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「水筒のお茶で作った」運転士もあ然…→送迎バスで『カップ麺をすする男性』の事情とは

  • 2025.11.1
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出典:photoAC(写真はイメージです)

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

今回は、私が送迎バスの運転士をしていた10年ほど前、何度も車内で注意しても、あることをやめてくれなかった乗客のお話を紹介します。

バスの最後部席は、運転士から最も遠い座席です。しかし、ミラーを使って乗客の様子がよく見える場所でもあります。

そのような最後部席は、個性ある乗客が座ることもしばしば…安全上、必要とされる車内確認では、驚く様子を見てしまうことがあります。

予想の上を行く乗客の行動

送迎バスといっても、不特定多数が乗車するバスでは、さまざまな方がおられます。通勤・通学の前後に通う教習所は、多忙な時間の合間に足を運ぶ人は少なくありません。

どんなに時間がなかったといっても、車内の飲食は他の乗客に迷惑がかかります。乗客が少なく菓子パンやお菓子程度なら、目を瞑ることもあります。

しかしその日、運行していた中型バスで私が目撃したのは湯気の出ているカップラーメン…走行中でしたが、予想の上を行く乗客の行動に、視線がミラーに釘付けになりそうでした。

信号待ちで停車した際、運転席を離れるわけにもいかず、とりあえず乗客へ声をかけます。「他の方のご迷惑になるため車内での飲食はお控えください。」

前扉のバスのため、乗車時にカップラーメンを持っていれば、間違いなく気づくもの…しかし、乗車人数の多い時間帯とはいえ、カップラーメンを片手に乗車した人は1人もいませんでした。

止めて注意すべきか否かの葛藤

車内の飲食は原則禁止である以上、手に持つカップラーメンを食べ続けて良いとは言えません。他の乗客が火傷を負ってしまう可能性だってあります。

しかし、私は運転をしている身…運行中にカップラーメンを取り上げることは困難です。

突然、ラーメンを作って食べ出すのですから、「食べないで」と言ったところで、やめる様子もなく…再度「飲食はお控えください」と伝えるしかありません。

路肩に停車させようかとも考えましたが、乗客には教習の時間があります。今バスを止めれば、たった1人のために数十人に迷惑がかかってしまいます。

悩んだ末、私はバスの運行継続を決めました。ただし、カップラーメンをすする若い男性の降車は阻止しようと思いつつ、バスを走らせます。

なぜ食べた?どうやって作った?

「飲食をされていた方は、降車せずにそのまま車内でお待ちください」

いつでもドアを閉められるよう、運転席で待機する私に観念したのか、最後部の座席で男性は待っていました。

そもそも私が疑問に感じるのは、なぜ見てすぐわかるラーメンを作り、車内で食べたのかです。聞けば、大学生の男性は実技のキャンセルが出たため、急遽バス車内で予約を取ったとのことでした。

そのため、教習所で食べる予定にしていたカップラーメンを車内で食べることにしたようです。

「じゃあ、どうやってラーメンを作ったの?」

「水筒のお茶で作った」

大学生自身も予想外の予約だったようですが、予約が取れない状況ですぐに予約するしかなかったようです。しかし、空腹での教習を避けようと考え、水筒の暖かい緑茶を入れて、カップラーメンを作るという驚きの行動に至ったようでした。

禁止の裏にはリスク回避…無料のバスだからこそのマナーが必要

送迎バスの車内で飲食を禁止するのは、汚れや怪我などから乗客同士のトラブルを避けるためです。

公共交通機関ではなく、無料で乗車できる送迎バスだからこそ、節度を保った乗車マナーが必要とされます。

その話を学生に伝えた時、「安易な行動でご迷惑おかけしました」と、素直に謝罪していただきました。危険であることの理解さえしてもらえたら、せっかくの教習をキャンセルさせる必要はありません。すぐにバスの扉を開け、以後注意するよう伝えて教習へ向かってもらいました。

驚きの乗客でしたが、相手の行動の裏には何らかの理由があり、会話してこそお互いを理解できると感じた出来事となりました。

私にとって、この出来事は会話の重要性を意識したきっかけでもあります。そして、今でも相手の話を聞き、可能な限り否定せず話し合える環境作りを心掛けています。



ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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