なあおり運転の被害に遭ったとき、ドライブレコーダーに記録された映像を見て、こう思ったことはありませんか?

実際、X(旧Twitter)やYouTubeには、「あおり運転の証拠だ!」「拡散希望」といった文言とともに、ドラレコ映像がアップロードされているのを目にすることがあります。

しかし、ドライブレコーダーに記録された映像は、相手の車やナンバープレート、運転手の顔など、個人を特定できる情報が含まれています。これを無断で公開することは、思わぬ法的トラブルを招く可能性があるのです。

そこで今回は、ドラレコ映像のSNS投稿に潜む危険性と、正しい対処法について、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

ドラレコ映像のSNS投稿…どんな法的リスクがある?

---悪質な「あおり運転」の被害に遭い、そのドラレコ映像(相手の車、ナンバープレート、運転手の顔が映っている)を、X(旧Twitter)やYouTubeに「証拠だ!」「拡散希望」として無断でアップロードした場合、この「ネット晒し」行為には、具体的にどのような法的リスクがありますか?

寺林弁護士:

以下のような映像をSNSにアップする行為には、複数の法的リスクが存在します。

1. 名誉毀損(民法・刑法)

「悪質な運転」「危険人物」などの文言とともに映像を公開すると、相手の社会的評価を低下させる可能性があり、名誉毀損が成立することがあります。実際に損害賠償が命じられた判例も報告されています。

2. プライバシー侵害

ナンバープレートや顔など、個人を特定できる情報は「プライバシー権」の対象です。本人の同意なく公開すれば、人格的利益の侵害として違法となる可能性があります。

3. 肖像権侵害

顔が明瞭に映っている場合、肖像権の侵害として訴えられるリスクがあります。

4. 個人情報保護法違反

映像に含まれる情報が「個人情報」に該当する場合、第三者提供に該当し、法的規制の対象となる可能性があります。

---もし、相手の「ナンバープレート」や「顔」にモザイクをかけて投稿した場合、法的リスクは軽減されますか?それとも「車種」や「日時」だけで個人が特定され、違法となる可能性はありますか?

寺林弁護士:

顔やナンバーにモザイクをかけることで、一定のリスク軽減は可能です。ただし、以下のような情報が残っていると、個人が特定される可能性があります。

・車種・色・日時・場所 ・音声・会話内容 ・投稿文の内容

「あおり運転の証拠」などと書くことにより名誉毀損になる可能性があります。

つまり、モザイク処理をしたからといって安心はできないということです。車種や色、場所などの情報を組み合わせれば、周辺の人には誰の車か特定できてしまうことも多いのです。

「でも、事実だから問題ないでしょ?」は通用しない

ここで多くの人が疑問に思うのが、「実際にあおり運転をされたのは事実なのに、それでも訴えられるの?」という点です。

---「でも、あおり運転をされたのは"事実"だ」と主張しても、名誉毀損などで訴えられてしまうのでしょうか?

寺林弁護士:

「あおり運転の被害に遭ったのは事実だ」と主張しても、名誉毀損で訴えられる可能性は十分にあります。事実であっても、公開の仕方によっては違法と判断されることがあります。

日本の名誉毀損法理では、以下のような考え方が採用されています。

事実の摘示による名誉毀損は、真実でも違法となる可能性がある

たとえ内容が真実でも、公共性・公益性・真実性の三要件を満たさなければ違法とされることがあります。SNSでの晒し行為は、公益目的ではなく「私的な怒りの発露」とみなされることが多く、違法性が阻却されにくいです。

公開方法が過剰・不適切であれば違法性が認められる

顔やナンバーを晒す、拡散を呼びかける、侮辱的な文言を添えるなどの行為は、社会的評価を不当に低下させると判断されやすいです。

「事実でも名誉毀損が成立した」判例は多数存在します

例えば、交通トラブルの相手をSNSで晒した投稿が名誉毀損と認定され、損害賠償が命じられたケースなどがあります。裁判所は「真実であっても、公開の必要性や手段が適切でなければ違法」と判断します。

これは非常に重要なポイントです。「事実だから大丈夫」という認識は、大きな誤解なのです。

「ネット晒し」の最悪の末路と、正しい対処法

では、実際にドラレコ映像をSNSに投稿してしまった人には、どんな「末路」が待っているのでしょうか?

