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玄関を“数センチ”しか開けない女性客。女性宅配員が代わって訪問して分かった「切実な事情」

  • 2025.12.4
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さまこんにちは。元宅配員のmiakoです。男性宅配員が何人訪れても、玄関を開けてもらえないお客様がいました。「もしかしたら女性なら…」と依頼された私が、そのお宅を訪ねた日。玄関が開いた瞬間に感じた安堵と、その裏に潜む複雑な現実。


女性宅配員として働く中で、荷物だけではなく“気持ち”を届ける仕事だからこそ、見えてきた現場のリアルをご紹介します。

男性宅配員が困惑する、難しいお客様

ある日、所長と同僚の宅配員たちから、
「ちょっとお願いしたいことがあるんだけど…」
と声をかけられました。

内容は『開封後に破損していた荷物の“回収”に行ってほしい』というもの。

普通なら担当エリアの宅配員だけで完結する、いつもの業務です。
でも、そのお宅には一つだけ“大きな問題”がありました。

「そのお客さん、いつ行ってもドアがほとんど開かないんだよ…」

インターホン越しの返答はあるものの、玄関が開いても“数センチ”。
手だけ出して伝票を受け渡すスタイルで、誰一人としてお客様の顔を見たことがありませんでした。

理由の一つとして考えられていたのが、
『お客様が女性で、届けたのが男性だから』という可能性。

男性宅配員たちは、苦笑いと困惑が半分ずつの表情でした。

「俺たちじゃ、ちょっと回収は厳しいと思う」
「そもそも顔を見たことないんだよな…」
「最悪、非対面でインターホン越しに説明するしかないかも」

担当経験のある宅配員たち全員が、“対応したくてもできない” 現状に頭を抱えていました。

そこで所長が提案したのが、今回の依頼。

「お客様は女性らしいから、今回はあなたにお願いしたい。女性ならドアを開けてくれる可能性もある。それでも無理なら、また別の方法を考えよう」

こうして私は、“女性宅配員だから”という理由で、白羽の矢が立ったのです。

女性宅配員が少ない現場の現実

回収の話を聞いたとき、私はすぐに
「なるほど。男性NGのお客様なら、確かに私の出番かも」
と前向きに受け止めました。

というのも、宅配便の現場は女性宅配員が本当に少ないからです。

私がいた営業所はまだ恵まれているほうで、女性宅配員が3人いました。
とはいえ人数が多いわけではなく、大まかなエリアごとに一人ずつ配置されている状態。

そして今回のお客様のお宅に最も近いエリアを担当していたのが私でした。
それも今回の抜擢理由の一つだったのだと思います。

けれど、全国的に見れば女性宅配員が一人もいない営業所も珍しくありません。
重い荷物が多いとか、体力面の不安とか、「女性には向かないんじゃないか」という先入観とか…。
理由はいろいろありますが、“女性には手の負えない重労働”と思われがちな仕事であり、
実際に、時には重い荷物を届けなければいけないのも事実でした。

でも、実際に現場に立ってみると、
女性だからこそ安心して受け取っていただけたという声や経験が、確かに存在しました。

宅配便は「運送業」に分類されますが、仕事の中身はどう考えても「接客業」です。
お客様と対面して、言葉を交わし、やり取りをする。
それがこの仕事の大前提であり、私のこだわりでもありました。

だからこそ、一人暮らしのお年寄りの方だったり、
事情があって男性に抵抗のあるお客様だったり、
女性がお届けすることで安心してもらえるケースは確実にあります。

「現場には女性宅配員を必要としてくれる人がいるのに…」
「本当はもっと女性の仲間が増えてほしい…」

そう思う瞬間は、正直何度もありました。

だから今回のように “女性宅配員じゃないと対応が難しい” というケースがあっても、
対応できる女性が営業所にほとんどいない。
ニーズはあるのに応えきれない場面が生まれてしまう。

それが現場の正直な課題なのだと、ひしひしと感じていました。

そんな中、男性宅配員では頭を抱えてしまうケースでも、
“私なら力になれるかもしれない…!”
という気持ちで、今回の依頼を引き受けたのです。

私が呼ばれた理由は「女性だから」

所長から「今回はあなたに行ってほしい」と言われたとき、
胸の奥でスッとスイッチが入るのを感じました。

このお客様について聞いていたのは、
担当した男性宅配員が誰一人として対面できていない、という事実だけ。

それが“男性が苦手”なのか、
“訪問者そのものに抵抗があるのか”までは分かりません。
担当していた男性宅配員たちが怖い見た目だったわけでもありません。
ただ女性宅配員が訪問した前例がない以上、そうした可能性があるのかもしれないと思った程度でした。

本来であれば、宅配員を性別で分けて考えるべきではありません。
けれど、人それぞれ事情があるのは仕方がないとも感じていました。

とはいえ、今回の回収では対面が必須。
男性たちでは顔さえ見せてもらえない状況では、安心していただくのが難しい。
そこで、「私(女性)なら玄関を開けてもらえる可能性がある」という結論に、現場の判断が一致しました。

