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朝8時ごろ、列車遅延で大量の遅延証明書…静かすぎる改札に「あれ?」→元駅員の勘違いに「脱力しました」

  • 2025.11.29
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出典:photoAC(写真はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

日本の列車は時間に正確だとされていますが、人身事故や台風以外にも、風で飛んだビニールやお客様対応など、様々な理由で日常的に遅れが発生します。

特にラッシュ時間帯の遅延は駅員にとっても大変でした。改札口にできる行列をさばく中、欠かせないのが「遅延証明書」の発行です。

遅延があった日のとある朝、遅延証明書を大量に書き溜めて準備万端で列車の到着を待ちましたが、ホームで待っていたのは、私の予想を裏切る光景でした。

列車は意外とよく止まる

日本の列車は世界一時間に正確だという話を聞いた方も多いと思います。確かに乗務員の怠慢で列車が遅れたというケースは私は知りませんが、様々な理由で列車は日常的に遅れたり、運転を見合わせたりしています。

人身事故や台風はイメージしやすいと思いますが、ほかにも線路の上の電線に風で飛ばされたビニールが引っかかったり、列車内で体調不良になったお客さまの対応を行ったりといったことがありました。

当時、私が働いていた鉄道会社では、定時運行よりも安全運転を優先していました。

ラッシュ時間帯、指令から全体放送

列車が遅れたり、運転を見合わせたりしたときは、指令所から駅に全体放送があります。その放送を聞いて駅員は構内放送などで案内するのですが、退勤時刻が迫っているときに隣駅で信号機の故障があったなどと放送されると、

「なんでよりによって今なんだ…」

とタイミングの悪さを嘆くこともありました。

間が悪いと感じる瞬間はもうひとつあります。朝や夕方など、お客さまが多く急いでいる方が特に多い時間帯は、3分でも遅れると大変です。

列車が遅れると、改札口には行列ができます。次の列車はいつ来るのかという問い合わせや、「なぜ列車が遅れるんだ」といったお怒りの声も寄せられます。駅員はそれらを伺いながら指令と打ち合わせをしたり、放送案内を行ったり、電光掲示板の表示を変更したりしています。それらに加えて行うのが、遅延証明書の発行です。

以前の反省を踏まえて遅延証明書を大量準備

ある日、朝8時ごろに指令からの放送が聞こえてきました。

「〇〇駅付近で踏切の安全確認を行ったため、△△線の上りは最大10分程度の遅れが発生します」

このときは出勤してすぐのタイミングで、普段なら通勤・通学ラッシュの時間帯です。

ここで私は、遅延証明書をあらかじめ制作しておく判断をしました。というのも、以前にも似た時間帯に列車の遅れが発生し、遅延証明書の発行に追われた経験があったためです。

踏切確認の影響を受けた列車のひとつ前までは、定時にこの駅を発車できそうでした。これまでの経験から、◯◯駅から私のいる駅までに大幅な遅れの改善は望めず、また大幅に延びることもないだろうと踏み、10分遅れの遅延証明書を大量に書いて列車の到着を待ちました。

遅延証明書には駅名と日付の入った印鑑を押すスペースがあるのですが、悪用防止のため、印鑑はお客さまに渡す直前まで押せません。果たして、列車は定刻より8分ほど遅れて到着しました。

「2分程度なら許容範囲。よし、これで遅延証明書の行列ができても怖くないぞ!」

どことなくゆったりのホーム

しかし、私の予想は外れました。

「あ、あれ?」

何十枚と書いておいた遅延証明書を誰も受け取ろうとせず、そのまま静かに改札を通過していきます。

また、普段より学生さんの数が少なく感じました。当時勤めていた駅の周辺にはいくつかの高校があり、列車が遅れれば多くの学生さんが遅延証明書を求めて改札口に並びます。あまりに並ぶので「周辺の高校には連絡しておくから、遅延証明書は受け取らなくてもよい」と案内することさえあるくらいでした。

それが、この日に限って極端に少ないのです。高校生の年代と思われる方はいました。しかし、いつもより少し乗車時間が遅い列車に乗っていて、服装も制服ではなく、サッカー部やソフトテニス部などと書かれたジャージ姿が目立ちました。今にして思えば、彼らは部活動のために登校していたのです。

そういえば今日は…

やがて、カレンダーを見て気づきました。

「そうだ、今日は土曜日だった…」

平日か休日かの確認をすっかり忘れていました。土曜日なら、遅延証明書を受け取ろうとするお客さまが少ないことにも納得がいきます。

朝から列車に乗って、遊びに出かけている人が多いはずです。仕事と違って遅延証明書を受け取ったところで、どうにもなりません。わかってしまえば実に単純な理由に、思わず脱力してしまいました。

「張り切って書いたのに、残念ですね?」

と後輩に言われても、苦笑いするしかありません。

遅延はそれから30分もすればおおむね回復し、改札口には大量の使えない遅延証明書が余ってしまいました。日付印を押していないので内容を訂正すれば使えないこともありませんが、次にいつ使うかわからない書きかけの遅延証明書を置いておくような場所もありません。結局、手頃な大きさに切ってメモ用紙にすることになりました。

消えた曜日感覚

私が働いていた鉄道会社では、交代制の勤務で、決まった曜日で休みが取れるわけではありませんでした。平日が休みだったり、土日や祝日でも出勤したりと週によってバラバラです。学生の頃の月曜日に対する憂鬱な気持ちは薄れましたが、金曜日の夜を迎えた解放感もまた忘れてしまいました。

そのような形式なので、テレビ番組やドラマも地上波の本放送を毎週見られるとは限りません。そのため、

「この番組を見る日はこの曜日!」

という感覚もありません。

鉄道会社や路線によっては平日と土休日で大幅に時刻表が異なるところもあるかと思いますが、この駅では早朝に走る1本の列車の両数が異なるのみで、ほかは同じでした。これも私が曜日感覚を失っていた原因のひとつかもしれません。

遅延証明書は到着駅で

この遅延証明書ですが、私が働いていた鉄道会社では、列車に乗る前に発行することは基本的にできませんでした。

「遅れている列車を待つ今のうちに遅延証明書を受け取って、目的地に着いたら1秒でも早く駅の出口まで駆け抜けたい!」

と思う事かもしれませんが、そういかない理由があるのです。

遅延証明書に書く遅れの時間は、その列車が目的地に着いたときの時間で決まります。出発時に遅れがあっても、そのあと時刻表通りの運転に戻せる場合があるためです。そのため、乗車前のお客さまから遅延証明書を求められても、

「到着駅で受け取ってください」

と案内していました。

また、最近はウェブ上で遅延証明書を発行するサービスも一部鉄道会社で始まりました。こちらはそれぞれの列車についての遅れは表示せず、区間・時間帯ごとの最大の遅れを表示します。

利用する鉄道会社のウェブサイトを確認し、遅延証明書を表示できそうなら、そちらも使ってみてくださいね。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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