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災害ごみの種類・分別・搬出など対策・ポイントを学び、適切に処分を

  • 2025.9.26

地震や台風などの災害に襲われた後に出る、大量の災害ごみ(災害廃棄物)が問題となっています。

分別をせずに積み上げてしまうとその後の処分に時間がかかり、悪臭や害虫の原因となることも。

この記事では、災害ごみを捨てるときに私たちが気をつけるべきことを、わかりやすく解説します。

災害ごみの種類

災害ごみの種類は、処理を行う自治体の分け方にもよりますが、主に

・ 片付けごみ
・ がれき類

に大別されます。災害ごみは、普段の生活から出る「生活ごみ」とは分けて捨てることが大切です。

片付けごみ

主に、壊れた家具、家電、食器、生活雑貨、浸水した畳、敷物、布団、本など。

災害の規模によっては、地域の公園などが片付けごみの一時的な「仮置き場」となる場合があります。災害発生後に、暮らしている自治体からのお知らせなどを確認してから持ち込みましょう。その後の処理がしやすくなるよう、分別して捨てることが大切です。

がれき類

主に、壊れた家から出る木くず、金属類、コンクリートブロック、瓦など。

ただし、倒壊した家の解体は、厳密には「個人の財産の処分」となるため注意が必要です。家の解体費用は原則として所有者の負担ですが、罹災証明で「全壊」と判定され、所有者の申請がある場合には、災害ごみとして自治体が解体、撤去することもあります。

過去の大規模な災害では「半壊」および「大規模半壊」に認定された家屋の解体費用を自治体が負担したケースがあります。

能登半島地震では、相続した家の名義変更を行っていなかったために、所有者が複数人いて全員から同意が取れず、公費解体が進められない事態が相次ぎ、問題となりました。

生活ごみ

主に、生ごみ、し尿など。

腐敗しやすい生ごみは、悪臭や害虫の原因になるため、片付けごみと分けて回収されます。携帯トイレのし尿も生活ごみです。飛び散りを防ぐために凝固剤や吸収ポリマーを使用して、二重に袋に入れて空気を抜き、口をしっかり閉じて捨てるようにしましょう。

危険物・有害物

主に、ガスボンベ、スプレー缶、電池、バッテリー、蛍光灯、灯油、化学薬品、農薬など。

火災の原因となるごみや有害な化学物質を含むごみは、必ず片付けごみや生活ごみと分けて捨ててください。

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土・汚泥はごみとして捨てられない

土や石は自然物のため、基本的にはごみとして捨てることができません。

浸水時には下水が逆流することもあり、汚泥は不衛生です。袋に詰めて放置すると、有害なガスが発生する危険もあります。

災害時には自治体が回収し、処理を行った上で再利用される場合もあります。自治体の回収方法に従いましょう。

<災害タイプ別>災害ごみの分別・搬出ポイント

災害ごみを片付けるときの注意点は、災害の種類によって異なります。

地震

地震発生時には、家具の転倒、家電の落下、食器の散乱などが予想されます。壊れた家具や家電は資源ごみ、割れた食器は不燃ごみです。

片付けるときはガラスの破片などでケガをしないよう、家の中でも靴を履き、余震に備えてヘルメットを着用してください。

大地震の後は、繰り返し大きな余震に見舞われることが少なくありません。避難所から家の片付けに戻っている最中に、余震で家が倒壊した事例もあります。特に、1981(昭和56)年以前に建てられた旧耐震の古い木造住宅は注意が必要です。

水害

家に流れ込んだ汚泥のかき出し、水に濡れて重たくなった畳や布団の搬出は力仕事です。高齢者などは無理をせず、社会福祉協議会などに相談して災害ボランティアの協力を求めましょう。

浸水した家はしっかりと清掃し、よく乾燥させることが大切です。浸水の程度によっては壁や床板をはがして確認しましょう。見えない箇所にカビが発生しているおそれがあります。

台風

台風で飛んできたものは、敷地の所有者が処分してもよいとされています。所有者が判明している場合は、処分費用を請求できる場合があります。

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健康・安全上の注意点

災害後の作業は、安全に十分な注意が必要です。いくつかのポイントを解説します。

片付けでは長袖・長ズボン・軍手を着用

がれきなどでケガをすると、破傷風などに感染し命にかかわるおそれがあります。服装は肌を露出しない長袖・長ズボンを基本とし、手には軍手やゴム手袋を着用してください。

また、踏み抜き防止底を使用した安全靴などで、飛び出した釘やガラス片から足を守りましょう。粉塵が出るときは、防塵マスクやゴーグルも欠かせません。

浸水した家屋は清掃・乾燥・消毒を

浸水した家は、細菌やカビが繁殖しやすくなっています。感染症を防ぐために、汚泥を取り除き、しっかりと乾燥させることが大切です。床上浸水をした場合は、清掃後に家の床や壁、家具類を薄めた次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒しましょう。

