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マイホームを購入も「雨が降るたび家の前が池」市役所もお手上げ…30代男性を襲った“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.11.12
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

Kさん(30代・夫婦+子ども1人)は、郊外に念願のマイホームを購入しました。

不動産会社からは「前の道は4メートルあるので、車の出入りも問題ありません」と説明を受け、「ちゃんと道路に面している土地なら安心」と思い、迷わず契約を決めたといいます。

しかし、入居して初めての梅雨を迎えたある日、Kさんは思いもよらない光景を目にしました。

家の前がまるで池に

「朝起きたら、家の前がまるで池のようになっていました。庭にも水が入り込み、靴で道路まで行けないほどで……。」

原因は、道路に水を流す側溝がなかったことでした。

しかも、その道路は行政が整備・管理する“公道”ではなく、住民の所有する“私道”だったのです。

つまり、雨が降っても道路の排水を行政が整備してくれるわけではなく、住民同士で管理しなければならない道路だったのです。

「行政が動いてくれると思っていました」

Kさんはすぐに市役所に相談しました。
しかし、返ってきた答えは想像もしないものでした。

「その道路は私有地のため、行政では側溝の設置や排水整備は行えません」

つまり、道路の整備・排水経路の確保は住民同士の責任ということでした。

実際、Kさんの前面道路には排水を行うための側溝もなく、雨水の逃げ場が一切ない状態。

周囲の土地より低い位置にあるKさん宅の前では、雨が降るたびに水が滞留し、短時間の大雨でも大きな水たまりができるようになってしまいました。

「こんなことになるなんて思いもしませんでした。道路がある=整備されていると思っていました。」

私道はトラブルの温床

私道では、排水経路の整備も住民の任意。

「行政の事前協議(建築する前の自治体協議)では、公道に面した敷地であれば排水計画について協議や指導が行われます。一方で、私道の場合は民事不介入の原則があるため、行政が関与できず、排水整備の協議が行われないケースが多いのが実情です。仮に行政から排水に関する指導があったとしても、法的な拘束力はなく、あくまで任意の対応にとどまります。」

実際、Kさんの敷地は道路よりもわずかに低く、周囲から流れた雨水が家の前で溜まってしまう構造でした。

土地を購入する際に“勾配”や“側溝の有無”まで確認する人は少なく、その点がトラブルの温床になっています。

私道に接する土地を購入する際は、「道路がある=安心」ではないと心得ることが大切です。

近隣住民と協力して改善を試みるも…

水たまりの被害が続き、Kさんは近隣住民と協力して改善を試みました。
しかし、私道の所有者が複数に分かれており、誰が費用を負担するかで話し合いは平行線。
「自分の敷地じゃない部分にはお金を出したくない」という声も多く、工事の合意には至りませんでした。

再び市役所に相談しても、「私道は住民の管理範囲なので、行政として介入できません」との回答。

「公道と私道ではこんなに違うなんて知りませんでした…」

“水の流れ”を確認する

購入前に次の点を必ず確認しておきましょう。

  • 前面道路が公道か私道か(登記簿で確認)
  • 道路に側溝や排水桝があるか
  • 道路勾配の方向と、雨水の流れ先
  • 私道の所有者・持分割合・維持管理方法

「建てる前の確認」は、建物だけでなく、“道路と水の行方”の確認も必要です。

“公道”と“私道”は全く別物

Kさんの事例は、“私道”の落とし穴を浮き彫りにしています。
建物の耐震や断熱には関心を持っても、道路や排水の確認は後回しになりがちです。

しかし、雨水はわずかな勾配の違いでも流れを変え、排水経路がないだけで「暮らせない土地」になることもあります。

「安い土地には理由がある」と言われますが、“水の逃げ道がない土地”は、最も高くつく失敗かもしれません。

“私道”の裏には、“管理されないリスク”が潜んでいる――。

Kさんの後悔は、家を建てる前に「土地の水の行き先」を確かめる大切さを教えてくれます。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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