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「朝から待ってたんだけど?」午前中指定の荷物が届かずクレーム→元宅配員が明かす、“どうしても遅れてしまう日”の真相

  • 2025.12.2
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出典:photoAC(写真はイメージです)

皆さんこんにちは、元宅配員のmiakoです。

荷物が届くのを朝から待っていたのに、なかなか来ない。そんな経験がある方は多いと思います。通知は届くのに時間だけが読めず、そわそわしながら過ごしてしまうこともありますよね。

宅配員として働いていた頃、お客様から「朝から待ってたんだけど」と、怒ったようなあきれたような言葉をかけられたことが何度もありました。

もちろん、時間を指定して待ってくださっているお客様のお気持ちは痛いほどわかります。

しかし、現場では避けようとしても避けきれない事情が重なることがあります。

今回は、私が現場で経験してきた、「遅れにつながる背景」についてお話しします。

宅配員に待ち受けるさまざまな事情

宅配の現場には、お客様からは見えにくい事情がいくつもあります。代表的なのが繁忙期です。

7月のお中元、12月のお歳暮やクリスマス、帰省準備などが重なる時期は、通常月より荷物が一気に増えます。ここ数年はギフト便の前倒しも増え、増員前のタイミングから物量だけ先に膨らむこともありました。エリアの広さは変わらないのに積み込む荷物だけが増える日には、出発時点ですでに時間に余裕がなくなります。

3〜4月の引っ越しシーズンや、母の日などプレゼント需要が高まる時期も短期的に物量が増えます。特に生花など扱いに注意が必要な荷物が多い日は、いつも以上に慎重な作業が求められ、そのぶん時間もかかります。

こうした要因が重なると、朝から急いで動いていても遅れが出てしまう日があります。

決してゆっくりしているわけではなく、忙しい日ほど時間に追われてしまうのが現場の実情でした。

予測できないトラブルで遅延が発生することも

荷物の量が多い日は予測できますが、読めないトラブルもあります。

たとえば、途中で荷物を運ぶトラックが事故・故障・渋滞に巻き込まれて動けなくなるケースです。遠方からの大型トラックが高速道路上で止まってしまうと、その便に積まれていた荷物が営業所に届くのは大幅に遅れます。朝の便が遅れるだけでも、その日の流れには大きなズレが生まれます。

私自身、配達先から車に戻ったときにエンジンがかからなくなったことがありました。夜の時間帯で、急いで応援要請を出すと、自分の仕事を終えた同僚たちが駆けつけ、残りの荷物を分担して配達してくれました。イレギュラーが起きたときは、仲間同士の助け合いに支えられて何とか一日を終える、という日も少なくありませんでした。

また、天候に振り回される日もあります。

台風で警報が出れば一時待機や配達中止の判断が必要になりますし、大雪や冠水、がけ崩れ、地震などで道路そのものが使えなくなれば、物流は完全に止まります。そうなると「届かない」だけでなく、「送れない」荷物も増え、地域全体の生活に影響が及びます。

「午前中指定=余裕がある」わけではない

午前中指定は、出発から12時までと時間の幅が広いため、一見すると対応しやすいように思われますが、現場ではそうとも言い切れません。

工場や会社への納品は、敷地や建物が広く、駐車場所と納品場所が離れていたり、受領印のやり取りに時間がかかったりと、個人宅よりも一件あたりの所要時間が長くなりがちです。12時までに届けようと急いでいても、思った以上に時間が押してしまうことは珍しくありません。

