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「現金が合わない!?」新人が起こした“致命的ミス”で奔走…→元銀行員が語る『現金回収』のウラ側

  • 2025.11.10
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出典:photoAC(写真はイメージです)

銀行では、現金が合わなくなるミスを「現金事故」と呼んでいます。

たとえば、窓口で1万円札10枚を預かり、10万円で入金処理するところ、1枚だけ5,000円札が混じっていると、入金額は9万5,000円になりますよね。

基本的な動作をしていればあり得ないミスですし、現在は窓口業務の一部がシステム化されたため、現金事故は少なくなりました。

しかし、手作業がメインだった時代には、繁忙期などに現金事故が発生するケースがありました。

少し古い話ですが、今でも記憶に残っている「現金事故のドタバタ劇」をご紹介します。

ミスは慣れた頃にやってくる!Sさんが引き起こした現金事故

ある日、預金口座を解約するため、当支店に大学生のKさま(男性)が来店されました。

対応したのはSさんで、入行1年目の女性行員です。

Sさんは通帳を預かり、解約手続きをして残金約12万円をKさまにお渡ししました。

残金を見たKさまは「あれ?」というような表情をされたようですが、そのまま退店しています。

そして、15時で窓口を締め、日計(当日分の決算)を合わせていたところ、約11万円の現金不足が発覚しました。

事務処理の流れを追っていくと、原因はSさんのようです。

口座解約の際には最終残高を確認するのですが、その日は特に忙しく、Sさんはもともと記帳されていた残高で解約手続きを進めてしまいました。

通帳には約12万円の残高があるものの、最終記帳日は1カ月前です。

その後、キャッシュカードでの出金や、電話料金などの引き落としがあったため、実際の最終残高は1万円程度でした。

全額回収に向けて社用車で出発

Kさまの口座情報を調べると、登録されている電話番号は固定電話で、住所は隣町です。

すぐに電話連絡しましたが誰も出ないため、私とSさんが回収担当となり、Kさまの自宅へ急行しました。

Kさまはご両親の家に同居されており、時刻も17時を過ぎていたので、「そろそろ帰宅される頃かも」と思いましたが、現地に着くと留守でした。

手ぶらでは帰れないため、近くのコインパーキングに社用車を停め、Kさまやご家族の帰宅を待つことにしました。

しばらくするとKさまのお母さまが帰宅されたので、本人がいつ頃帰宅されるか尋ねたところ…

「今の時間はバイトに行ってますよ」

アルバイト先は5キロほど離れたファミリーレストランでした。

まず電話をかけましたが、シフトに入る時間はもう少し後らしく、まだ出勤されていません。

ファミリーレストランまで移動し、駐車場で待機しているとKさまが出勤されたので、今回の経緯を説明しました。

Kさまは「変だな」と思いつつも、「もしかしたら前のバイト先が退職金を払ってくれたのかも」と考え、そのまま受け取っていたようです。

お金は快く返してもらえたので、これで一安心。

私とSさんは急いで支店に戻りました。

現金事故は後処理が大変!

銀行は「お金が合うまで帰れないんでしょ?」といわれますが、現金を扱う業種はどこも一緒です。

原因の特定にそれほど時間はかかりませんが、その日のうちに過不足を解消できなければ、支店や担当者の評価がかなり下がります。

会計処理も通常とは異なるので、現金事故が判明すると支店全体が異様な空気に包まれます。

今回はすぐに現金を回収できましたが、支店を出たKさまがそのまま旅行に出かけてしまうなど、最悪の事態も想定しておかなければなりません。

「忙しいときこそ基本動作を忠実に」ということを改めて痛感した出来事でした。



ライター:マイルドバンカー

銀行の本部・本店・支店を経験し、早期リタイヤで個人事業主となりました。各銀行には独自の文化や風土があるので、「なぜこんなことをやっているの?」など、違和感を覚えやすい業務が少なくありません。今後は元銀行員の立場として、「だからそうなっているのか!」とご納得いただける情報を発信します。


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