---このような「ネット晒し」を行った人の「最悪の末路(=逆に訴えられた場合の結末)」と、ドラレコ映像の「法的に"正しい"使い方(=警察への提出など)」を教えてください。

寺林弁護士:

SNSでドラレコ映像を無断投稿した人が、加害者ではなく投稿者自身が訴えられるケースは実際に存在します。以下のようなリスクが現実化します。

1. 損害賠償請求(民事)

名誉毀損やプライバシー侵害が認定されると、数十万円〜百万円規模の慰謝料や損害賠償が命じられる可能性があります。裁判で、ナンバーや顔を晒した投稿に対し「社会的評価を低下させた」として賠償命令が出た例もあります。

2. 刑事告訴される可能性

名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)で告訴されると、罰金刑や拘留刑の対象となることがあります。特に「拡散希望」「危険人物」などの文言があると、悪意性が強く評価されやすいです。

3. 投稿の削除命令・アカウント凍結

プラットフォームからの削除命令や、アカウント停止措置が取られることがあります。YouTubeやX(旧Twitter)は、プライバシー侵害やハラスメントに厳しい対応を取っています。

4. 社会的信用の失墜

訴訟や告訴が報道されると、職場や地域社会での信用を失うリスクがあります。弁護士や会社員など、職業によっては懲戒や解雇につながる可能性もあります。

つまり、「被害者のはず」だった自分が、逆に「加害者」として法的責任を問われることになるのです。

ドラレコ映像の「法的に正しい使い方」

---では、あおり運転の被害に遭ったとき、ドラレコ映像はどう使うべきなのでしょうか?

寺林弁護士:

被害者として正当な対応を取るためには、以下のような方法が推奨されます。

1. 警察への提出

あおり運転は「道路交通法違反」や「危険運転致傷罪」に該当する可能性があるため、証拠として警察に提出するのが最も適切です。映像はSDカードやUSBで持参し、交通課や最寄りの警察署で相談できます。

2. 弁護士への相談

民事訴訟(損害賠償請求)や刑事告訴を検討する場合、法的助言を受けて対応するのが安全です。弁護士が代理人として交渉・訴訟を行うことで、感情的な対立を避けられます。

3. SNS投稿を控える/匿名化する

どうしても注意喚起したい場合は、ナンバー・顔・車種・日時などを完全に匿名化し、個人が特定されないようにする必要があります。それでもリスクはゼロではないため、投稿前に法的助言を受けることが望ましいです。

怒りに任せた投稿が、人生を狂わせることも

あおり運転の被害に遭えば、怒りや恐怖で冷静さを失うのは当然です。「この危険な運転手を許せない」という気持ちから、すぐにでもSNSに投稿したくなるかもしれません。

しかし、その衝動的な行動が、あなた自身の人生を狂わせる可能性があるのです。

ドラレコ映像を手にしたら、やるべきこと

  1. まず深呼吸して冷静になる
  2. SNSには絶対に投稿しない
  3. すぐに警察に相談する(110番または最寄りの警察署)
  4. 映像データを保存する(上書きされないように注意)
  5. 必要に応じて弁護士に相談する

絶対にやってはいけないこと

  • 顔やナンバーが映ったままSNSに投稿
  • 「拡散希望」「危険人物」などの文言を添える
  • 感情的なコメントとともに映像をアップ
  • モザイクをかけても個人が特定できる情報を残す

ドライブレコーダーは、あなたを守るための「証拠」です。しかし、その使い方を間違えれば、逆にあなたを加害者にしてしまう「凶器」にもなり得ます。

悪質な運転手を野放しにしたくない気持ちはわかります。しかし、正しい手続きを踏んで、法的に適切な方法で対処することが、結果的に最も効果的な解決につながるのです。

怒りに任せた投稿が、取り返しのつかない後悔を生む前に、まずは警察や弁護士に相談してください。


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