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「いい加減な案内をするな!」怒れる乗客に動揺…→元駅員が見た“遅延時の現場のリアル”

  • 2025.11.2
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出典:photoAC(写真はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に経験した「列車遅延時の裏側」をご紹介します。

列車の遅延は何度も経験しましたが、苦労は今でも忘れられません。

動き始めた列車

列車の運転見合わせに遭遇したことはありますか?

大雨、強風、信号機の故障など、列車の運転を見合わせる原因はさまざまです。

運転見合わせや遅延があると、駅員たちはできる限り改札口の外に立ち、口頭で遅延の案内を行います。同時に構内放送で「運転を見合わせていること、その理由、運転再開のめど」を繰り返しアナウンスしています。「自分が持っているきっぷの列車はどうなのか」という個別の問い合わせがあるからです。

そのほか「何かあったんですか?」「どうして止まっているんですか?」「いつ運転再開するんですか?」といった質問が矢継ぎ早にあるので、構内放送の係が放送に専念できるよう、他の係員で対応します。

運転を見合わせている間は「まだ動きません」のみの案内ですが、実は運転再開してからの方が大変です。

遅れのため、列車は駅員が持っている時刻表通りには動いていません。「次の〇〇駅行きは何番ホームですか?」と尋ねられても、すぐに答えられない場合が多くあります。

先着はどっち?

あるとき、私が初めて配属された駅で、帰宅ラッシュの時間に列車の運転見合わせが発生しました。2時間ほど経って遅れながら運転が再開されたときのことです。1人の男性のお客さまが私に近寄りました。

「なあ、これ快速と普通、△△駅に着くのはどっちが先?」

その厳しい口調から、お客様がお怒りであることが伝わってきました。

通常運転時なら時刻表を見てすぐに答えられますが、遅延しているのでそうもいきません。お客さまは余計に怒りをため込むだろうと思いながらも窓口裏に下がり、指令室と情報を取り合っている当務駅長から現在の運行予定を聞き取ります。そしてお待たせしているお客さまに、私は当務駅長から聞いた通りに案内しました。

「快速が普通列車を追い越す駅がまだ決まっていません。この駅に先に着く普通列車に乗って、もし途中で快速が追い付いたら乗り換えることをおすすめします」

つまり、どちらが先に着くかわからない、という返答です。やはりご納得いただけなかったようで、お客様は「いい加減な案内をするな!」と、快速か普通列車かの二者択一を求めてきました。

精算機の前に見つけたもの

「先につく列車はまだ決まっていません。この駅を発車して、もっと後に決まります」

決まっていないのだから答えられない、とできるだけ丁寧に言おうとしたつもりでした。ですが構内放送が流れていたこともあり、私の声も大きくなっていたと思います。

その後、この方は舌打ちをして、無言で自動改札機にきっぷを突っ込みました。その後、理由は分かりませんが、お客様は改札機から出てきたきっぷを受け取らずに、そのまま進もうとしました。

すかさず私が改札機からきっぷを引き抜き、叫びます。

「きっぷがないと、降りた駅でもう一度支払わないといけませんよ!」

お客さまは恨めしそうにきっぷを受け取り、改札からホームへ向かう角に消えていきました。

それからしばらくして遅延対応が落ち着いたころ、私はふと、改札を入ってホーム寄りにある自動精算機に向かいました。落とし物がないか気になったためです。そこで私は、精算機前の地面に何か落ちているものを見つけます。

それは、破り捨てられたきっぷの欠片でした。誰がどのような経緯でここに落としたのかは不明ですが、やはりお怒りのお客さまが脳裏に浮かびました。

遅延時の情報収集方法は?

来るはずの列車が来なければ不安になったり、イライラしたりするものです。

では、大混雑の改札口で駅員を捕まえ、自分の列車がどうなるか駅員が調べるのを辛抱強く待つしかないのでしょうか?

実は、他にも情報収集の方法はあります。鉄道会社の公式サイトを見たり、構内放送を聞いたりする方法です。会社によるかと思いますが、運行情報を公式サイトに掲載していることもあります。また、新聞社やテレビ局の公式SNSも活用できるときがあるかもしれません。

そして、基本的に駅員が知っている情報はすべて順番に構内放送で案内されます。直近の列車を優先して案内するので、日常的に使う路線なら次の列車を待つべきホーム程度ならわかるでしょう。

反対に、放送されている以上のことは駅員も知らない場合がほとんどです。

直接の対話というアナログな方法が最も正確だという考え方もあるかと思いますし、スマートフォンでは頼りない、という考え方の方もいるかもしれません。しかし、中には公式サイトでも構内放送でもわからない、駅員に尋ねるしか解決方法のないお問い合わせをお持ちの方もいます。

そのような方に案内の時間を割けるよう、列車の遅延発生時には駅員に尋ねる以外の方法でも情報収集できないか、ぜひ検討してみてください。



ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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