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朝ドラでヒロインたちに影響を及ぼす“疎まれ役”「もはや怖い」「台無しにした」視聴者の間で憶測される“必要な役割”

  • 2026.1.24
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『ばけばけ』第16週(C)NHK

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』で近ごろ強い存在感を放っているのが、松江新報の新聞記者・梶谷(岩崎う大)だ。来日したヘブン(トミー・バストウ)に密着し、小さな出来事を大きなニュースへと仕立て上げる彼の取材姿勢は、視聴者から大きな反発を招いている。一方で、この騒動は物語の転換点とも深く関わっているという憶測が広がっている。本記事では、梶谷が集めた批判の理由と、その役割を物語全体の流れから読み解いていく。

※以下本文には放送内容が含まれます。

パーティーを壊した記者

ヘブンの“日本滞在記完成パーティー”をきっかけに、梶谷への批判は一気に噴き出した。祝宴の空気を乱すような振る舞いに、「場の空気を読まない」「もはや怖い」「台無しにした」「厄介者すぎる」という厳しい声がSNS上に並ぶ。
さらに、公式から第20週以降の物語の舞台が熊本へ移ることが発表されている点も、この騒動に拍車をかけた。視聴者の間では、今回の出来事が引っ越しの直接的な要因なのではないかといった憶測が広がっている。「もう松江を離れるべきだ」「可哀想すぎる」という感情的な反応も多く見られ、梶谷は次第に“疎まれ役”として一方的に消費されていった。

視聴者は、ようやく穏やかな生活を手に入れた松野家の日常を楽しんでいた。だからこそ、彼の存在が疎ましく映るのも自然だろう。現実を何倍にも誇張した記事が、彼女たちに迷惑をかけてしまっているのも事実だ。

『ヘブン先生日録』が生んだ歪んだ注目

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『ばけばけ』第16週(C)NHK

騒動の中心にあるのが、新聞の連載『ヘブン先生日録』である。「我がレフカダ・ヘブン先生の日々の暮らしから珍事件まで、本日より毎日お届けいたすなり」と始まる記事は、事実を土台にしながらも、過剰な装飾で彩られている。西洋料理の晩餐会は必要以上に豪奢に描かれ、トキ(髙石あかり)の何気ない一言すら“貴婦人の微笑み”として切り取られる。

その結果、町では「毎日が西洋料理」「お抱えの料理人がいる」と噂が膨らみ、トキは買い物に出るだけで好奇の目にさらされる。
梶谷が再び取材に訪れ、連載のネタを求めたことで始まった英語講座は、翌日には「マエ ネーム エズ トキ」という見出しになり、なみ(さとうほなみ)たちの元へと届く。新聞一つで、日常にまで影響が及んでいく様子が、静かに、しかし確実に描かれている。

彼は“鬱陶しいだけの記者”なのか

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『ばけばけ』第16週(C)NHK

では梶谷は、物語に混乱をもたらすだけの存在なのだろうか。第20週からの引っ越しが発表されている今、本当にこの件が原因として引っ越しをするのであれば、彼は結果的に物語を動かす起点を作ったキーマンとも言える。混乱をもたらす嫌味な役だけではなく、その役にはしっかりと前向きな意味もある。

また、新聞は現代で言うSNSのような拡散力を持ち、真偽が曖昧な情報でも一気に広まってしまう。違いがあるとすれば、梶谷は“一般人”ではなく、“記者”という肩書きと使命を背負っている点だ。彼は仕事に駆られ、書き続けた。その裏には、ヘブンが人々に愛されていることを、どこか誇らしく感じていた気持ちもあったのかもしれない。時には無神経とも思える言葉を投げ、嫌われ役を引き受けながらも、良くも悪くもヘブンの存在を世に知らしめたのは確かだ。

『ばけばけ』は、梶谷という人物を通して、“書くこと”と“伝えること”の暴力性と責任を浮かび上がらせる。彼を一方的な悪者として片づけてしまうのは簡単だ。しかしその奥には、言葉が持つ力と、それに振り回される人々の現実がある。だからこそ、この記者の存在は不快に感じる画面があっても、目を背けられないのである。


連続テレビ小説『ばけばけ』毎週月曜〜土曜あさ8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:柚原みり。シナリオライター、小説家、編集者として多岐にわたり活動中。ゲームと漫画は日々のライフワーク。ドラマ・アニメなどに関する執筆や、編集業務など、ジャンルを横断した形で“物語”に携わっている。(X:@Yuzuhara_Miri