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祖母「孫が熱を出して…乗せて」バス車内が騒然…16年前の新型インフル流行時、運転士の対応に「今でも覚えています」

  • 2025.11.28
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

コロナ禍では、バス運転士もさまざまな対応に苦慮しました。しかし、実はもっと前に感染症による対策で運転士が苦労した時期もあったのです。

今回は、2009年の新型インフルエンザ流行時に困ったエピソードを紹介します。

当時、私は自治体の市内循環バスに乗務していました。16年も前の話ですが、母としての立場と、ドライバーとしての対応に悩み、今でも冬になると思い出す出来事です。

高熱を出した孫を連れた祖母の乗車に車内騒然

新型インフルエンザが流行した当時、コロナ禍ほどでないにしろ、マスクの周知が広まっていました。会社からもマスクが支給されるなど、公共交通機関を含め、さまざまな場所で感染対策が行われました。

そんなとき、小さな子どもを連れた女性が、私の乗務する市内循環バスのバス停で待っていました。停車して乗降扉を開けると、「孫が熱を出して…市役所まで孫も乗せてください」と祖母の困った表情が印象的でした。

しかし、市内循環バスは高齢者の乗車が多いのです。そのため、乗車している利用者の健康面を考えると、発熱している子どもを乗せるのにはリスクがあります。

そう感じたのは乗車しているバス利用者も同じだったようで、車内は騒然としました。

「子どもは乗せるな」
「新型だろう?ワシらが感染したらどうする?」

よくバスを利用する方々で、普段は優しい方たちまでもが声を荒げたことに、私も驚きました。

不特定多数が乗車するバスがゆえに…

高齢者の利用者が大半を占める市内循環バスですが、運行は市民の税金で賄われています。祖母と一緒の孫なら、通常時なら問題ないと言えるでしょう。

しかし、世間では新型インフルエンザが猛威をふるい、学校閉鎖まで起きている状況でした。そのため、不特定多数が乗車する市内循環バスであるがゆえに、安易に乗車を促すこともできません。

バスの乗降扉前では、乗車中の方々と孫を抱き困り果てる祖母の姿が目にうつりました。

「タクシーは呼ばれていないんでしょうか?新型インフルエンザが世間を騒がせているため、みなさん健康の不安を抱えていらっしゃるようでして…」

お孫さんは体格から幼稚園児と思われました。

「大変申し訳ないのですが、タクシーを呼んでいただくか、急を要するなら救急車に連絡してもらうかの対応をお願いできますでしょうか。」

運転士の立場としては、「乗るな」とも「乗れ」とも言えません。そのため、私が思いついたのは、苦肉の策として代替案を提示することでした。

母の立場としての本音は…

当時、私の子どもは2人とも小学生低学年でした。母の立場としては、熱でしんどいであろう子どもを、早く病院へ連れて行ってあげたい気持ちでいっぱいでした。

しかし、運転士としては乗車される方々の安全を守るべきだと言えます。

母としての本音。
運転士としての立場。

まったく逆の行動を迫られるなか、私の気持ちは揺らぎます。しかし、やはりプロとしての立場が母の気持ちを諦めさせました。

祖母は、孫を抱いたまま乗降口から降り、「お世話かけました」と一言だけつぶやいて帰っていきました。その後ろ姿を見ながら、「携帯電話を貸せばよかったかも」「お孫さん大丈夫だったかな」そのような気持ちを抱いたことを、今でも覚えています。

発熱時に公共交通機関を使う際に、考えたいこと

新型インフルエンザや新型コロナウイルスなど、バスの運転士をしている間、感染症対策に苦慮する機会は多くありました。

バスの運転士も人間です。「乗せてあげたい」と思う場面は多くあります。しかし、感染症の拡大中、車内感染が問題になったときに、個人では責任を取れません。

感染症が流行しているときに発熱してしまった場合、可能であれば自家用車やタクシーを利用することも選択肢の一つです。しかし、誰もがそうできるわけではありません。やむを得ずバスなどを利用する際は、マスクを着用し、可能な限り他の方と距離を取るなど、周囲への最大限の配慮が求められます。乗車前にバス会社へ状況を相談してみるのも良いかもしれません。

新型コロナウイルスは息を潜めているものの、冬になると流行するのがインフルエンザです。当時の出来事を思い出しつつ、私も発熱時のバス乗車は避けるようにしています。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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