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「新宿から成田空港まで乗り換えなし」も可能だった?50年前の“幻の鉄道計画”が失敗に終わったワケ

  • 2026.3.9
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。フリーライターの前林広樹です。

2026年2月13日に発表された京成成田スカイアクセス線新鎌ヶ谷〜印旛日本医大駅間の複々線化計画。普通列車との分離運転により、現在最速で36分かかるスカイライナーの時間短縮につながることから期待を集めています。

2028年登場予定の押上からの新型特急もこの急行線を利用することが計画されており、また成田空港側でも成田湯川駅~成田空港駅の複線化による混雑緩和なども想定されます。

同時期には成田空港の第三滑走路運用開始などの拡張も控えており、それに伴い成田空港アクセスも充実を見せています。

また通過となる千葉ニュータウンも近年では北総線の値下げやデータセンターの誘致などで需要が増えており、人口増加を見せています。

複々線化が実現すれば北総線の普通列車も増加するため、通勤・通学の需要増も期待されます。

高度成長期にもあった千葉ニュータウン付近の複々線化・北千葉線構想とは?

ところで成田スカイアクセス線の複々線化計画、実は1970年代にも似たようなルートでの構想がありました。それが千葉県営鉄道北千葉線です。

この構想では、市川市の本八幡駅から現在の印旛日本医大駅周辺にあたる松虫地区へ、1978年までの開業を目指していました。本八幡駅からは同駅を終点とする都営新宿線への直通を計画し、さらに東側の成田へも1981年までに延伸する構想でした。

この路線、新鎌ヶ谷駅から松虫地区までのルートは、京成成田スカイアクセス線と同じルートを並走することが想定されていました。

もし北千葉線が開通すれば、新宿・市ヶ谷・秋葉原(岩本町)といった東京の主要部から千葉ニュータウン各地が直結するという非常に利便性が高い路線ができる計画でした。

また東側についても、もし成田空港までの建設が可能であれば京成スカイアクセス線と同じ経路となり、成田空港への有力なアクセス手段になる可能性もありました。

このため当時の友納千葉県知事肝煎りのプロジェクトとなり、千葉県は1973年10月4日に地方鉄道敷設免許を取得するや否や、1974年4月に鉄道局を発足させ、わずか半年後の同年10月には鉄道局に用地課を立ち上げて用地買収に乗り出しました。

難航する建設と構想の断念

しかし、1970年代となるとオイルショックや1ドル360円という固定相場制の崩壊により日本の高度経済成長は終わり、千葉県の税収入は伸び悩みました。

加えて現地の住民からの反対運動により用地買収も難航し、先行して開業する予定だった小室〜千葉ニュータウン中央駅間の用地取得率は、1974年時点で計画の約半分に留まっていました。

そうした中、北千葉線の図面が大手ゼネコンに極秘に渡ったのではないかという「北千葉線図面漏洩疑惑」が発覚します。

北千葉線の計画が進む前から大手建設会社が駅建設予定地を購入していたことが判明し、千葉県は大きな批判を受けました。

この事件により、反対運動はさらに過熱。用地買収も建設も予定通り進まなくなってしまいます。

これと同時に、千葉ニュータウンの計画自体もオイルショックなどの影響を受けて縮小を余儀なくされました。

千葉ニュータウンの事業の遅延も影響し、1978年、北千葉線の計画は事業が中断することになってしまいました。

その後も千葉県を中心に事業再開に向けた動きはあったものの、2013年、周辺自治体にて本八幡と新鎌ケ谷駅を結ぶ鉄道路線の整備を検討している「東京10号線延伸新線促進検討委員会」が解散。

北千葉線は完全に幻の鉄道になってしまいました。

結論

ここからは筆者の私見にはなりますが、北千葉線は時代に翻弄されもったいなかったプロジェクトだったといえるでしょう。

確かに千葉ニュータウンは1960年代の計画当初は、現在の人口の3倍以上である34万人を超える人口を想定しており、北総線だけでは1日10万人を想定する通勤客が移動するのは難しいという側面から北千葉線も計画された経緯があります。

千葉ニュータウン計画が縮小された以上、廃止されるのは仕方なかったかもしれません。ただ、北千葉線の沿線になるはずだった場所では、当時とは異なる需要も生まれています。

成田空港は羽田に次ぐ東京第二の空港として定着し、開発が遅れた千葉ニュータウンも北総線の値下げによる運賃デメリットの解消や、データセンターや物流拠点の誘致による進出企業の増加などで人口が増えはじめています。

北千葉線の計画が再び動きはじめれば、現在の北総線・京成線・都営浅草線のルートでは直通で行けない新宿や秋葉原といった場所へ、乗り換えなしで行けるようになります。

新宿直結となると千葉ニュータウンのアクセスの選択肢が増え、その発展はさらに進むことが予想されます。

特に成田空港〜新宿間は、現在のJR・成田エクスプレスに比べて、より直線距離に近いルートで結ばれるため、空港利用者にとってメリットが大きくなります。

ただ建設が問題なく行われても、残念ながら北千葉線と直結することが想定される都営新宿線や京王線の軌間(1,372mm)と、北総線・京成線の軌間(1,435mm)は異なるため、列車の直通が難しいという問題があります。

この問題は、かつてJRで開発が検討されたフリーゲージトレインによって解消できる可能性があります。

フリーゲージトレインの開発は、最高時速300kmを超える新幹線と、曲線が多い在来線という大きな環境差がある日本の鉄道事情から、JRにおいては実用化が断念されました。

しかし北千葉線で導入する場合、地下鉄車両の乗り入れ規格という問題はあるものの、最高速度は時速160km前後であり、かつてJRが目指した新幹線と在来線の直通に比べればハードルは低めだと考えます。

もし京成スカイアクセス線の複々線化が完成し、フリーゲージトレインによる都営新宿線方面〜成田空港への直結が可能となれば、その時北千葉線の計画が再浮上するかもしれません。


参考:
・京成電鉄株式会社「成田空港アクセスの更なる強化に取り組みます 新型有料特急の車両デザインイメージの一部公開と成田スカイアクセス新線整備計画の検討着手について」2026年2月13日
・北総鉄道株式会社「北総鉄道50年史
・千葉県総合企画部交通計画課、市川市道路交通部交通計画課、鎌ケ谷市都市建設部都市計画課「「東京10号線延伸新線促進検討委員会」の解散について」2013年9月3日


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