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「誰かいる?」真夜中の保育園に明かりが…「毎晩こっそり戻ってました」後輩が涙で訴えたワケ

  • 2025.12.3
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。現役保育士のめじです。

皆さんは、夜中に職場の電気がついていたらどうしますか。

「誰か忘れ物かな?」と思って覗いたら、そこに同僚がひとり。しかも黙々と仕事をしていたとしたら、驚くだけでなく胸がざわつくのではないでしょうか。

今回は、私が保育士3年目のときに経験した、ある後輩との出来事をご紹介します。真面目な彼女が、なぜそんな行動をとっていたのか。そこには、誰かを責めることのできない、保育業界全体の問題を象徴していたのです。

夜の園舎に灯る光――そこにいたのは後輩だった

それは、私が保育士として働き始めて3年目の秋の夜です。友人との食事を終えて園の前を通りかかったとき、カーテンの隙間から明かりが漏れていることに気付きました。

当時の園は暗証番号で鍵のロックやセキュリティの解除ができるようになっていたため、職員であればいつでも入れるようになっていました。

そのため、「こんな時間に誰かいるのかな」と思い静かな園内に足を踏み入れると、保育室でひとり作業をする今年2年目の後輩の姿がありました。

「どうしたの、こんな時間に」と声をかけると、後輩は驚いたように振り返り、少しうつむきながら言いました。

「すみません、仕事が終わらなくて、毎日みんなが帰ったあと戻ってきて仕事をしていました」

「ここでしかできない仕事が多くて…」涙で語った本音

当時の園は業務量が多く、朝は6時台の出勤が当たり前。日中は子どもたちの保育に追われます。そのため書類や壁面づくり、製作の準備などは持ち帰り仕事になることも珍しくありませんでした。

仕事が早く余裕がありそうに見えていた後輩も、実際は追いつけずに悩んでいたのです。

「持って帰れない書類もあるから、ここでやらないと間に合わなくて…」

涙を浮かべて話す姿を見て、胸が締めつけられました。

私は「今日のことは誰にも言わないから、もう夜に来るのはやめよう」と伝えました。

後輩は小さくうなずき、ゆっくりと片付けを始めました。その静けさを、今でも覚えています。

守りたいと思ったから、働き方を変えた

翌日から私は周りの業務量を意識的に確認し、製作物が多い時期には学年リーダーと話し合い、役割分担を見直しました。

「これは私が半分やるね」と声をかけると、後輩はほっとしたように笑い、少しずつ表情が明るくなっていきました。

それからはひとりで抱え込むことも減り、他の職員と一緒に笑顔で帰る姿を見送る日が増えました。

同じ職場の中でも、誰かが声をかけるだけで救われる人がいる。あの頃ほど“助け合うこと”の大切さを感じた時期はありません。

“努力で支える保育”から、“仕組みで守る保育”へ

私はその園を離れましたが、今も働く同期によると業務の簡素化が進み、夜にこっそり戻るような先生はいなくなったそうです。

保育業界では、人手不足の中で「子どものために」と自分を後回しにしてしまう先生が多くいます。

しかし、誰かが無理をして成り立つ保育は長く続きません。先生たちが安心して働ける環境があってこそ、子どもたちの笑顔も守られます。

また、働き方は園全体で取り組むべき課題ですが、日々の中で「声をかける」「相談する」といった小さな行動も職場の空気を変えていく力になります。

自分の限界に気づいたとき、助けを求めることも決して悪いことではありません。

保育士として、そして同じ仲間として

どんなに真面目で優しい先生でも、限界を超えれば心も体も壊れてしまいます。

「頑張ること」と「無理をすること」は違う。あの夜、後輩が教えてくれたことです。

もし今、同じように苦しんでいる先生がいるなら、どうかひとりで抱え込まず周囲に相談してほしい。

保育の質を支えるのは、先生自身の元気と笑顔です。

あの日の夜、静かな園舎に灯っていた光は、今でも「笑顔で働く保育士を増やしたい」という自分の目標を思い出させてくれます。



ライター:めじ

幼稚園、保育園と保育経験を重ね、今年で13年目に突入しました。保育の仕事の中で感じた思いや子どもたちとのやりとり、育児と仕事の両立の事など経験をもとに言葉にしています。


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