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新築を購入も「充電できない…」 “雑誌のような家”に憧れた30代夫婦の末路【一級建築士は見た】

  • 2025.11.23
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「生活感のない、雑誌のような家に憧れていました」

Aさん(30代・夫婦+子ども1人)は、初めての注文住宅づくりで理想の空間を思い描いていました。

ナチュラルでミニマル、白を基調としたLDK。家具を少なくし、壁にはできるだけ何もないすっきりとしたデザイン――。

設計打ち合わせでAさんは、ふとこう提案しました。
「このあたり、見た目が気になるのでコンセントは減らせますか?」

設計士も「できますよ、必要最低限でも大丈夫です」と答え、最終的に通常より6カ所少ない配置に。
Aさんは「そのぶん壁がきれいに見える」と満足していました。

しかし、入居して数日。Aさんはさっそく“想定外の不便さ”に直面します。

デザイン優先の“ツケ”

「スマホを充電しようと思っても、差す場所がありません」

リビングの中央に置いたソファ周辺にはコンセントがなく、延長コードを引き回す羽目に。

テレビ裏は配線が集中してタップが溢れ、掃除機を使うたびに差し替えが必要。

「子どもが寝てからリビングでパソコンを開いても、充電できない。どこもコンセントの挿し口が埋まっています」

寝室ではさらに深刻でした。

ベッドの配置を変えたところ、コンセントが遠くなり、スマホの充電ケーブルが届かない。

「夜中にスマホのアラームを止めるために、ベッドから立ち上がることになるなんて思いませんでした」

生活を始めて気づいたのは、“見た目の美しさ”より“暮らしの実用性”のほうがずっと大事だということ。

Aさんの家は、デザインを優先した結果、延長コードとタップで埋め尽くされた「コードの見える家」になってしまいました。

コンセントは多めが基本

コンセント計画の失敗は非常に多いといいます。

「打ち合わせの段階では、家具の位置やデザインの話ばかりが中心になります。でも実際に暮らすと、掃除機、加湿器、パソコン、スマホ、調理家電……と、“一時的に使う電源”が想像以上に多い」

しかも、最近ではスマートフォンのUSB充電やコードレス掃除機など、電源を必要とする場面が年々増えています。
「昔の“必要最低限”のコンセント数では、現代の生活には足りません」

加えて、見落とされがちなのが位置の問題。

「数があっても、場所が悪ければ意味がありません。ダイニングの足元、カウンター下、玄関の隅、寝室のベッド脇――。“どこで何を使うか”を想定して配置することが大切です」

後悔しないための2つの工夫

では、どうすれば“見た目”と“使い勝手”を両立できるのでしょうか。

ポイントは次の2つです。

  1. 「隠す」設計を取り入れる
    家具の裏や収納内部、カウンター下など“見えない場所”に設置すれば、見た目を損なわずに数を確保できます。
  2. 将来の家電増加を見越して設置する
    子どもの成長、在宅ワーク、家電の追加などを想定して、現時点より“2割多め”に見積もるのが安全です。

「おしゃれな壁より、毎日の利便性」

「見た目を優先したはずが、延長コードが目立つ家になってしまいました」

Aさんは今、コードを隠すための造作家具を追加する予定です。

結果的に、削ったコンセント代よりもずっと高い出費になってしまいました。

「打ち合わせのとき、実際の生活をもっとイメージしておけばよかった。見た目の“スッキリ”より、使いやすさの“ストレスフリー”のほうが大事だって、住んでみて気づきました」

“美しさ”は、暮らしやすさの上に成り立つ

コンセントは、暮らしの中で最も使う“住宅設備”のひとつです。

しかし、設計段階では意外と軽視されがちです。

家の美しさは、生活の便利さがあってこそ成り立つもの。

Aさんの後悔は、多くの施主が見落としがちな“暮らしのリアル”を教えてくれます。

デザインも大切。でも、使いやすさを削った美しさは、やがて不便に変わる。

それが、Aさんの新居が残した大きな教訓でした。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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