さらに、時間指定の荷物を優先しながら、それ以外の荷物も同時にこなさなければなりません。

建物の広さやエレベーターの有無、階数、戸数、混雑状況によって玄関先までの移動時間は大きく変わります。

午前中という大きな枠の中で、できる限り時間を意識して動いてはいても、ぎりぎりになってしまう日もあるのです。

再配達が続くと配達の流れは簡単に崩れてしまう

宅配の現場で大きく時間を奪われるのが再配達です。

不在時には不在票を入れますが、その数分後に再配達依頼をいただくこともあります。

すぐ戻れる場所であれば良いのですが、すでに遠くまで回っている場合や、他の時間指定が詰まっているタイミングだと、ご希望の時間に伺えないこともあります。

宅配員は出発前に、その日の荷物をどの順番で回るかを住所・地図・道路状況・時間指定などを見ながら組み立てます。

極力無駄な動きを減らし、ロスを抑えるための「一日の設計図」です。

しかし、再配達の依頼が入ると、その流れを組み直す必要が出てきます。

できる限り応えたい気持ちはありますが、組み立てたルートが崩れると、他のお届けにも影響が出てしまうことがあります。

お客様にとっては「一件の再配達」でも、宅配員にとっては「数十件の中にどう組み込むか」を考えなければならないのです。

道路事情や地域の環境も、時間を左右する

配達中は、道路事情によって予定が簡単に狂います。

工事による片側通行や通行止め、時間帯によって突然始まる渋滞など、ルート上の変化は日々起きています。

建物や住所の事情が影響することもあります。

入り組んだ場所にある家、入口の位置がわかりづらい建物、新しい住所で地図に載っていない番地…。電話でお客様に場所を教えていただきながら配達した日もありました。

同じ場所でも、昼と夜では景色が違います。

街灯の少ない地域や、似た建物が並ぶ住宅街では、暗くなった途端に道がわかりにくくなり、想像以上に時間がかかることもあります。

どれだけ事前にルートを組み立てても、現場に出てみて初めてわかることが多いのが配達の世界です。

想定外の要素が積み重なり、結果として遅れにつながることがあります。

遅れてしまった時、私が心がけていたこと

荷物をお届けする中で、どうしても遅れてしまう日があります。

そんな時は、真っ先に「大変お待たせいたしました」と一言お伝えするようにしていました。そして、お客様のあふれる気持ちを真摯に受け止めることを心がけていました。

怒っている様子でなくても、ずっと待っていたと言われれば不安や不満があったのだろうと感じますし、私自身がお客様の立場だったとしても同じように不安は生まれると思うのです。

ただ、理由を細かく並べるような伝え方はしませんでした。

たとえ現場がどれだけ慌ただしくても、お客様から見れば状況は分かりませんし、長い説明はかえって負担になることがあります。

必要以上に事情を語らず、今お持ちしたこと、遅くなってしまったこと、その二つだけを丁寧に伝えるようにしていました。

お届け先で交わす数秒のやり取りで雰囲気が変わることもあります。丁寧に向き合うことで、最後に「ありがとう」と言っていただけた日は、その一言に救われた気持ちになりました。

荷物は水のように生きている

私のかつての上司に、「荷物は生きている」と話していた人がいます。もちろん、本当に命があるわけではありません。

ただ、荷物を動かしているのは人間で、その日その瞬間の状況に、流れ方が大きく左右されるのだという意味です。

配達が遅れてしまう理由の多くは、宅配員の怠慢ではなく、荷物の量、道路事情、天候、トラブル、再配達のタイミングなど、さまざまな要素が重なって生まれます。どれか一つがずれるだけで、波紋のように全体に影響が広がっていきます。

時間指定は、守るべき大切なお約束です。私たち宅配員もその時間内に必ずお届けしようと必死で動いていますが、予期せぬトラブルが重なり、どうしてもその約束を果たせない日があることを、ご理解いただけるととてもありがたいです。

もちろん、お待たせしてしまったことへの申し訳なさは常にあります。

ただ、遅くなりたいと思っている宅配員はいません。

少しでも早く、少しでも安全に。そんな思いでハンドルを握り、荷物を運んでいます。

荷物を受け取る方も、届ける側も、同じように日々の生活の中で動いています。だからこそ、互いへの少しの理解や思いやりがあるだけで、お届けの時間に対する気持ちがやわらぐ瞬間があると、私は感じてきました。

あなたの町を担当する宅配員のすぐそばでも起きている出来事を知っていただくことで、毎日のやり取りが少しでも心地良いものになればうれしく思います。



ライター:miako
宅配ドライバーとして10年以上勤務した経験を生かし、現場で出会った人々の温かさや、働く中で積み重ねてきた“宅配のリアル”を、経験者ならではの視点で綴っています。
荷物と一緒に交わされてきた小さなエピソードを、今は文章としてお届けしています。


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