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近視予防には太陽の下で遊ぶことが大事って本当?対策についていわみ眼科理事長岩見先生にお伺いしました

  • 2025.8.24

子どもの近視が年々深刻化しているなか、近視治療についても日々新しい技術が模索・開発されています。今回は、「近視治療2.0時代の到来」をテーマに、医療法人社団久視会いわみ眼科理事長の岩見久司先生から近視予防の対策についてお話しいただきました。

ママ広場

近視治療2.0時代に保護者が知っておくべきこと

子どもの近視が増えている背景には、私たちの生活環境の大きな変化があります。アジア人は遺伝的に近視になりやすい体質を持ちますが、それに加えて、近視は「生活習慣病」としての側面もあるのです。
近年、子どもたちの遊びや活動の多くは室内で行われ、外遊びの機会は減少しています。少子化の影響で教育への関心が高まり、机に向かう時間も増えています。さらに、デジタルデバイスの普及により、大人も子どもも画面を見る時間が長くなりがちです。
前回ご紹介したように、近視治療の選択肢は広がってきましたが、近視を進ませる生活習慣が改善されなければ、せっかくの治療効果も十分に発揮されません。今回は、家庭でできる近視予防の工夫についてまとめました。

屋外活動の重要性

屋外で過ごす時間が長い子どもほど、近視になりにくいことが、以前から指摘されています。(Rose KA, Ophthalmology 2008)太陽光そのものが、近視の進行を抑える効果を持つのではないかと考えられており、これは光線療法が近視治療に効果を示す根拠とも一致します。

また、屋外活動では遠くを見ることが多くなり、目のピントが近くに固定された状態(調節緊張)から解放されます。これらの知見を受けて、台湾では「天天120運動」という国策が始まり、2011年から学校や幼稚園で屋外活動を積極的に取り入れた結果、子どもの近視率が年々減少しています。(Pei-Chang Wu, Ophthalmology 2020)コロナ禍では一時的に近視の割合が増加したものの、再び減少傾向に戻ったとの報告もあります。
日本でも屋外活動の大切さを伝える啓発活動に加えて、政策提言を目指した勉強会なども開催されています。
なお、運動そのものが近視に関係するかどうかを調べた研究では、屋内での運動には有意な効果は確認されていませんでした。つまり、「太陽の下で遊ぶこと」が、近視予防にはとても大切だということになります。

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勉強のさせ方 ― 姿勢指導

外来でもよく「うちの子、勉強の姿勢が悪くて・・・」という声を聞きます。学歴と近視は関連があるとの報告もあります。(Edward Mountjoy, BMJ 2018)実際、机に向かう姿勢が悪いと目にかかる負担が大きくなり、近視が進みやすくなります。
まずは、正しい座り方を知ることが大切です。お尻をしっかり背もたれにつけて、椅子をしっかり引き、机に近づいて座る。このとき、お腹が後ろに引けるような「猫背」にならないよう、お尻=骨盤を背もたれに支えてもらうことがポイントです。
最初の座り方さえ意識すれば、自然と良い姿勢を保ちやすくなります。また、「お腹を前に出す意識を持つ」ために、お腹を机に当てるように設計されたぬいぐるみなども発売されています。逆に、椅子に浅く座ると猫背になりやすくなるため、子ども用のサイズに合った椅子を使ってあげてください。

デジタルデバイスとの付き合い方

スマートフォンやタブレットなどのデジタルデバイスは、近視を進行させる大きな要因のひとつです。(Ahnul Ha, JAMA Network Open 2025)しかし、現在では学校教育でもタブレットが導入されており、完全に避けることは難しくなっています。
大切なのは「どう使うか」です。たとえば、タブレットは手に持たず、スタンドに立てて目から距離をとるようにしましょう。動画配信や携帯ゲーム機を見るときは、なるべくテレビなどの大画面に映して見ることで、視距離を確保できます。これは親子で動画内容を共有する良い機会にもなります。
デジタル機器は依存しやすく、触り始めると止まらなくなってしまう傾向もあります。「デジタル・シティズンシップ」の考え方を紹介する総務省のサイトには、家庭でできる工夫が多数紹介されています。たとえば、「30分使ったら30分外で遊ぶ」といったルールをつくるのも良いでしょう。

正しい知識を持ち、おおらかな子育てを

ここまで、家庭でできる近視対策をいくつかご紹介してきましたが、すべてを完璧に実行することは現実的には難しいものです。また、何かに偏りすぎてもバランスを崩してしまいます。
たとえば、外遊びばかりで勉強をしなければ学力が心配になりますし、デジタルデバイスを完全に遠ざけると、友だちとのコミュニケーションに支障が出るかもしれません。大切なのは、「子どもの目にどんな負荷がかかっているか」を意識しながら、子育ての中にバランスよく取り入れていくことです。
どうしても屋外活動が難しい、勉強時間が長くなりがち、という場合は、第2回でご紹介したような治療ツールを併用することも選択肢になります。

近視治療2.0の時代において、子どもの目は近視になりやすいという前提を持ちつつ、無理なく、楽しく子どもたちの成長を見守る――。そんなおおらかな子育てが、目の健康にもつながっていくことを願っています。

執筆者

プロフィールイメージ
岩見久司
岩見久司

大阪市立大学医学部卒
医療法人社団久視会 いわみ眼科理事長
眼科専門医・レーザー専門医
医学博士
兵庫医科大学非常勤講師

経歴
1日100人を超す外来をこなしながら、若手医師の教育や医師・医療関係者向けの講演も頻繁に行っている。
加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などを得意とする網膜内科医。
網膜の病気に将来繋がっていく可能性のある小児の近視が現在急増しており、近視治療にも積極的に取り組んでいる。
令和5年度より、「100歳まで見える目」をたくさんの方が持てるように啓蒙活動を展開している。

いわみ眼科ホームページ

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