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「エレベーターが1機しかない。何とかしろ」元ホテルマンが絶句…現場スタッフが戦う「どうしようもない要求」

  • 2025.11.20
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出典:photoAC(写真はイメージです)

「エレベーターが1機しかないのを何とかして」

大手ホテルチェーンで4年間勤めた(2025年11月時点)Aさんが、実際に受けたクレームです。

ホテルに宿泊して設備に不満を感じた際、フロントに改善を求めるのは、宿泊客の当然の権利かもしれません。

しかし、その中には、ホテル側が「どうしようもできない」と頭を抱える“理不尽なクレーム”も存在するのです。

今回は、元ホテルマンのAさんに、その切実な実態を伺いました。

「エレベーターを増やして」構造に関するクレーム

ホテルに勤務していた際、対応に困ったクレームにはどのようなものがあったのでしょうか。Aさんはまず次の事例を挙げました。

「ホテルの『構造』に関するクレームですね。例えば『エレベーターが1機しかないのをなんとかして』と言われたことがあります」

Aさんは「お客様がご利用になれるのはそちらだけで、あとは非常用階段しかありません」と説明したそうです。しかし納得は得られなかったといいます。

当然ながら、建物の構造をその場で変えることはできません。Aさんも「こればかりは…」と当時を振り返ります。

「このドライヤーが嫌だ」即時変更できない設備への不満

 構造以外にも、対応に困ったクレームは寄せられたそうです。

「『このヘアドライヤーのタイプが気に入らない』など、今すぐ変更できない設備へのご不満は『どうしようもできない』ので困ってしまいます」

ホテルの備品は全室統一で導入されていることがほとんど。すぐに別のタイプのものを用意するのは難しく、現場スタッフとしては「申し訳ありません」と謝ることしかできないそうです。

ベッドが1つしかない!頻発する予約ミス

設備への不満のほか、Aさんが「“ざらにある”トラブルだった」と語るのが、お客様自身の「予約ミス」です。Aさんの経験では、特に多かったのがベッドタイプの勘違いでした。

「特に外国人のお客様に多いのが、ダブルルームと、ツインルームの違いを理解されておらず、『ベッドが2つある部屋を予約したはずなのに、1つしかない!』とおっしゃるケースです。これは本当に多かったですね」

日本では、ダブルルームはベッド1台、ツインルームはベッド2台という認識が一般的ですが、海外ではこの区別が曖昧な国もあるそうで、誤解してしまうケースが頻発するというのです。

この場合、原因はお客様の「予約ミス」です。しかし、現場では「部屋がない!」というクレームとして対応する必要に迫られます。

現場で向き合う「どうしようもない」

Aさんが経験したクレームには、「構造的な問題」や「宿泊客自身の予約ミス」といった現場の努力だけでは解決できない問題が多く含まれていました。

「エレベーターを増やしてほしい」「ドライヤーが気に入らない」「予約したのはこの部屋じゃない」

それでも、ホテルスタッフは目の前のお客様の不満に誠実に向き合い、説明し、ときには謝罪しなくてはなりません。

私たちが旅先で快適な時間を過ごせる裏には、こうした「どうしようもない」理不尽と戦い続ける、現場スタッフの姿があるのです。


取材協力:元ホテルマンAさん
20代後半の男性。大手ホテルチェーン従業員として4年間のキャリアを経て、現在は旅行業界で勤務している。


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