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狭小新築を購入も「狭さよりつらかったのは…」30代夫婦を襲った“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.12.2
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「狭小住宅でも、設計を工夫すれば快適に暮らせると思っていました」

そう語ったのは、都内の駅近エリアに延床25坪の新築戸建てを建てたKさん(30代・夫婦+子ども1人)。

土地価格が高い東京では、10〜15坪の狭小地は珍しくありません。Kさんも「この立地で家が持てるなら」と前向きに購入を決めました。

しかし、入居して半年後。Kさんはこうこぼします。

「狭いのは覚悟していました。でも“ここまで暮らしにくい”とは思いませんでした…」

ここでは、Kさんが直面した“狭小住宅の落とし穴”とともに、一級建築士の視点から問題点を解説していきます。

「図面では広く見えたのに…」

Kさんが購入を決断した理由のひとつは、建築会社がつくったCGパースやモデルルームでした。

広々と見えるLDK、コンパクトながら効率的な間取り、明るい3階寝室——どれも魅力的に感じたといいます。

しかし実際に住んでみると、印象は大きく変わりました。

「LDKは“17帖”ですが、ダイニングセットとソファを置いたら動けるスペースがほとんどなくて…。子どもが走り回れる感じではありません」

そのうえ、冷蔵庫や収納棚を置くと視界が塞がれ、図面で感じた“抜け感”は完全に消えてしまいました。

これは狭小住宅で起きがちな典型的なギャップです。

なぜ狭小住宅は“暮らしにくくなりがち”なのか?

都内の狭小地には、必ずといっていいほど制約がついて回ります。

隣家と極端に近く、窓が自由につくれない

設計上「開けたい場所に窓をつくれない」ことが多くあります。Kさんの住宅も、2階リビングは隣家と70cmほどしか離れておらず、光が届きにくい構造でした。

●収納が少なすぎて、常に散らかる

「可動棚で工夫する予定でしたが、そもそも収納を作るスペース自体がなくて…。掃除機の置き場も決まらず、生活感丸出しになってしまいました」

狭小住宅では、「収納は後で工夫すれば大丈夫」と考える人が多いですが、実際には収納不足が日々のストレスにつながります。

●階段が急になりやすい

スペースがないため、階段の蹴上げが高くなり、子どもが怖がって上り下りしたがらない事例も少なくありません。

●配管・換気・音の問題が家じゅうに響く

縦方向の空間が狭いため、

  • キッチンの換気音
  • トイレの排水音
  • 洗濯機の振動
    などが家じゅうに伝わりやすくなります。

Kさんも、「深夜の排水音が寝室まで響く」「子どもが階段の音で起きる」などの悩みを抱えていました。

一級建築士が教える“狭小住宅の後悔を防ぐポイント”

狭小住宅が悪いというわけではありません。ただし、暮らしやすさを確保するには、次の点を押さえる必要があります。

●収納は「床面積の10〜15%」を確保

収納を削ると必ず散らかります。狭小住宅ほど収納が命です。

●階段はできるだけ緩く、安全性を優先

設計段階で階段の勾配を最優先で検討すべきです。

●ムリに3LDKにしない

「部屋数の多さ」よりも「広さの質」が暮らしやすさを左右します。

●採光は“横窓”より“上から”

天窓は狭小住宅との相性が非常に良い選択です。

「狭さよりつらかったのは“暮らしにくさ”でした」

Kさんは最後に、こう話してくれました。

「狭いのは覚悟していたんです。でも、収納が足りない、音が響く、熱い、暗い……。暮らしてみて初めて“狭さ以上の問題”があることに気づきました」

「駅近」「都内に戸建て」「新築」、魅力的な言葉の裏には、狭小住宅ならではの落とし穴もあります。

狭小住宅を検討している人こそ、“狭さに慣れれば大丈夫”ではなく、“暮らしやすさをどう確保するか”を考えることが重要です。

設計の工夫しだいで快適にできる家も多いですが、見た目や価格だけで決めてしまうと、Kさんのような後悔を招くことがあります。



ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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