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「守っているつもりだった」主任の“えこひいき”でチーム崩壊…→現役看護師が語る“優しさが裏目に出た”瞬間

  • 2025.11.3
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、現役看護師ライターのこてゆきです。

精神科の現場で働いていると、人の心の微妙な変化を読み取る力が自然と磨かれます。

けれど、患者さんよりも難しいのは、実は同僚や上司との関わりかもしれません。

今回は、私が経験した「主任看護師によるえこひいき」についてお話しします。

優しさと公平さのバランスを崩すと、チームがどう壊れていくのか。そしてそこから何を学んだのかをお伝えします。

「あの子には甘いのに…」

その違和感は、ある日ふと始まりました。

ある日のカンファレンス。

新人の報告に対して主任Aさんは柔らかい声で言いました。

「大丈夫、誰にでもミスはあるよ。次につなげようね」

しかし、次の順番で話した別のスタッフが同じようにミスを報告した瞬間、主任のトーンは変わりました。

「また?何回言えばわかるの?」

会議室の空気が一瞬で冷えたのを覚えています。私も思わず下を向きました。あからさまな「温度差」があったのです。

その日から、スタッフの間に見えない境界線が引かれました。

「主任に気に入られてる人」と「そうでない人」。

報告をしても聞き流される人がいる一方で、主任のお気に入りには「いつもありがとう」「あなたに任せてよかった」と笑顔。新人を守るつもりの「優しさ」が、いつしか他のスタッフの「孤独」を生んでいました。

連携ミスが増え、カンファレンスには沈黙が流れ、チームの空気は次第に重くなっていきました。報告や申し送りの声が小さくなり、誰も主任に意見できなくなっていったのです。

「どうせ言っても聞いてもらえないから」

そんな諦めが漂う中で、連携ミスが目立つようになりました。

患者さんの処置時間が重なり、ナースコール対応が遅れる。記録の確認漏れが増える。

主任の「過剰な介入」によって、新人の担当患者だけケアが手厚くなる。

それを見た他の患者から「私の担当もあの人がいい」と言われたとき、誰も何も返せませんでした。不公平感が、病棟全体を静かに蝕んでいったのです。

誰も主任に言えなかった

主任は決して悪意がある人ではありません。むしろ面倒見がよく、責任感も強い人でした。だからこそ、誰も何も言えなかったのです。

けれど、限界は突然やってきました。優遇されていた新人が、異動を希望したのです。

「主任がいつも私のことを守ってくれているのは分かっていました。でも、そのせいで他の人と距離ができてしまって…。もうこの雰囲気の中では働けません」

その言葉に、主任は初めて静かにうつむきました。

「守るつもりが、傷つけていたのかもしれない」

後日、師長面談の後に主任が語った言葉が印象的でした。

「私は守るつもりだった。でも、守ることで他の誰かを遠ざけてしまっていたのかもしれません」

その言葉に、スタッフの誰もが胸の奥を打たれました。

「優しさ」は方向を間違えれば、誰かを傷つける刃にもなる。その現実を、みんなで痛感した瞬間でした。

その後、師長の指導を経て、主任は意識的に全員に声をかけるようになりました。

会議ではスタッフ全員の意見を聞く姿勢を見せ、「ありがとう」「どう思う?」と声がけのトーンも変わっていきました。

少しずつ、カンファレンスに笑いが戻り、病棟の空気が和らいでいったのです。

学んだのは、「優しさの使い方」

この経験を通して気づいたのは、「優しさ」は「誰にどう向けるか」で、まったく違う意味を持つということでした。

特定の誰かを守る優しさは、ときに“えこひいき”として、他の誰かを傷つけてしまうことがある。

しかし、全員に対して平等に声をかける優しさは、チーム全体を支える力になります。

看護の世界では、「人を思いやる心」が大切だとよく言われます。けれど、本当に必要なのは「誰か一人ではなく、みんなを見つめるまなざし」なのかもしれません。

えこひいきは、静かにチームを蝕みます。リーダーの一言、ひとつの態度で職場の空気は大きく変わる。

もし今、あなたの職場で同じような違和感を感じているなら、どうか「誰かが悪い」で終わらせずに、その背景にある「誰かを守りたかった想い」にも目を向けてみてください。

その小さな気づきが、チームをもう一度つなぎ直す、最初の一歩になるかもしれません。



ライター:こてゆき

精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。


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