色あせや腐食が心配なものには、消毒用アルコールまたは逆性石けん(塩化ベンザルコニウム)を使用し対応する方法があります。

アスベスト(石綿)に注意

古い建物にアスベスト(石綿)が使われている場合があります。アスベストは、肺がんの原因となります。災害で家が倒壊した際には、空気中に飛散するおそれがあります。

アスベストの撤去は、防護服などを着用した専門業者が行います。倒壊した建物にアスベストが使われている疑いがあれば、できるだけ近づかないようにしてください。

作業は二人以上で

安全のために災害後の単独行動は避け、作業は二人以上で行うようにしてください。気温の高い日には熱中症の危険もあります。

互いに声を掛け合い、こまめな休憩と水分補給を心がけましょう。

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災害ごみ発生後の処分方法

災害ごみの基本的な処分方法も、事前に確認しておきましょう。

自治体の仮置き場・集積所情報を確認

ごみの捨て方は、災害の状況に応じて自治体が決定します。

通常のごみ捨て場に出せるのか、仮置き場が設置されるのか、ごみ処理施設に持ち込んでもよいかなど、自治体の方針を確認しましょう。

家庭での一次分別と安全確保

家の外に不用品を出し、家具、家電、布製品などごみの種類ごとに分別してから集積所に運びます。

家の損壊が激しく倒壊の危険がある場合などは、安全確保を優先してください。

搬出時の人員・車両手配

災害ごみの運び出しには、人手を要します。仮置き場が遠い場合には、トラックなど車の手配も必要です。

地域の人と声を掛け合って助け合い、災害ボランティアの手も借りるようにしてください。

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事前にできる災害ごみ対策

災害ごみを「出さない」あるいは「減らす」ために、事前にできる対策があります。

家具固定

地震に備え、タンスなどの家具をL字金具や突っ張り棒で固定しましょう。前開きの食器棚は、地震の揺れで扉が開いて食器が散乱しないように耐震ロックを取り付ける方法があります。

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断捨離

不用品はため込まずに、処分しましょう。作り付けのクローゼットや押し入れを活用し、家具を減らすのも一案です。

浸水対策

ハザードマップで浸水のリスクを確認し、必要に応じて土のうや水のうを用意しましょう。
貴重品や思い出の写真などは家の2階や押し入れの上段などにしまうなど、被害に遭うリスクを想定のうえ収納しましょう。

飛散防止

台風の接近時には、庭やベランダに出ている物をしまうかひもで固定するなど、飛散防止の対策をしておきましょう。

補助金・減税制度を活用できるか確認しよう

被災者の生活にかかる負担を減らす制度や、家の再建費用を助成する制度もあります。

罹災証明で無料

大量のごみを、ごみ処理施設に持ち込む場合には手数料がかかりますが、罹災証明書があれば無料となる場合があります。

罹災証明書とは、地震や風水害などの災害で被災した家の被害を調査し、その被害の程度を証明するものです。

申請時には被害状況がわかる写真が必要なので、家の片付けや修理を始める前に撮影しておきましょう。

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補助金や減税が受けられる場合も

罹災証明書は、被災者支援が受けられるかどうかの判断基準にもなります。

・被災者生活再建支援金
家屋が「全壊」「大規模半壊」「半壊」と判定された世帯に、被害程度や再建方法に応じて最大で300万円を給付する制度です。

・災害復興住宅融資
罹災証明書を交付された人が利用できる、低金利の住宅ローンです。

・税、社会保険料、公共料金等の減免
災害で家や家財が損害を受けたときなど、所得税や住民税などが軽減・免除される場合があります。

家電4品目も災害ごみとして回収

エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の家電4品目は、本来は家電リサイクル法にのっとり指定された場所に持ち込み、リサイクル料を払って処分しなくてはなりません。

しかし、災害時の状況によっては、ほかの災害ごみと一緒に処分をしてもやむを得ないとされています。

自治体ができる範囲で分別しリサイクルができると見込めるものは、家電メーカーに引き渡す費用を自治体が負担し、家電リサイクル法にのっとって再利用される場合もあります。

まとめ

災害ごみの片付けは、早期の分別・安全な搬出・事前の対策が三本柱です。自治体ごとに処分方法が異なるので、お知らせを確認して決められた場所に捨ててください。また、作業は安全な服装で体調に注意しながら行いましょう。

<執筆者プロフィル>
山見美穂子
フリーライター・防災士
岩手県釜石市生まれ。幼いころ両親から聞いた「津波てんでんこ」の場所は、高台の神社でした。

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