それでも、私の中でいちばん強かったのは
理由よりも“役に立てるかもしれない”という気持ちでした。

初めて訪れるお宅で、緊張もありました。
たとえ私でも対面してもらえない可能性はある。
それでも、

「私が行ったほうが、このお客様は安心できるかもしれない」

そう思ったからこそ、「はい、行きます」と迷わず答えました。

実際に訪問して感じた安心と複雑さ

お客様のお宅に着き、いつもどおりインターホンを押しました。
男性宅配員たちの話が頭に残っていたので、正直、ドアが開かない前提でいたところはあります。

「宅配便です。先日お届けしたお荷物の回収に伺いました」

いつものように名乗り、用件を伝えました。
すると、ガチャッと鍵の開く音がこちらまで聞こえ、
その直後、思っていた以上の勢いで玄関ドアが大きく開かれたのです。

一瞬、驚きました。
開けてもらえないかもしれないと覚悟していたせいもあり、拍子抜けしたような、不思議な気持ちでした。

そして、ドアの向こうに立っていたのは、どこかほっとしたような表情のお客様。
むしろ、少し嬉しそうに見えました。

その瞬間、胸の奥に温かいものが広がりました。
(あ、私だから開けてくれたんだ)
そう思うと、安心と同時に嬉しさが込み上げてきました。

回収のために対面が必要とはいえ、知らない相手に玄関を開けるのは勇気がいることです。
それを私に向けてくれたという事実が、素直に嬉しかったのです。

ただ、その嬉しさの裏側には、担当の男性宅配員たちの苦労を思う複雑さもありました。
誰が悪いわけでもないし、責める気持ちもありません。
けれど、性別で反応がこんなに変わってしまう現実を思うと、少しだけ胸がチクリとするところはありました。

それでも、「開けてもらえた」という事実は、私にとって何より大きかった。

安心してもらえたなら、私が来て正解だった。
そう思いながら、笑顔で、何ひとつ滞ることなく、丁寧に回収作業を完了させました。

女性宅配員だから聞けた、お客様の声

今回のお客様のように、女性宅配員だと安心していただける場面は、実は少なくありません。
特に一人暮らしの方や、事情があって男性に抵抗のある方、子どもがいるご家庭などにお伺いすると、

「女性のほうが安心感があるわ」
「男性だとどうしても緊張しちゃうんですよね」

といった声をいただくことが何度もありました。

中には、

「女性の人が来てくれてよかった。もしよかったら、ずっと担当してくれないかしら」
「丁寧に届けてくれるから安心できるわ」
「女性ならではの気配りをしていただけて嬉しいです」

と笑顔とともに声をかけてくださる方もいました。

こうした言葉をいただくたびに、仕事へのやりがいを感じたり、日々の励みになったりしました。

荷物を届けるという仕事の裏には、お客様が抱えている不安や事情が、ほんの少しだけ見える瞬間があります。
そんなとき、女性である私の存在が誰かの“安心材料”になれているのだと思うと、この仕事の意味をあらためて感じる場面でもありました。

けれどその一方で、現場には女性宅配員が本当に少ないのが実情です。
体力面の不安やイメージの問題など理由はいろいろありますが、今回のように女性を必要としているお客様がいても、対応できる女性がほとんどいないという状況は確かにあります。

必要とされているのに応えきれない。
それが現場の正直な課題なのだと感じていました。

それでも、目の前のお客様が安心して受け取ってくださるなら、性別に関係なく、できる限りの誠意をもってお届けしたい。
そして、誰が訪ねてもお客様が安心して受け取れる現場であってほしいと、心から願っています。

性別をこえて“安心”をお届けしたい

荷物を届けるという仕事は、ただ物を運ぶだけではありません。
そこには必ず、人と人とのやり取りがあります。

今回のように、性別によって対応が変わってしまう場面は確かにあります。
そして、女性が少ない現場だからこそ起きてしまうすれ違いも実際にありました。

宅配便は、送る方の代わりに荷物をお届けする、いわば“代行サービス”のような存在です。
距離が遠かったり、時間がなかったり、直接渡すのが難しかったりと、さまざまなニーズに応えるために物流は発展し、今では日本中どこへでも届けられるようになりました。

そしてその荷物は、ただの荷物ではなく、送る方の真心や「喜んでもらいたい」という思いも一緒に詰まっています。

だからこそ、本来であれば私たち宅配員の性別など、お客様が気にする必要はないのです。

それでも、受け取る側にもまた、人としての感情があります。
状況によっては、相手の性別に不安が芽生えることもある。
それも自然なことだと感じています。

女性が少ない業界である以上、男性宅配員から受け取るしかない状況に戸惑いを覚えるお客様がいることも、私には理解できます。

それでも、玄関先で笑顔で受け取っていただけた瞬間は、今でも胸に残っています。
安心して受け取ってもらえた表情が、そのひと言が、私たち宅配員の背中をそっと押してくれます。

性別や年齢に左右されず、誰もが無理なく働けて、
お客様も安心して荷物を受け取れる現場であってほしい。

近い未来、どんな現場でも女性が、年齢や性別といった
どうしようもない理由でこの職を諦めることなく、笑顔で活躍できる。
そんな世界が訪れることを、心から願っています。

そして今日も宅配員は、いろんなお客様の真心をお預かりし、
荷物と一緒に“安心”をお届けしています。



ライター:miako

宅配ドライバーとして10年以上勤務した経験を生かし、現場で出会った人々の温かさや、働く中で積み重ねてきた“宅配のリアル”を、経験者ならではの視点で綴っています。
荷物と一緒に交わされてきた小さなエピソードを、今は文章としてお届けしています。


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